ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

日本最強の秘境駅 小幌駅(後編)

2015-07-17 12:45:55 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の記事に加筆・修正)
前回からの続きです!

・本当の秘境・小幌洞窟遺跡

トンネルと崖に囲まれた小幌駅から、唯一のびる海岸への細道を歩いてみる。
実はかつてこの細道の脇には小さな待合室があり、なんとホームレスが1人住んでいたという。彼は「小幌仙人」と呼ばれ、マニアの間では有名な存在だったという。
数年前にその仙人が亡くなり、待合室は取り壊された。現在は仙人の住んでいた痕跡はおろか、待合室の建っていた跡すら確認することはできない。


少し細道を歩くと、分かれ道にぶつかった。右へ行けば海岸に出られるが、左は・・・。
・・・小幌洞窟遺跡?
気になったので、左に行ってみることにする。


道は急な上り坂で、かなり狭い。前日降った雨のせいで足元はぬかるみ、歩きづらい。足を踏み外すと、右側の崖にまっさかさまなので、慎重に足を進めなくてはならなかった。
聞こえるのは鳥の声と、はるか下に打ち付ける波の音、そしてかなり遠くを走る国道の橋を渡る自動車の音。
坂を登りきると、今度はつづら折りの急な下り坂。途中にはロープもあり、かなり急であった。

ロープを頼りに、転ばないように気をつけながら道を下りていくと、急に視界が開けた。


入り江だ・・・。


数分道を下り、ようやくその入り江に出ることができた。駅から20分ほどの道のりだっただろうか。
周囲を見まわすと、この場所は崖と森に囲まれていて、僕が今まで歩いてきた道以外、つながっている道がない。つまり、この場所は、駅から20分歩いてくるしか方法はない「秘密の入り江」なのだ。

…それにしてもいい場所である。現在この空間にいるのは自分だけで、自分だけのプライベートビーチ状態だ。駅から20分歩いてきただけなのに、ものすごい秘境に来た感じである。
ちなみに手前のコンクリートの人工物はたぶん桟橋。船もやってくるようだ。

ふと、もう一度入り江全体を見渡すと、あるものに気が付いた。


…なんか鳥居がある!!
どうやらあれが小幌洞窟遺跡らしい。少し不気味だが、近づいてみよう。


なんだか不思議な雰囲気・・・。「史跡・岩屋観音堂」とある。


暗い洞窟の中には、小さな仏像が何体か置いてある。一番奥には、祠のようなものが。中は真っ暗で、何があるのかは分からなかった。

洞窟の近くに建っていた説明板を読んでみる。

岩屋観音
通称 首なし観音
1666年、僧円空が、この洞くつで仏像を彫って安置した。
修行の僧が、熊に襲われこの仏像の後に隠れて、難を逃れた。仏像の首を熊に食いちぎられて以来「首なし観音」と言われてきた。
1894年、泉藤兵衛により首は修復された。と伝えられている。
祭礼は、9月16、17日に行われる。

(すべて説明板より)

…何とも不気味というか、秘境に佇んで一人で読むには恐ろしすぎるお話である(汗)。
どうかクマに襲われませんように…。

12:30 もう昼なので、洞窟の前の岩場に腰をおろし、海を見ながら持参の弁当を食べる。実に静かで贅沢な時間であった。


・思わぬ出会い

入り江からまた20分歩き、再び小幌駅に戻って来た。時刻は1時。意外と時間がたつのが早い。
先ほど駅にいた作業員たちは建物の中に入って行ったらしく、とても静かだ。

ふと、ホームに僕と一緒に降りたおじさんがいるのに気づいた。
現在、この空間にいるのは僕とおじさんだけ。2人が話さないわけがない。

このおじさん、見た目は怖そうな感じだったが、話してみるととても穏やかな方であった。
なんとこの人、札幌市白石区の人で、赤電車の時から僕と同じ列車に乗っていたという。つまり、札幌市の全く違う場所に住んでいた2人が、札幌からはるか遠いこの小幌駅で出逢ったわけである。なんだか不思議な気分~!
彼は鉄道マニアというわけではなく、友人の紹介で小幌駅の存在を知り、おもしろそうなのでやってきたという。もちろん、僕と同じく1日散歩きっぷを使って。
おじさんとは妙に話が合い、趣味の話などでかなり盛り上がった。


