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ホルマリンのマンネリ感

北海道在住、ホルマリンです。旅行、怪しい珍スポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、昭和レトロなどなど…。

(青森県むつ市)とびない旅館 ~ディレクターズ・カット版~ 後編

2021-10-19 22:31:32 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
2020年訪問。前編はこちら


2020年10月19日。午前8時ごろに気持ちよく起床。
深夜1時半、あれほどビクビクして布団に入ったというのに、いつの間にかぐっすり寝てしまったようだ。
故に残念ながら怪奇現象には遭遇できなかった。

とびないさんに挨拶しようと階段を降りると、台所で朝食の支度をしていた。
昨日の商品が見つかったよ~!」と嬉しそうだ。
どうやら昨晩寝る直前にボヤいていた、友人から探すよう頼まれていたモデルガンを無事に落札できたらしい。
その後、朝ドラ「●ール」の感想や戦争論、ミリタリートークなど、相変わらず朝から元気だ。
話に夢中になるあまり、作っていた豚バラの野菜炒めを焦がしてしまっていた。

ジャガイモ2個むいて!」と、私も台所に案内される。
そう、とびない旅館ではアトラクションの一つとして「とびないさんと朝食を作ろう!」が問答無用で組み込まれている。
一緒に「いもすり餅」を作るのだ。


この「いもすり餅」というのが、ココに来たら食べずに帰ることは許されない、とびない旅館の名物
下北の郷土料理のようだが、これがかなり絶品なんだとか。
とりあえず指示されるまま、ジャガイモをおろし金ですり、サラシで包んでデンプン汁をしぼり出す。


しぼった汁をつなぎにして小さく団子状に丸め、アジの煮干し、鶏肉と一緒に煮込む。
一方のとびないさんは野菜炒めにデスソースを入れている。
チ●ちゃん(N●K)で辛いもの食べると満足感が得られるって言ってたよ~」との故。


とびないさんが戦争の話に熱が入るあまり、鮭を焦がしてしまうなどしているうちに、昨日来ると言っていたむつ消防署の消火設備点検が来てしまった。
ほとんど朝食は出来ているため「ご飯食べてていいよ~」と言われ、ひとり台所に取り残される。
……ちなみに、駐車場の年代物の黄色い車(フェスティバ)はとびないさんの過去の愛車。ずっと置かれてある。

先に一人で食べるのも申し訳なく思ったので、しばらくテレビを見たり荷物整理をしたりして時間をつぶした。


結局点検は45分ほど掛かり、午前10時半、ようやくとびないさんと朝食だ。
白米or昨日の炊き込みご飯の選択制で焼き鮭、豚バラの野菜炒め、そしていもすり餅と大変豪華だ。


そしてこれもとびない旅館名物、聞いたこともない栄養ドリンク「スカールDX2000」がもれなくついてくる。
生卵に地元企業の納豆、味付け海苔と、ご飯に対してずいぶん多いなと思ったら「生卵をメレンゲ状にかき混ぜて納豆と合わせると粘り気が消える、ぜひ試して」とのことだった。
混ぜ方が足りずイマイチになってしまったが、ホタテ入り炊き込みご飯に納豆卵、そして生卵を追加でくれてこれまた贅沢。

楽しみにしていたいもすり餅だが、噂にたがわずまあ美味しいこと
すったジャガイモを丸めただけなのに弾力があってプニプニ、モチモチである。そして煮干しと鶏肉のダシが出た汁によく合う。
これもおかわり自由である。なんと素晴らしいことか。


食事をしながら、残念ながら座敷わらしに会えず怪奇現象を体験できなかったことを報告する。
だが、とびないさんは「風呂に入らず、快適なベッドでもないのに爆睡できたのは不思議な力が働いているからだよ」という。
ふむ……なるほど。


午前11時半、こちらもとびない旅館のアトラクションの一つ、道路を挟んだ向かい側の「下北妖怪ハウス」を見学させてもらう。
とびないさんが空き家を活用して作り上げたミュージアムである。




