語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


奥能登の美しい宿

2010年09月01日 | 能登の花
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その美しい宿「さか本」は、

能登半島の先端、珠洲の町はずれ、

畑と民家の間の細い道をたどり、

風にさざめく緑のトンネルをくぐっていくと、

静かに姿をあらわし、我々を迎えてくれる。


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部屋にはテレビもエアコンも冷蔵庫もなく、

自然の中に身をゆだねる心地よさを

存分に味わいながら、そのひとときを過ごす。



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豊かな自然につつまれた館は、

春の桜、秋の紅葉のころの美しさは格別だが、

夏は蚊帳の中で眠る楽しさ、

冬は囲炉裏や薪ストーブでほっこりする幸せ、

どの季節に訪れても、心を満たしてくれるものがあるのだ。


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私がいつも楽しみにしているもののひとつが、

玄関に飾られる一輪の花。

一輪挿しは、簡単なようで難しい。

今日の客をもてなす気持ちを表す一輪、

これは、という一輪を選ぶのは、

なかなか緊張感をともなう作業だと思う。


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で、この日は、庭のサルスベリを一輪切って

黒っぽい珠洲焼の花器に さっと生けてあった。

この華やかな紅色が、

心に灯って、明るい気分にさせてくれた。

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「さか本」の魅力は、なんといっても

お料理がすばらしく美味しいこと。

能登の海でとれた幸、

能登の野山でとれた幸、

近所の農家がこだわって作った豆や蕎麦、


そして、おいしいご飯。

能登は、今でも当たり前のように

お米を ” はさ ” にかけて天日で干す。

そのお米とおいしい水入れて、

お釜で炊くのだから、もう. . .

Wabisuke

手間ひまかけて作られたお料理を、

丁寧に運ぶ子供たちの所作も、また美しく、

集ったみんなの顔も、ほころびっぱなし。

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夏の終わりで、静かな館内、

我々は総勢7人だったので、

時々、離れの部屋でもくつろがせて頂いた。

池にせり出した建物で、

蛙や虫の声につつまれながら過ごす。



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どこまでが自然で、

どこまでが作られたものかわからないほど

作為的でない風景。


そしてその もてなし方も、自然。

「いらっしゃいませ」と

満面の笑顔で迎えてくれる訳ではない。

あれこれ説明もなし。

でもあたたかい気持ちが、じわっと伝わってくる。


帰りしな、ご主人の坂本さんが、

庭に咲く野花を一輪、

お土産にと手折ってくださった。

それを子供たちが工夫して、

家に着くまで枯れないようにつつんでくれた。


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いつまでも余韻の残るやさしさ。

能登はいつもこんな風にあたたかい。


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