しばらく話していると、あっという間に時間は午後3時。
おじさんは、もうすぐやってくる下り列車で帰るという。僕も本当はこの列車で帰りたいが、この列車に乗ると帰宅が約1時間遅れてしまうので、ガマン。

そのうち、例のサイレンが鳴り始め、トンネルの中から1両編成の列車がゆっくり出てきて、止まった。

じゃあ、また会いましょう。」とおじさんは僕に別れを告げ、列車に乗り込んでいった。
彼は列車の窓からもう一度、こっちに向かって手を振った。僕も笑顔で手を振り返す。


じゃあ、また会いましょう。
ゆっくりとトンネルに入っていく列車の後ろ姿を見ながら、おじさんの言葉を思い出す。名前も住所も知らない彼と会うことは、もう二度とないだろう。
旅は一期一会。なんだか切ない気分・・・。


・小幌駅の真実

帰りの列車まで残り約30分。おじさんがいなくなり、僕は日が傾きかけた小幌駅の上りホームに1人で立ち尽くす。
そのうち、建物から先ほどの作業員たちが出てきて、ホームに上がってきた。この人たちも僕と同じ列車で帰るようだ。

ふと、作業員たちの中でいちばんご年配の方(50代後半くらい)が僕に話しかけてきた。「どこから来たの?」と聞くので「札幌から来ました」と言うと、「へ~わざわざ札幌から!?」と関心しているというかあきれた感じの反応をしていた(笑)。
なんだか小幌駅についていろいろ知っていそうな方なので、チャンスとばかりにいろいろ聞いてみる。

ここは昔から作業員のための駅なんですか?
前は信号場だったんだよ。下の海岸には海水浴場もあってね、降りる人は結構いたんだ。昔は上の道路から簡単に降りてこれたんだけどねぇ…。

えっ、それは知らなかった。こんなところが海水浴場だったなんて。現在のひとけのない雰囲気からはとても想像できない・・・。なんだか小樽の「オタモイ海岸」を思い出した。

今はこの駅で降りる人っているんですか?
あぁ、もうすぐ釣りのシーズンだから、釣り人がときどき来る。この辺りはカレイがよく釣れるらしい。

そんな事を話していると、またあのサイレンが鳴り始めた。時計を見ると、列車が来る1分前。ようやく帰りの列車、もとい、この閉鎖空間からの唯一の脱出手段、がやってくる。


トンネルの奥から、列車の音がだんだんと聞こえてきた。大きくなってくる二筋のライトの光。

そしてトンネルの出口から、2両編成の新型車両がヌウッと出てきて、僕の前で停車した。
ドアが開いたときに妙に安心したことは言うまでもない。

作業員たちに交じって乗車し、ガラガラの席に座る。

思い返してみると、小幌駅という不思議な空間での4時間は、思ったよりも短かった。しかし、その短い時間の中で、僕は数え切れないほどいろいろなことを体験したようにも感じる。
それは、今日ここに訪れなかったら体験できなかった様々な事。
一生の思い出に残るような有意義な4時間だった。

列車は小幌駅のホームからゆっくりと動き出した。すぐに真っ暗のトンネルに入り、夕暮れの小幌駅はあっという間に見えなくなった。
帰りの列車に乗れたという安心感で、僕は列車のイスで、ぐっすりと深い眠りに落ちていった。

日本最強の秘境駅・小幌駅訪問、
完。
コメント (2)
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日本最強の秘境駅 小幌駅(前編)

2015-07-17 11:55:11 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の記録に加筆・修正) 

 秘境駅訪問家・牛山隆信氏の「全国秘境駅ランキング」で堂々第1位、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれ、最近はマニアだけでなく一般の人にも有名となった駅が、室蘭本線に存在する。
 小幌(こぼろ)駅。もともと保線作業員のための駅であるため、周囲には深い森以外、何もない。後方は崖、両側はかなり長いトンネルに挟まれていて、どこに行くこともできない。唯一、海岸に降りる細い道はあるらしいが、その海岸も、まわりは断崖絶壁で、外界に出ることは一切できないという。この駅でいったん降りてしまうと、次の列車が来るまで駅から一切脱出不可能、まさに「陸の孤島」という言葉がぴったりの、すさまじい駅なのである。もちろん、降りる人はほとんどいない(いても、物好きか鉄道マニアくらい)。
 「キング・オブ・秘境駅」自分もその駅に降り立ってみたい。ということで、僕は小幌駅訪問の計画を立てることにしたのだが、なにしろ駅に止まってくれる列車が少ない(笑)。さすがに一般の人ならまず利用することのない駅なので、各駅停車も通過してしまうのだ。
 そんな少ない列車本数の中で、僕は午前11:34小幌駅到着の長万部行き下り列車で訪れることにした。しかし、この時間に駅に降りてしまうと、1つ問題があった。
 それは、帰りに乗る上り列車が午後15:26までないということである。つまり、小幌駅に約4時間も滞在することになってしまうのだ。他のプランも考えようにも、札幌からかかる時間や帰宅時間を考えると、僕が降りられるのはこの時間しかない。
 何もなくて誰もいない完全閉鎖空間で4時間も耐えられるのか…。そんな不安を胸に、旅は始まる。