シャッターを開けてもらって内部へ入ると、まずはとびないさんの手による飛行機、戦闘機、戦艦、車などの完成品プラモがずらりと展示されており、圧巻である。


昨日会って早々盛り上がった旧・山田模型の車プラモや、私の入門キットだったアリイの1/32旧車シリーズもすべて揃っている。
すべて美しく着色されて仕上げられており感動である。
ジオラマ風に仕上げられた「終戦直後の大湊航空隊」はとびないさんの自信作で、展覧会で賞をもらったこともあるとか。
人物はパテなどを使ってイチから作り上げられている。


で、入った時から気になっていた鬼太郎やねずみ男、猫娘など妖怪の人形
かわいらしいイラストが描かれたベンチもある。
これらは、2003年にここむつ市で開催された「第8回世界妖怪会議」の時に製作されたもの。

まちおこしの一環として、パネラーに水木しげるをはじめ荒俣宏京極夏彦などを招待して行われたこのイベント。
下北妖怪夏祭り」も同時開催され、とびないさんが中心となって準備が進められ、これらの妖怪を商工会議所青年部らとつくりあげたそうだ。



館内に無造作に置かれた当時の資料には、とびないさんの作品と水木しげる氏が並ぶ写真が!
イベント後も下北を妖怪で盛り上げようという話もあったようだが、準備中のもめごと等々であまりうまくいかず、フェードアウトしたとか……。


さて、「下北妖怪ハウス」は2階建てである。
いいよって言うまで上ってこないでね~」ととびないさんは言い、階段を上って行った。どうやら準備があるらしい。




数分待ってから急な階段を上っていくと、そこには手作りの「八大地獄」が広がっていた。
巨大な閻魔像から始まり、臼でつぶされる「衆合地獄」や、嘘をついた者が舌を抜かれる「大叫喚地獄」などが、複雑に曲がりくねった通路に次々と展開される。
真っ暗な空間に赤、青などのセンス抜群のライトアップが効果的だ。




コミカルながら、細部までこだわった迫力あるジオラマは全てとびないさんの手作りだろうか。
これは徳島県「正観寺」とはまた違った見ごたえである。
最後にはちゃんと極楽もあるよ。






地獄を抜けると、突如リアルな商店街に迷い込む。
ここ、建物の2階だよな?と思わずにはいられない見事な場面転換である。


所々にとびないさんのコレクションであるブリキのおもちゃや、怪獣のソフビ人形が飾られており
昭和の雰囲気を演出。
そして、昔ながらの模型店を再現した一角には、これまたコレクションの年代物プラモが天井まで積み上げられ、説得力抜群だ。
個人で作ったとは思えないクオリティである。


最後に、離れにあるとびないさんの秘密のコレクションルームを特別に見せてもらった。
ここにも部屋を埋め尽くすほどの大量の昭和プラモ。いったい何か所にコレクションルームを持っているのだろうか。
見た事もない大型トラックや重機の模型、写真でしか見たことの無い、今は無き会社のものなど宝の山で、ついつい時間が過ぎるのを忘れてしまい話が盛り上がってしまう。
最後には駄菓子屋に売っていたであろう、年代物の小さな袋入りプラモを頂いてしまった。
ありがとうございます。頑張って作って持ってきます。


午後1時。昼前に出発する予定が、ついつい見るものが多くて大幅にオーバーしてしまった。
10時間以上マンツーマンでおもてなししてくれたとびないさんとお別れである。

最後には私の趣味を生かした「楽しく仕事をする方法」などのアドバイスもくれて、私を幸せに導こうとしてくれるいいおじさんだなと思った。
座敷わらしには会えなかったが、もしかしたらとびないさん自身が、この宿の座敷わらし的存在なのかもしれない。
何となく水木しげるの絵に出てきそうな風貌だし(失礼か)。

とびないさんは私が車で駐車場を出るまで、外で見送ってくれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とびない旅館(青森県むつ市田名部町8−6)
1泊2食付で6600円〜(とびないさんといもすりもちを作ろうプラン付)
※電話予約は2週間前に必要。また「一般の宿泊客ではない」旨説明し納得してもらう必要あり。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

完。

※本記事は青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。

(青森県むつ市)とびない旅館 ~ディレクターズ・カット版~ 前編

2021-10-19 22:31:10 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
(2020年訪問)
青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。



唯一無二!超絶怒涛の圧倒的おもてなし!
妖怪テーマパーク&座敷わらしもいる……?

