語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


想像の世界を旅する

2010年03月08日 | アトリエから
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京都の「花ノ木」という町から、一枚の絵葉書が届いた。

薔薇の花が咲く中を、お祭りの行列が進んでいく。

花や楽器や香水の瓶のようなものを持って

人々は楽しげに進んでいく。


この幻想的な絵葉書の差出人が、

私の店を訪ねてきてくださったのは、一週間ほど前のこと。

楚々として、瞳のきれいな女性だった。


以前、金沢を紹介するある本の中で、私は、

「一年中、白い花の咲く道」や

「夕べの月見草の原っぱ」

など、漠然とした情報を掲載してもらったことがあるのだが、

この京都のひとは、そこがどこか教えてほしいのではなく、

美しい幻想の世界に共感するために、

私をわざわざ訪ねて下さったのだ。


そのひととき、私たちは、花咲く情景を語りながら

それぞれの想像の世界を浮遊していた。

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地球上にある美しい風景を、私たちは

一生のうちで、いくつ見に行くことができるだろう。

私も、時間があればいろんな旅をしてきたが、

遠くへ行かなくても、身近にこんなみずみずしい世界があり、

またそこへ行く時間さえもない時は、

私たちには「想像力」という宇宙がある。

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たくさんの情報があふれかえり、

おぼれそうになる今の世の中で、

ひとつ感性にひっかかったことに

じっと目をこらし、

反すうし、

大事に心の中で育てていくこと。


京都のひとは、この葉書の絵が大好きで、

長い間、お部屋に飾ってあったのだという。




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そんな丁寧な生き方をしているひとは、

白色の花の印象を残して去り、

心の中で染めた花びらを一枚、

私のもとへ送ってくださった。


そして私はこの一枚の小さな絵から、

想像の世界を旅していく。





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