・・・キング・オブ・秘境駅「小幌」駅から4時間脱出不可能!?襲いかかる特急列車の恐怖、秘密の入り江、そして見つけた謎の洞窟。はたして生きて帰って来れるのか!?
これは―
1人の高校生が、小幌駅4時間滞在に挑んだ
全記録である。



2009年10月24日・早朝。

さて、まず始発の地下鉄で札幌駅まで行き、6:48発「快速エアポート」に乗り込む。
今回、小幌駅訪問に使用するのは、JR北海道が毎年、休日・夏休みと冬休み限定で販売している「1日散歩きっぷ」。わずか2200円(注:2009年当時)でフリーエリア内の普通列車・快速列車が1日中乗り放題という超お得きっぷだ。普通にお金を払って小幌に行って帰ってくるよりも断然お得なので、なんともうれしい限りだ。

南千歳駅で快速エアポートを降り、7:22発東室蘭行に乗り換え。古くさい赤色の電車にかなり揺られて、9:04、ようやく東室蘭に到着。
次に乗る列車は約1時間の待ち時間があり、10:00、いよいよ小幌駅へ向かう列車が来たらしいので、ホームに降りる。

ホームにいたのは、かわいらしい2両編成。しかし車両に乗り込むと、とあるアナウンスが。
この列車は、豊浦駅で後ろの車両を切り離します。

…えっ、そんなのあり!?
札幌近郊ではまずあり得ない車両切り離しというアナウンスに、僕は少し戸惑ってしまった。豊浦駅と言えば、小幌駅の3つ手前の駅。やはり秘境だけに、利用者が少なくなるということか・・・。

列車は太平洋沿いをのんびり走る。この日は快晴なので、地平線まで見渡すことができた。
列車の低く味のある警笛を聞きながら、窓から浜辺の小さな村を眺めていると、気分は上京する若者である。
そして列車は豊浦駅に到着。アナウンスの予告どおり、駅員が出てきて、後ろの車両を切り離している。その作業風景は、人の全くいない秘境駅、小幌駅がじわじわと近づいているということを嫌でも実感させる物であった。もうすぐ、たった一人の4時間が始まるのだ。しっかり気を引き締めなくてはならなかった。

後ろの車両がなくなり、身軽になった鈍行列車は、まだ心の準備ができていない僕を乗せて、どんどん”秘境”に近づいていく。

列車は礼文駅に到着。とうとう次が小幌駅だ。しかし礼文駅周辺は、まだ人家も比較的あり、ほんとに次が「キング・オブ・秘境駅」なのか、と疑ってしまった。
しかし、その疑いはすぐに消えた。礼文駅を発車すると、列車は坂をどんどん登り、山岳地帯へ入り込んでゆく。トンネルも多くなってきた。そして3つ目くらいのトンネルに突入したところで、ついにその時が来た。
「まもなく、小幌です。」

利用者のほとんどいない駅なのに、他の普通の駅と同じように流れる女性のアナウンスが、やけに不気味だった。


・ついに小幌駅へ!

列車が、かなり長いトンネル内で減速し始めた。駅はもうすぐそこだ。
はっきり言って、まだ降りたくなかった。
これからたった一人で過ごすことを考えると、怖かった。
期待より不安の方が、断然、大きかった。

まだ心の準備ができていないが、列車は待ってくれない。降りるため、席を立ち、ドアへ向かう。
ドアのガラスに反射した乗客の様子をみると、全員、自分の方を見ている。「まさか、降りるのか!?」といった顔で。

トンネルを出たと同時に、ついに列車が停止した。
しかし次の瞬間、僕の不安はぶっ飛んだ。

アレ?やけにひとけが。
何と駅では7人ほどの作業員が保線作業の真っ最中。さらに、僕の後にもう1人、おじさんが下車した。この人も秘境駅マニアかな?
今までの不安は何だったんだろう。全然一人ぼっちじゃないではないか。少し安心した気分でホームに降り立つ。