(青森県むつ市田名部町8-6)

青森県の北の果て、恐山で有名な下北半島のむつ市にあるとてつもないインパクトの旅館である。
私がその存在を初めて知ったのは、フジテレビのテレビ番組「何だコレミステリー」だったと思う。
座敷わらしの噂がある旅館を原田龍二が調査するシリーズで登場し、鏡の隅で動く白いカタマリの撮影に成功していた。

その後も「座敷わらしがいる旅館」としてネットでも度々ヒットしたが、調べていくうち、どうも妖怪のウワサ以前にオーナーがとんでもなく個性的らしいという事に気づいた。
まとめると下記の通りである。


・「とびないさん」という、プラモやモデルガンなど工作が趣味のおじさんが一人で切り盛りしている。
・館内は「とびないさん」のコレクションや創作物で溢れている。
・「とびないさん」はともかく話好きで、チェックインからチェックアウトまで
 終始マシンガントークを展開し、付きっきりでおもてなししてくれる。
・そのサービスの特性上、1日1組しか泊まれない。
 

……以上である。珍スポット好きにはたまらなく気になる場所ではないか。
という事で2020年10月、青森県の摩訶不思議な場所を巡る青森ミステリーツアーを決行する際、旅に最もふさわしい旅館という事で宿泊を決意したのだが、案の定、予約の段階から一風変わっていた。


電話を入れた際、とびないさんが「もしもし」とお出になったので「とびない旅館さんですか?」と聞くと「そうでございますけれども何か事件でございますでしょうか」と訳の分からぬ返答……。
戸惑いつつも「いえ、宿泊したいんですけど……」と伝えると
大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??」と半笑いで呆れたようなご様子。

だが、これは想定内。
事前の下調べで、この旅館を利用する際は普通の宿泊客ではない旨、納得してもらう必要があるという事を知っていたのだ。
「日本全国の変わった場所を巡っている」「プラモ製作が趣味で、ぜひコレクションを見たい」「座敷わらしにも会ってみたい」などと慎重に伝えるとようやく「合格!」のお言葉が。やれやれである。


そしていよいよ宿泊当日、2020年10月18日
恐山の観光を終え、ついにむつ市のほぼ中心部、下北交通のバスターミナルや観光物産館のすぐ近くにある旅館に到着した。
時間は午後4時半過ぎである。

事前情報では、駐車場に車を停めるや否や、音を聞きつけたとびないさんが飛び出してくるという話だったが、車から降りてもしんと静まりかえっている。
しかし、年季の入った外観を何枚か撮っていると、正面のガラス戸がガラガラと開き、開口一番「大変な事に気付きました~」と笑顔のおじさん登場。手にはなぜか猟銃のモデルガンを持っている。

とびないさん(59)だ。
お姿はネットなどで何度も見ているので、有名人に会えたかのような感覚である。

何から突っ込めば良いか分からないが、ともかく大変な理由を聞くと、どうやら夕食の炊き込みご飯に入れるホタテを買い忘れていたらしい。
あとで一緒に行こうね。これも旅のうちでしょ。まぁ入って」と館内に入れてもらう。


マスクをせずに来客対応ができる最新システム(段ボールを重ね、顔部分に透明シートを貼ったもの)
などの説明を受けながら、とびないさんの事務所(兼制作場所、兼接客スペース)へと案内されると
さっそく荷物を置かせてもらうのもそこそこに仕事の話、政治の話などが次々と飛び出す。
廊下に旧・ヤマダ模型の車のプラモがあったので、私も再販版を作ったことがある旨を伝えると
話の分かる人でよかった!来るべくしてきたね」と大層喜んでくれた。
気に入ってもらえたようで良かった。


