いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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愛国心や、神奈川県民としての郷土愛がはぐくまれてくることを期待/山崎孝

2008-02-16 | ご投稿
【日本史 神奈川が必修化 全国初 県立高、13年度から】(2008年2月15日付東京新聞)

神奈川県教育委員会は十四日、二〇一三年度をめどに、すべての県立高校で日本史を必修化する方針を明らかにした。中央教育審議会(中教審)が、次期学習指導要領での日本史必修化を見送ったことを受け、独自に踏み切った。主要科目の必修化を全県的に実施するのは全国で初めて。

現行の学習指導要領では、高校の地理歴史科は世界史が必修で、日本史と地理はいずれかを選択して履修する。県教委は「国際社会で主体的に生きていくための基盤として、日本の歴史や文化に対する理解を深める教育は重要だ」として、次期指導要領での日本史必修化を求めていた。

県教委の必修化の方法は、地理歴史科で世界史のほかに(1)「日本史A」(近現代史、二単位)か「日本史B」(通史、四単位)を履修する(2)地理を選択する場合、県教委が新たに設ける「神奈川の郷土史」と「近現代史」のいずれかを履修する-の二通り。

文部科学省教育課程課は「学習指導要領を逸脱するものではなく、問題はない」としている。

今後二年間で、新科目のカリキュラムや教材などを研究し、一〇年度から一部の高校で試行。新指導要領の実施が予定される一二年度か一三年度に合わせて、約百五十校すべてで導入する。

都道府県教委が公立高校で独自に必修科目を定める例は、東京都教委の「奉仕」や、茨城県教委の「道徳」がある。

【すばらしい判断】松沢成文・神奈川県知事の話 以前から若い人には、自国の歴史をしっかり学んでほしいという願いを持っていた。県教委の判断は大変すばらしく、必修化によって日本人としての愛国心や、神奈川県民としての郷土愛がはぐくまれてくることを期待している。(以上)

朝日新聞にも日本史 神奈川が必修化の記事がありましたが、記事を読んでも、ことの本質は一般読者は掴み取れませんでした。ことの本質は個人の内心の自由に介入し、国家がコントロールし易い国民の育成にあると思います。

このことは、神奈川県教育委員会が、2007年10月29日、県立高校の卒業式と入学式で君が代斉唱の際に起立しなかった教職員の氏名を校長に報告させていることについて、県個人情報保護審査会が「県個人情報保護条例が禁止する思想、信条に関する個人情報の収集に当たる」として、是正を求める答申を出しましたが、神奈川県教育委員会は守らないことにも表れています。

松沢成文・神奈川県知事は愛国心を持つことを期待して《以前から若い人には、自国の歴史をしっかり学んでほしいという願いを持っていた》と語っていますが、日本の1931年から1945年までの戦争の歴史をしっかり学ぶことは、愛国心を植えつけられ国家の政策に批判力を失い盲従した日本の歴史が明確に掴むことになると思います。

日教組の教育研究集会実践報告/山崎孝

2008-02-15 | ご投稿
(2008年2月10日付朝日新聞より)

 日教組の教育研究全国集会が東京都内で2~4日開かれた。24の分科会、二つの特別分科会に延べ約1万2千人が参加し、教室でのさまざまな実践が報告された。この中から、沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題を題材に史実の扱い方や戦争と平和を考えさせた小・中・高の取り組みと、フリーター問題についての高校の授業を紹介する。(星賀亨弘、葉山梢)

 那覇市立城東小の下地史彦先生は、5、6年生の授業で歴史教科書の読み比べに取り組んだ。「地上戦」「集団自決」「ひめゆり学徒隊」など沖縄戦で思いつく言葉を挙げさせ、87年以降に使われている小、中、高の教科書9種でどう記述されているかを示した。

 自分で使うならどれが良く、どれがだめか。2種類選ばせると、日本書籍(小学校用・94年)と帝国書院(中学用・02年)に人気が集中した。いずれもほぼ1ページを使って沖縄戦を説明していた。

 「だめ」の方は本文で数行のみの高校と中学の2種に集まった。いずれも最も多くの中高生が使っている教科書だと説明すると、「簡単すぎ」という声があがったという。

 千葉県立布佐高校(我孫子市)の鳥塚義和先生は、1年生の現代社会で沖縄戦を10コマかけ取り上げた。

 もし自分がガマ(壕)に隠れていて、米軍から投降を呼びかけられたらどうするかを考えさせた。「出る」という答えが多かったが、実際には投降せず命を絶った住民が多い。「それはなぜか」と問いかけた。

 最後の課題として、集団自決をどう説明すべきかを150字以内で書かせてみた。72%が「日本軍が関与した」などと主語を明記した。鳥塚先生は「沖縄戦も検定問題も知らなかった生徒が大半だが、資料を示せば真剣に考える」と話す。

