沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

クレムリン、米欧を初めて『敵』と呼び始めた   これまでのレトリックは「非友好国」とか「反対者」だった

2024-06-07 21:05:02 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)6月7日(金曜日)
      通巻第8282号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 クレムリン、米欧を初めて『敵』と呼び始めた
  これまでのレトリックは「非友好国」とか「反対者」だった
**********************************

 2024年6月5日、プーチン大統領はサンクトペテルブルクで開催中の「国際経済会議」にあわせて、日本や欧米、中国などの通信社代表と会見した。
プーチン大統領は、日本との間で中断されている北方領土問題を含む平和条約交渉について「現在、平和条約に関する日本との対話を継続するための条件が整っていない。われわれは再開を拒否しないが、必要な条件が整えばの話だ」と述べた。

「日本の立ち位置は平和条約に関する対話継続の障害にならないのか」と、ウクライナへの軍事侵攻以降、欧米に強調してロシアに制裁に加わっている日本に強硬な姿勢を示した。
 プーチン自身の北方領土訪問は「将来必ず行くつもりだ。これらの島々を訪問しない理由はないが、正直なところ別の問題で忙しくまだ計画はない」と述べた。

問題はこのあとである。
クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフは米国を「敵」と呼びはじめた。同報道官は以前、『敵』という語彙を選ぶのはプーチン大統領だけだと主張していた。
これまでクレムリンはウクライナを支援し武器を供給し、モスクワに制裁を課してきた米国やその他の西側諸国を「非友好国」あるいは 「反対者」と呼んできた。

 言葉のエスカレーションに留意すべきである。3月時点でペスコフは「モスクワはプーチン大統領を侮辱する米国当局者に反対しているが、一般的にロシアには反米感情はない。遅かれ早かれ、米国とロシアの国民は敵ではないという認識が最終的に訪れるだろう」と期待を表明していた。
 その2ケ月前にプーチン「西側のエリート層がロシアの真の敵であり、ウクライナは彼らの手先に過ぎない」と述べていた。西側諸国が敵ではなく、そのエリート層に限定して敵という言葉を使っていた。バイデンがプーチンを「人殺し」と読んだが反発を示さなかった。

 メドベージェフ元ロシア大統領などは過去2年間にわたり、ウクライナ支援国を「敵」と繰り返し非難してきた。だがペスコフ報道官は「プーチン大統領だけがロシアの公式外交政策の立場を策定し、表明できる」とし、ほかの発言は非公式なものと述べていた。

 プーチンはこう言ったのだ。
「モスクワとキエフの紛争はロシアを倒そうとする西側エリート層によって仕組まれたものだ。しかし西側は目標を達成できず、その失敗は紛争に関するレトリックの変化に表れている。つい昨日までロシアに『戦略的敗北』を与える必要性について語っていた人たちが、今では紛争を迅速に終わらせる方法についての言葉を探しているではないか」。


ウクライナ平和会議? それよりハリウッドの募金集会だよ   バイデン、平和よりカネ。オバマもジュリア・ロバーツも来るしサ

2024-06-07 21:04:00 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)6月6日(木曜日)弐
      通巻第8281号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ウクライナ平和会議? それよりハリウッドの募金集会だよ
  バイデン、平和よりカネ。オバマもジュリア・ロバーツも来るしサ
**********************************

 6月15日から二日間、スイスで開催されるウクライナ平和会議にバイデンは欠席する。この平和会議はゼレンスキーが半年前からスイスを開催国に頼み、懸命にお膳立てしてきた重要な国際会議でカナダ首相もキシダも馳せ参じる。

 会議ではウクライナが提唱する十の和平案が示される。しかしロシアは招待されておらず、いったい何が目的なのか? 中国外務省も「中国側が求める要素とは隔たりがある」として、会議を欠席する方針を明らかにした。

 ゼレンスキー大統領は6月2日にシンガポールへ飛んで、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説する機会を与えられた。このとき「外交がウクライナとロシアの戦争を終わらせる最善の方法だ」と述べ、スイスで開く「平和サミット」への支持を各国に呼びかけた。同サミットに106の国や組織が参加を表明したという。