自分とおじさんを降ろすと、列車はうるさいディーゼル音を響かせながら、ゆっくりと長いトンネル内に消えていく。
だんだんと見えなくなってゆく赤いライトを見送った。
うわ・・・。何この心細くなる光景・・・(汗)。


興奮冷めやらぬ状態で、改めて駅全体を見回してみる(一緒に降りたおじさんはどこかへ行ってしまった)。
…すごい!!なんという所に駅が!
かなりの山奥にあることは言うまでもないが、一言で言うと「トンネルに挟まれた駅」。


僕が降りた下りホームは、なんとトンネル出てすぐ。かなり短いホームなので、2両編成の列車が来ると(ときどきだが)、後ろの車両はトンネルの中、というふうになってしまうらしい。
鉄板でできた簡易型のなさけないホームである。
ちなみに、向かい側にある上りホームは、コンクリート製の比較的立派な物であった(こっちも短いけど)。


長万部側を見てみる。こっちもトンネル。反対側のトンネル出口から、こっちのトンネルの入り口まで、100mもないだろう。これが「キング・オブ秘境駅」と呼ばれるゆえんか・・・。
ホームの柵にくくりつけられた時刻表によると、1日に小幌駅に停車する列車は、上り(長万部方面)が5本、下り(東室蘭方面)が3本のみであった。それ以外はすべて通過してしまう。

保線作業員の方に変な目で見られながら、駅周辺を観察する。

下りホームにある駅名標。なぜかススのようなもので薄汚れている。その恐怖の理由は、このあと思い知ることになる。


ホームのすぐそばには、作業員の事務所か、休憩所とおぼしき建物があった。線路を挟んだ反対側にも、倉庫のようなものが。もちろん、中には入れない。


駅構内には3本の線路が敷かれているが、真ん中の一本は現在使われていない。3つあるトンネルの出口も真ん中がふさがれていた。
ちなみに、駅周辺は森林のみで、さぞ静かだろうと思っていたのだが、駅のはるか上の方に国道の橋が見え、自動車が橋を渡る「カコンカコン」という音がかすかに聞こえてくる。
むろん、その国道にたどりつくのは不可能であろう。


線路に立って撮影していると、突然、不気味なサイレンが鳴り始めた。しばらくすると、スピーカーから女性のアナウンスが。
列車が入ってきます。線路を横断しないでください!
急いで下りホームに避難する。


そのうち、トンネルの奥から「ドカン!!」という振動とともに、カビ臭い風が吹いてきた。列車がトンネルに入ってきたようだ。
列車が近づいてくるにつれて、その風がだんだんと強くなってきて、ついには台風並みの暴風に!あまりに強いので目も開けていられず、ホームに普通に立っていられない!
そして、列車の轟音がものすごい勢いで近づいてきた。嫌な予感・・・。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。


ギャーーーーーー!!!
特急だった~!!



恐ろしいほどの暴風!!耳に突き刺さる爆音!!
響き渡る警笛!!


…列車は猛スピードで、あっという間にトンネルの中に見えなくなった。
このホーム、かなり狭く、限界まで後ろに下がっても目の前を特急が通過していくので、立っていると生きた心地がしない!

列車が去った後のホームは、ディーゼルの出すものなのか、濁ったほこりっぽい煙で覆われ、周囲がかすんで見える。なるほど、駅名標が汚れていたのはこのせいだったのか。
そう、この小幌駅、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれているが、幹線である室蘭本線に存在しているため、
頻繁に列車が通過する。
上り・下りの特急はもちろん、貨物列車、さらには1両編成まで、かなりの数の列車が最高速度で通過する。そのたびにこの恐怖を味わわなければいけない。

…ホームにいるのが怖くなったので、次は海岸に行ってみることにする。

次回!
不気味な洞窟を発見し…駅の謎も明らかに!

