「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)5月20日(土曜日)弐
通巻第7755号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アラブ連盟首脳会議に二人の闖入者
ゼレンスキー大統領の演説にアサドはイヤフォンを外した
****************************************
5月18日、広島で開催中のG7に当てつけるかのように、アラブ連盟首脳会議がサウジアラビアのジェッダで開催された。
一方、中国の西安では「中国・中亜首脳会議」が凄まじい宣伝の下で開催された。演出度から言えば、西安の舞台装置はド派手。ミニ五輪のように華やかだった。
アラブ首脳会議への闖入者は、参加国でもないウクライナからのゼレンスキー大統領だ。13年ぶりに復帰したシリアのアサドに注目が集まるはずなのに、アラブ首脳は、闖入者の発言に耳を傾けた。サルマン皇太子は歓迎の意を述べた。
「クリミアには多くのムスラムがいる」とゼレンスキー大統領は言った。
彼の演説中、同時通訳のイヤフォンをこれ見よがしに外していたのはシリアのアサド大統領だった。もとよりシリアのアラブ連盟への復帰は会議直前に認められており、アサド大統領の出席は予定されていた。
いまひとつの驚きというか、疑問はゼレンスキー大統領がフランスの提供した飛行機でジェッダに降り立ち、いきなりサルマン皇太子と会談したことだろう。
他方、G7にぶつけるように西安では「中国・中央アジア首脳会議」が開催され、習近平のもとへは、トルクメニスタン大統領、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスの首脳が集結した。表向きの綺麗事とは別に、鎖国しているトルクメニスタンが出席したことに注目が集まり、またウズベキスタンとキリギス大統領は夫人同伴だった。
中央アジアのイスラム五ケ国は旧ソ連であり、モスクワは、この西安での動きに神経をとがらせた筈である。
ゼレンスキー大統領がジェッダへ飛んだのは、この機会を利用してロシアに中立的な国々をロシアに近寄らせない牽制であり、制裁に加わらないアラブ諸国へのジェスチャーでもある。
▲広島へ押しかける理由は何か?
そのうえでゼレンスキー大統領はG7開催中の広島へ向かうとツィッターで予告し、世界のメディアが驚きを持って報道した。
広島のG7はお祭りでもあるが、バイデンは渋々原爆資料館見学に付き合い、記念写真に納まったものの謝罪はなかった。
ゼレンスキー大統領は直前にキエフを訪問した中国の李輝特別代表等に「1インチも譲らない」と強硬姿勢をしめしたばかりだが、G7に飛び入り参加は、欧米諸国の援助疲れに対しての援助拡大要請、F16供与などの諸問題もあるが、欧米が、ゼレンスキー大統領を抜きにして停戦へ動きかねないムードへ水をさす目的があるようだ。
令和五年(2023)5月20日(土曜日)弐
通巻第7755号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アラブ連盟首脳会議に二人の闖入者
ゼレンスキー大統領の演説にアサドはイヤフォンを外した
****************************************
5月18日、広島で開催中のG7に当てつけるかのように、アラブ連盟首脳会議がサウジアラビアのジェッダで開催された。
一方、中国の西安では「中国・中亜首脳会議」が凄まじい宣伝の下で開催された。演出度から言えば、西安の舞台装置はド派手。ミニ五輪のように華やかだった。
アラブ首脳会議への闖入者は、参加国でもないウクライナからのゼレンスキー大統領だ。13年ぶりに復帰したシリアのアサドに注目が集まるはずなのに、アラブ首脳は、闖入者の発言に耳を傾けた。サルマン皇太子は歓迎の意を述べた。
「クリミアには多くのムスラムがいる」とゼレンスキー大統領は言った。
彼の演説中、同時通訳のイヤフォンをこれ見よがしに外していたのはシリアのアサド大統領だった。もとよりシリアのアラブ連盟への復帰は会議直前に認められており、アサド大統領の出席は予定されていた。
いまひとつの驚きというか、疑問はゼレンスキー大統領がフランスの提供した飛行機でジェッダに降り立ち、いきなりサルマン皇太子と会談したことだろう。
他方、G7にぶつけるように西安では「中国・中央アジア首脳会議」が開催され、習近平のもとへは、トルクメニスタン大統領、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスの首脳が集結した。表向きの綺麗事とは別に、鎖国しているトルクメニスタンが出席したことに注目が集まり、またウズベキスタンとキリギス大統領は夫人同伴だった。
中央アジアのイスラム五ケ国は旧ソ連であり、モスクワは、この西安での動きに神経をとがらせた筈である。
ゼレンスキー大統領がジェッダへ飛んだのは、この機会を利用してロシアに中立的な国々をロシアに近寄らせない牽制であり、制裁に加わらないアラブ諸国へのジェスチャーでもある。
▲広島へ押しかける理由は何か?
そのうえでゼレンスキー大統領はG7開催中の広島へ向かうとツィッターで予告し、世界のメディアが驚きを持って報道した。
広島のG7はお祭りでもあるが、バイデンは渋々原爆資料館見学に付き合い、記念写真に納まったものの謝罪はなかった。
ゼレンスキー大統領は直前にキエフを訪問した中国の李輝特別代表等に「1インチも譲らない」と強硬姿勢をしめしたばかりだが、G7に飛び入り参加は、欧米諸国の援助疲れに対しての援助拡大要請、F16供与などの諸問題もあるが、欧米が、ゼレンスキー大統領を抜きにして停戦へ動きかねないムードへ水をさす目的があるようだ。