 さてバイデン大統領はどうするかと言えば、国際的に不人気なカマラ・ハリス副大統領を差し向け、本人はハリウッドで開催予定の民主党支援チャリティに出席する。俳優のクローニーやジュリア・ロバーツが組織したイベントで、左翼のあいだではいまも人気があるオバマ元大統領も出席するからメディアの注目はこちらにあつまるだろう。

 それにしてもハリウッドは、なぜかくも赤いのか? 
外野でもロバート・デニーロが反トランプの旗を揚げた。前回「反トランプ」の急先鋒はガガとメリル・ストリープだった。
 ハリウッドはユダヤ人とイタリア人が立ち上げ、そのユダヤ人の大半が、反ネタニヤフなのだからややこしい。在米ユダヤ人の半分がソロス等の主張に同調するリベラル派である。


映画通なら薄々気付いているだろうが、主役が黒人の映画がいまや大半である。
エディ・マーフィあたりからブレークスルーが起こり、デンゼル・ワシントンなどでピーク。そして中国が全米映画館チェーンを買い占め、ハリウッドのスタジオも買収するほどに勢いがあったときは、中国を批判する映画を製作しなかった。

チベットを支援したリチャード・ギアやチベットの悲劇を描いた映画に主演したブラッド・ピットらは一時干された。

 悪役も中国人からアラブ系などに移行し、刑事映画などでは上役が黒人という配置になった。
みえない逆差別にLGBTQが加わったから、まだまだややこしくなるだろう。


 アメリカは中国を打ちのめす野心に乏しい   「米中冷戦」はズルズルと、どちらかが刀折れ矢尽きるまで

2024-06-07 21:00:57 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)6月6日(木曜日)
      通巻第8280号  <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 アメリカは中国を打ちのめす野心に乏しい
  「米中冷戦」はズルズルと、どちらかが刀折れ矢尽きるまで
*************************************

米中関係が緊張の度合いを高めている。米国と中国は戦略的影響力を競い合う二つの大国であることには間違いない。両国は自由民主主義国家と権威主義国家という二つのイデオロギー圏の対抗リーダーでもある。

「ツキディデスの罠」にしたがうと、どちらか一方が滅びるまで戦いは続くのだが、米国では中国の脅威認識は八割近くに達するものの、「中国を木っ葉微塵にやっつけろ」とする強硬論は少数派である。

米国の中国論壇は分裂している。
かたや「中国共産党(CCP)は自由主義的な政治価値観に基づく政府と平和的に共存することはできない」と主張し、「抑圧された中国国民を救済する」のみならず、自衛のためにも「自由世界は中国共産党打倒に取り組まなければならない」とする。この訴えはメディアが殆どつたえない。

 典型がマイク・ポンペオ国務長官(当時)の演説だった(2020年7月。加州ニクソン記念館で)。ポンペオは「自由を愛する世界の国々は、中国に変化を促さなければならない。今、行動しなければ、最終的に中国共産党が我々の自由を侵害することになる。そうなれば我々の子孫が中国共産党のなすがままになるかもしれない」と警告した。

 2019年10月のペンス副大統領(当時)の演説は大きく注目された。ペンスは、中国に現実的な関係構築を呼び掛けた演説だった。
ポンペオ演説は、中国共産党と自由・民主主義国家を明確に対比させ、「自由主義の世界は独裁体制に勝利しなければならない」と強硬な姿勢が目立った。

「中国が繁栄すれば民主主義に転換する」などと淡い期待の下での『関与政策(エンゲージメント)』は失敗だったと総括し、1970年代の米中国交正常化を主導したニクソン元大統領が言った「中国が変わらない限り、世界は安全にはならない」を引用して「自由主義の同盟諸国が立ち上がって中国の姿勢を変えるときだ」と直接的な軍事対決には言及しなかった。