5時半ごろ、ホタテの買い出しのため一緒に車へ乗せてもらい、むつ市内へ繰り出す。
北海道から来た私のために、大間産のホタテをぜひ夕食に使用したいという。
生は焼くと出汁が出て最高だからね」と話す。

行きつけのスーパーや鮮魚店を巡り、3店舗目でようやく発見。喜ぶとびないさんを見て、
こちらもほっとする。
買い物中も模型の話が尽きないが、レジに並んでいるときに突然表情を変え
ところで、夜に何か『出る』のは大丈夫だよね?」と念押しされドキッとする。
そういえば「座敷わらし」の存在をすっかり忘れていた。

なぜ座敷わらしだと断定できるのか聞くと、妖怪研究の専門家が調査に訪れ、
その事象の特徴から座敷わらしと断言されたという。
興味深いので後でゆっくりお聞きするとしよう。


旅館へ戻ると「いろいろやってくるのでこれで遊んでて」と戦車のラジコンを手渡され、とびないさんは2階へ消えていった。
なんでも、モデルガンの修理に没頭するあまり、部屋の準備ができていないという……。
チープな戦車のラジコンは、とびないさんの手によって後退時に旋回するように改造されている。


事務所の隣にある、本来であれば食堂……のはずだが、机の上は作業中のモデルガンやプラモに占領されている。
壁には戦隊ヒーローのソフビや、アメコミのおもちゃなどが貼り付けられている。




なかなか立派な受付。薄暗い中でひとり写真を撮っていると、時計の7時の鐘がボーン、ボーンと鳴り出した。
これは結構雰囲気があるな……と急に怖くなる。
廊下には年代物のプラモが山積みに。見る限り、車、銃に限らず飛行機、船、建築など守備範囲はかなり広いようだ。

2階から降りてきたとびないさんが「これからご飯支度だから、それまでコレクション見てる?」と言うので、奥の部屋に案内してもらった。



かなり広い館内を一番奥まで進むと、元は宴会場だったとおぼしき大広間が。
電気が付けられると、ぜいたくに部屋全体にコレクションが散乱……もとい展示されており、圧倒されてしまった。



青いネコは、とびないさんと仲の良い青森のブロガー「ねこぜ」さんのキャラクター。ロボットの前には、なぜかGLAYのサイン入りポスター(2016年)まである。
奥には軍服各種と、戦車を走らせる自作のジオラマなど。



ガラスケースの中には、昭和アニメのキャラクター人形やメカの関連おもちゃがたくさん。特撮もお好きなようだ。
その他、スプレーで着色途中のプラモや制作道具などが机に置かれ、どうやらこの部屋では子どもたちへの制作教室なども開催しているらしい。


そして大広間の最も奥には、宿泊客のお供え物が並ぶ座敷わらしの祭壇があった。
なぜかとびないさんのファン?による肖像画まである。
しまった、私も六花亭のお菓子でも買ってくればよかった。


ご飯支度がひと段落したのか、とびないさんがやってきて展示物をいろいろ解説してくれる。
有線から無線に改造したラジコン戦車、アニメの通りにあらゆるギミックが仕組まれたメカ、苦労した戦闘機やロケットの模型などなど……。
詳しくは割愛するが、嬉々として語るとびないさんは少年のようだ。


午後9時15分、待ちに待った炊き込みご飯の完成だ。
ほらほら、出来たてのところ撮ってよ」と炊飯器を開けるポーズまで取ってくれる。サービス精神旺盛だ。
そのまま事務所(兼制作場所、兼接客スペース)でとびないさんと一緒に夕食だ。

おっしゃっていた通り、大間産のホタテがごろごろ入ったご飯は香りが最高。
好きなだけおかわりしていいよ!女性のお客さんだってたくさん食べてくんだから」という言葉に甘え、3杯ほど頂いてしまった。なんとも贅沢。


