▲藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』2005年 新潮社 定価1000円+税
藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』2005年 新潮社 その2
その2では「事故調査委員会」の事故原因の筋書きのポイントについて、藤田日出男は次のようにまとめている。
1 事故機は数年前に着陸の「尻もち事故」を起こしていた。
2 後部圧力隔壁の半分が損傷を受けた。
3 ボーイング社は隔壁修理をしたが、修理ミスがあった。
4 間違った方法で継ぎ合わされた金属板に打たれたリベット付近に疲労亀裂が飛び飛びにあった。
5 垂直尾翼が空中で破壊された。
6 上の状況証拠を無理矢理、「急減圧」でつないだストーリーが「事故調査委員会報告書」
ところが、藤田日出男によれば、日航機123便に「急減圧」があった事実が見当たらない。
ということは、圧力隔壁の破壊は墜落の結果であり、その原因ではないということなのか?
結論を急がず、まずは、元パイロットであり、長年事故調査の研究にもかかわってきた藤田日出男は、「事故調査委員会の報告書」の「急減圧」の虚妄を次のように曝く。
1 「事故調査委員会報告書」が示す「急減圧」の数値は、垂直尾翼を内側からの空気の圧力でパンクさせるには、どのくらいの圧力が必要なのかを想像して得た、机上・計算上の数値。
2 垂直尾翼の破壊を機内の「急減圧」に求めるために、「事故調査委員会」は初期には毎分30万フィート、平均しても毎分28万フィート程度の減圧を想定。
3 この上の数字は、日航機で、実際起きた真実と何の関係もない。
藤田日出男によれば、生き残った4人の証言からは上のような、「急減圧」によって、圧力隔壁が壊れ、垂直尾翼を破断するようなすさまじい風を記憶していない。
「減圧とは、文字通り気圧が低下すること、ジャンボの機体の胴体にはおよそ1300立方メートルの空気が入っている。」
「報告書では、隔壁に約2平方メートルほどの穴が開いたことになっている。」
「2万4000フィートの高度では、気圧は地上の40パーセントしかないために、胴体の穴が開くと、外気圧と等しくなるために空気は外に激しく流出する。」
「圧力が40パーセントになるということは、体積は圧力に反比例する(「ボイルの法則」)ために、機内の1300立方メートルの空気は3250立方メートルに膨張、2倍以上に膨らむ。そのために、機体に開いた穴(圧力隔壁に開いた穴)から、膨らんだ空気が一気に流出する。」
「2倍以上に膨らんだ空気が、機外に吐き出されたことになる。」
「日航123便の機内から約5秒間「で、約2千立方メートルの空気が機外に吐き出されたことになる。」
「本当はもっと複雑だが、簡素化して考えて、2平方メートルの穴から、2千平方メートルの体積の空気を流すと、長さは1千メートルになる。1千メートルのものが5秒で通過すると、秒速200メートルになる。地上で風速毎秒20メートルの風といえば、とても傘などさして歩けない。その10倍である。」
「ベルトを着用していない乗客は、次々に、隔壁の穴から機外へ吸い出されていったはずである。」
「固定されていない荷物も同様である。さらに空気が隔壁の穴を通過するときには、ものすごい騒音が発生したはずだが、(後部座席にいた)4人の生存者は、誰も「強風」や「騒音」など感じなかった。」
日航機の乗客は、最初に何か衝撃を感じたとき、棚から落ちてきた酸素マスクなどを着用しているものもいたが、 その後機内では、固定されていない荷物など、後部座席の奥の隔壁に空いた穴から機外へ飛び出していった形跡もない。機内後部座席にいた生存者が4名いるということ、その誰もが「強風」や「騒音」など感じなかったのであるから、機内では急速な減圧は起きていなかったのだ。
減圧が人間に与える影響
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つづく