 ▼フォーリンアフェアーズにも強硬論文が登場

 『フォーリン・アフェアーズ』(24年5/6月号)で、マット・ポッティンジャー(トランプ政権の国家安全保障担当大統領副補佐官)と連邦議会下院の中国問題委員会委員長だったマイク・ギャラガーが「米国政府は中国共産党の打倒を米国の対中政策の主要目標にすべきだ」と主張した。

「中国共産党政権は、自由主義的価値観を堅持する世界を容認できない。緊張緩和を求めることは米国にとって裏目に出る。したがって米国は中国との競争を『管理』するのではなく『勝つ』よう努めるべきだ」と唱えた。

このような言い分は、現在民主党が牛耳る米国政府の公式政策とは異なっている。
第一に、北京はもはや「激戦または冷戦」において米国または米国同盟国に勝てるという希望を持たなくなっている。
第二に、中国政府は「抑圧的」ではなく、むしろ「共産主義独裁から解放される」とブリンケン国務長官は云うのだ。「我々は中国の政治体制の変革を求めているわけではない」。
随分と融和的な主張だが、目の前にウクライナとイスラエルが絡みつき、これ以上中国にまで戦線を広げることは得策ではないとの判断からだろう。

しかし中国の政治体制の変革を求めないのならば、覇権争いは最初から米国の負けとなるのではないのか。西側は口先介入で誤魔化したから香港は完全に中国共産党管理下に入り香港の自由は殺された。バイデン政権は制裁の継続と拡大で中国の経済力を弱めることに集中している。

他方、中国共産党にとってはその政治権力の独占体制を死守することにある。
中国政府の核心的利益であり、これを攻撃する意図をアメリカが表明するという意味は「中国の完全な敵と位置づけることになって逆効果だ」
とブリンケンは唱えるのである。

 中国メディアはバイデン大統領が2022年のバリ島APECで、また2023年にカリフォルニアAPECで習近平主席と会談した際に 「米国は中国の制度を尊重しており、それを変えようとはしていない」としたポイントを力説し繰り返している。
儀式的なレベルでは、習近平の世界安全保障構想は アメリカを永遠の敵とは考えておらず、むしろアメリカを平和的に共存する世界の一部と見なしている。あくまでも言葉の上のレトリックにせよ。

 中国は米国よりも「民主的」であると主張する。
 (よくそんなことが言えるなぁ)
習政権は「西洋の立憲民主主義」と「普遍的価値」の理念が党の指導的地位の維持に及ぼす脅威を非常に重視している。中国の外交は、米国の世界的な威信と影響力を弱めることに執着している。

習近平が2013年に最高指導者となったとき、中国は世界経済の中心的地位を獲得し、米国との軍事力の差を縮めていた。
習近平が拡張主義的なのは、権威主義的であるというだけでなく、中国が現在、相対的に優位な力と影響力を享受しているという信念に基づいているからだ。

歴史的にみても英国、フランス、オランダ、米国などの「民主主義国家」が、過去に先住民の同意を得ずに植民地を奪取してきた。中国は、依然として日本を憎み、台湾と南シナ海は中国のものだと信じている。中華民国(台湾)は民主主義国であるにもかかわらず、台湾をかならずや統一する、武力行使も辞せずと脅しをかけ、また尖閣諸島と南シナ海をめぐっても一切の根拠を示さず領有権を主張し続けている。2016年の国際仲裁裁判所によるフィリピン有利の判決を中国に対して拒否した。

国際貿易や金融に視野を移せば、米中両国は貿易と投資の管理を必要としているし、気候変動、健康、環境保護、犯罪などの国境を越えた問題では米中の連携が不可欠だ。また偶発的な軍事衝突を防ぐために、相互に意思疎通を図る必要があることも言を俟たない。

経済学でモルガンスタンレーの主任エコノミストだったスティーブン・ローチは『サウスチャイナ・モーニングポスト』(6月3日)でこう述べた。
「米国の対中保護主義は歴史的な大失態で『新たな永遠の戦争』になる危険がある」
ローチは「わたしは過去中国経済について楽観的だった。その時代は終わった。生産効率の低下が質の高い成長を裏切り、中国は世界で最も強力な経済の原動力であるにもかかわらずパワーは衰退している」とした。