食後はそのままお酒を飲みながら、とびないさんの息つく間もないマシンガントーク
政治論、時事問題、地元の市議会議員のココではとても書けないゴシップネタ、土地トラブル……などなど。
ここも詳しくは割愛……というか、覚えてられない。突然話がぶっとぶので付いていくのも大変だ。
プラモの素組みはただの習作、消費」「落としたプラモの部品を手をかざして、念力で探し当てたことがある」などのありがたい(?)話も頂いた。

話の合間に、とびないさんの秘密のコレクション部屋や、2階の一室に作られたプラモ制作教室なども見せてもらう。
あぁ~、暗いのやだ」と言って、部屋を去るギリギリまで電気を消さないのが意味深で、少し怖かった。


いよいよ、気になっていた座敷わらしについて聞いてみる。
とびないさんによると、先代から引き継いだ築数十年のこの旅館は、見える人からすれば幼稚園のような場所だという。
かなり広大な建物内にとどまらず、屋外の敷地にも子どもたちが走り回っている状態らしい。

「何か変だな?」と思い始めたのは2009年ごろで、原発の整備員が泊まっていた部屋が
内側から鍵が掛けられ、扉が開かなくなる。
その後、女性の宿泊者がイヤリングや髪の毛を触られる、といったエピソードが増えていった。
体験談から1号室には男の子、2号室には女の子がいるといい、宿泊客の性別によって泊まってもらう部屋を分けているそうだ。
なお、とびないさんはその姿を見たことはなく「足音を2回聞いただけ」。


NHKのドラマ「赤毛の●ン」や「未来少年コ●ン」を見せられながら、なおもトークは続き、時間は深夜1時
時折うつらうつらするとびないさんを見て「もう、寝ましょう」と提案する。

ちなみに、きょう泊まってもらう1号室にも出たんだけど」ととびないさんは最後に切り出す。
心霊現象や妖怪否定派の人が冷やかしで泊まりに来て、その日は「いる」「いない」論争で半ば喧嘩状態になってお開きになったらしい。
翌日、とびないさんが朝ご飯の支度をしていると、2階からバタバタと慌ただしく降りてくる音がして
とびないさん、出た出た!いいことあるかな!」と興奮気味に報告したそうだ。
どんな現象に遭ったのかはあえて聞かなかったそうだ。

かなり信憑性の高い話だが、部屋に行く直前にそれを言うか!



とびないさんにおやすみを言い、ギシギシと鳴る階段を上って2階の部屋へ向かう。
ここまで、とびないさんの明るくにぎやかな人柄でかき消されていたが、
いざ一人になって急にしんとなると、その対比も相まって不気味な雰囲気が漂う。
南北に細長い館内は中央の廊下と共同の洗面所以外、消灯されている。


こんなに部屋数のある旅館なのに、いま館内に居るのは自分ととびないさんだけ。
とびないさんの「物理的に怖い状況だよね」という言葉が頭を巡る。


さて、長い廊下の突き当たり左側「1号室」に到着した。テレビ横の姿見が怖い。
チェックインから約9時間を経て、ようやく泊まる部屋を見たことになる。普通の旅館ではあり得ないだろう。
豆電球が灯された部屋に近づくにつれて、甲高い「ピーーー」という音が大きくなってきて早速身構えたが、部屋に設置された防災無線ラジオから発せられている音だった。もう。


洗面所の細長い鏡の前でぽつんと立って歯磨きしている時は生きた心地がしなかったが、何も起こらなかった。
廊下から部屋へ歩いて行く動画を撮ってみたりもしたが、これも違和感は無し。
セルフタイマーで自撮りしてみたが、何か変わったものは写っているだろうか??

もう少し検証したかったが、怖さがピークなのでさっさと布団に潜り込む。
いつもは完全に消灯するのだが、さすがに今日は豆電球以上に暗くできなかった。
まあ、「何か」がボンヤリと見えたらそれで怖いけれども。

後編へ続く。