語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


松井清造さんの椿

2012年02月29日 | 作品展、コンサートなどのイベント
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今回の花と器展にあたり、

すばらしい椿の花を提供して下さった方のことを

ここでぜひ書いておきたい。

ここ金沢で、新しい椿を次々に生み出す

日本でも稀有の存在、松井清造さん。

新品種の研究、開発に取り組み始めて3、40年、

尽力の末に生まれた氏の椿は

それはもう、椿のイメージが一転するほどだった。

椿は、種を蒔いてから花が咲くまで

8~10年もかかるというから、

それは気の遠くなるような挑戦だろうと思う。



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松井さんは、造園業を営むお父様と一緒に

庭師として働きながら

20代の頃、最初はバラの品種改良に興味を持ち、

フランスへ視察に出かけたそうだ。

そこで何百年の歴史に直面し、

とても自分の人生をかけてもかなわない、と

帰国後、 椿 の研究に方向転換したのだそうだ。













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椿はもともと大陸から渡ってきたもので、

インドや台湾、中国の雲南省など

温暖な地、あるいは熱帯にまで広がる花であるが、

中でも強靭な種が、海から流れ着いて日本にやって来て、

日本海側では藪椿(ヤブツバキ)を群生させるまでになった。

金沢に自生する 雪椿(ゆきつばき)は、

雪の中でも咲くように進化したのだそうだ。


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松井さんは、暑い国の品種と金沢の品種をかけ合わせて

南国産の艶やかな色彩に、

耐寒性を兼ね備えた椿を作ってしまうなど

いかにも難しそうなことを次々に成し遂げてこられた。

何百種類もの交配から

わずか2,3種類の、可能性のある良品ができる、

というから、並の根気ではできない研究だろうと思う。





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そうして様々な困難も乗り越えながら生んだ

「ベルサイユ」と名付けた八重咲きの椿、

開くとなんと20cm にもなるという濃いピンクの椿

フランス大使館や大統領官邸の庭に植えられたのだそうだ。


かつて薔薇の研究を彼の地であきらめ、

代わりに選んだ 椿 で日本の代表として

フランス大統領のお庭を飾ることになるなんて、

なんてドラマチックな展開なんだろう。



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松井さんの椿のお話には

面白いエピソードがありすぎて、

つい時間を忘れて聴き入ってしまう。

険しい山を登るような大変な仕事に違いないのだが、

椿を心から愛し、楽しんでいらっしゃると感じる。










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そうして愛情を注いで育ててこられた椿の花を

今回の、私が企画した花と器展のために

惜しげもなく提供してくださった松井さん。


何十年の重み、魂こめて一瞬だけ咲く花を

開発文七さんのすばらしい器でちゃんと活かしきれるか、

私は大きな重責を感じたが、

この不思議なめぐり合わせに

身震いするほどの感動を覚えている。


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