その2へ
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秘境駅探訪 札沼線豊ヶ岡駅

2015-07-17 11:16:40 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の文に加筆・修正)

 札幌市から石狩平野を通って新十津川まで延びている札沼線(愛称・学園都市線)。札幌~石狩当別間は、住宅街の中を走るので通勤・通学などで使う人が多く、にぎやかである。しかし石狩当別を過ぎると、列車は広大な田園地帯の中を走り、利用者は格段に少なくなる。そして終点の新十津川まで行く列車は1日3本と、かなり少ない。
 そんな石狩当別~新十津川間にある「豊ヶ岡」駅は、辺りに何もない「秘境駅」としてマニアにはかなり有名。秘境駅ブームの火付け役、牛山隆信氏の「全国秘境駅ランキング」でも21位にランクインしている。
 豊ヶ岡駅、札幌からそれほど遠くはないので、訪問することにした。

2009年10月18日早朝。日曜日で客もまばらな札幌発普通列車に乗って石狩当別駅にやってきた。ここで新十津川行きに乗り換える。向かいのホームに停車していたその列車はなんと

1両編成!!ワンマン!!
JRにもめったに乗らない僕にとって、1両編成に乗るのはもちろん初である。いや~ワクワクしてきた。
列車内には乗客がわずか3人。エンジン音を響かせながら、田園地帯の中を快調に進んでゆく。

石狩当別駅で15分ほどの停車時間の後、再び出発。いよいよ次が豊ヶ岡駅だ。

さっきまで田園地帯の中を走っていた列車だが、ここに来て林の中へずんずんと入ってゆく。人家が全く見えなくなったところでようやく豊ヶ岡駅に到着。切符を運転手さんに見せる。
「なんでこんなところで降りるの?」と変な目で見られると思ったが、運転手さんは笑顔で「ありがとうございました。」

降りたのは言うまでもなく自分一人。
ドアが閉まり、列車はゆっくりと駅から遠ざかって行った。次の列車は1時間36分後。ゆっくり探索できる。


さて、あたりを見回してみると、ホーム周辺は林だけで、何もない。ポツンとホームだけがそこにあるといった感じだ。さすがに有名な秘境駅だけある。ときどき遠くの方から車の音が聞こえるが、かなり静か。虫の声だけが響く。



ホームから少し離れたところに、ちっぽけな木造の待合室があるが、そこは後で入ってみることにして、待合室横の砂利道を登ってみる。
数分登ったところで、小さな道路に出た。この辺は家が数件あり、人の気配もある。
跨線橋があったので、そこから駅を見下ろしてみると、なんともすごい光景だ(下の写真)。ホントに林の中にぽつんとホームだけがある事がわかるだろう。

この場所、有名な撮影場所らしく、跨線橋の金アミには写真を撮りやすいようにご丁寧に穴が開けられていた。おそらくマニアの人が無理やり壊して作った穴だろう。
う~ん・・・、アミを壊すのはよくないことだが、僕もこの穴から写真を撮らせていただいた(←オイ!)


駅に戻り、次は待合室に入ってみることにする。外観からして、かなり昔からある待合室だろう。入り口の上に掛かっている札には木彫りで「豊ヶ岡駅」。良い雰囲気。


滑りの悪いガラス戸をガラガラとあけて足を踏み入れると、昭和の香りがモワ~ン。かなり小さな内部には小さな机と、木製のベンチが2つ。ベンチには手作りの座布団が2つ置いてあった。しかしベンチはホコリっぽく、クモの巣だらけだったので、座る気にはなれなかった。また、そこらじゅうを何匹ものハエが飛び交っているので、居心地はよろしくない。
壁には、いろいろな人が撮った豊ヶ岡駅の写真がずらりと貼ってあった。

机の上には、秘境駅には定番の「駅ノート」があった。駅ノートとは、その駅に訪れた人が自由に書き込みのできる、その駅備え付けのノートの事である。もちろん僕も書き込みをした。

列車が来るまでまだまだ時間があるので、ノートを読む。有名な秘境駅だけあって、道内はもちろん、本州からわざわざやってくる人も多いようだ。そしてみんながこの駅の雰囲気やロケーションに感動した、ということを書いている。そして驚いたのは、デートとしてカップルで訪れる人も多いということ。
ノートの中には、秘境駅訪問家・牛山隆信氏の書き込みもあり、感動であった。

列車が来るまで残り30分。ホームに戻り、子供みたいに線路を渡ったりして遊んでいると、あっという間に残り3分。


ホームに上がって待っていると、ようやく遠くからライトの明かりが見えてきた。新十津川で折り返してきたさっきの1両編成だ。運転手さんもさっきと同じ方。列車に乗り込むとき、運転手さんにはなんだか少し恥ずかしかった。

豊ヶ岡駅での1時間30分弱。特になんにもしなかったが、、妙に充実した時間であったと感じた。

完。
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