 宮崎県立延岡工業高校(延岡市)では、松元史年先生が1年生のクラスで昨年9月、満州からの引き揚げ体験記を朝読書で読ませた。引き揚げを実体験した先輩講師(68)に書いてもらった手記で、病気で死んでいった兄弟たちや、ソ連兵の暴力、日本軍が住民を置き去りにして逃げたこともつづられていた。

 そのすぐ後、松元先生は沖縄で開かれた検定に抗議する県民大会の現場に行った。その様子を撮影したパンフレットや、集団自決で住民が使った手投げ弾の写真を見せた。授業後に集めた感想には「昔あった出来事を忘れない」「教科書で勘違いをしてしまう」という記述がならんだ。

鳥取県立青谷高校(鳥取市)で国語を教える尾坂紀生先生は昨春、キャリア教育の一環で招いた講師が「フリーターやニートになってはいけない」と力を込めて話すのを聞き、不安になった。「なるな」と強調すればするほど、生徒はフリーターを馬鹿にし差別するようになるのではないか。日頃、在日朝鮮人や出身者に差別的な発言をするのも気になっていた。

 そこで2年生の「国語表現」の授業で、同じ言葉でも自分と他人とでは違ったイメージをもつことがあることを考えさせることにした。最初に選んだ言葉は「恋」。「いつの間にかその人のことを考えている」「苦しいけど楽しいこともある」などと、実感に基づいた稜々な定義が出た。

 次に「フリーター」を定義させた。「適当に行き当たりばったりに生きていく」「職を転々としてる」「ただなんとなく働いている」などほとんどが否定的な印象を持っていた。

尾坂先生は、正社員とフリーターの年収や生涯賃金の差、企業が人件費削減のため非正規雇用者を増やしていることをデータを示しながら説明。さらに、作家でもある雨宮処凛さんの「生きさせろ!」からこんな文章を引用した。

 《我々は反撃を開始する。若者を低賃金で使い捨て、それによって利益を上げながら著者をバッシングするすべての者に対して》

 こうした授業の後、改めて定義させた。「正社員よりも大変なことをしている人たち」「給料が安いのに必死で働いている」「正社員よりやる気や技術もあることがある」といった肯定的な表現が増えた。

 尾坂先生は「自分の中に差別的な部分があったことに気づいた生徒が多くいた。これを磯に、他の言葉の意味も問い直すようになって欲しい」と話す。(以上)

「グランドプリンスホテル新高輪」は、生徒の思考力を育てよう、社会を偏見なく見る力を育てる教師の教育活動を学びあう教研集会を、右翼の妨害に屈服してしまい、全体集会の会場を直前になって使用契約を破棄しました。「グランドプリンスホテル新高輪」は「お客様の安全と安心を守る使命が果たせなくなるため」という言い分です。この言い分は警備を工夫すれば解決できる問題です。ホテルは公共性を持っていますから、集会を不当なやり方で妨害する右翼団体に対して毅然とした態度で対処し、日本の社会の民主主義を守る使命があります。

国民も右翼の妨害を傍観していたら、民主主義はますます侵食されてしまいます。民主主義を奪われる社会の行き着くところは、自由に生きられない社会の出現です。

お詫びして訂正します。昨日の「米軍の綱紀粛正疑問」県議会が抗議決議(2008年2月13日付沖縄タイムスより)は、2月14日付でした。

「米軍の綱紀粛正疑問」県議会が抗議決議/山崎孝

2008-02-14 | ご投稿
(2008年2月13日付沖縄タイムスより)

米兵による女子中学生暴行事件を受け、県議会(仲里利信議長)は十四日午前、「在沖米海兵隊員による少女暴行事件に関する抗議決議」と意見書を全会一致で可決した。決議は、米軍人による凶悪事件が後を絶たない状況に触れ、「米軍の綱紀粛正への取り組みや軍人への教育のあり方に疑問を抱かざるを得ない」として、被害者と家族への謝罪と完全な補償、再発防止策に万全を期すことなどを求めている。

十五日に県内の日米関係機関、十八、十九日に都内の日米関係機関に直接申し入れを行い、十九日夕に記者会見を開く予定。

抗議決議は「女性に対する暴行は肉体的、精神的苦痛を与えるだけでなく、人間としての尊厳を蹂躙する極めて悪質な犯罪であり、県民に強い衝撃と多大な不安を与えている」と指摘。「特に被害者が無抵抗な少女であることを考えれば、断じて許すことができない卑劣な行為」と断じた。

さらに、昨年十月に嘉手納基地内に住む米軍人の家族による強姦致傷事件、先月七日には普天間基地所属の米兵による強盗致傷事件など凶悪事件が相次いでいる点を指摘。「またもやこのような事件が発生したことに対し、激しい憤りを禁じ得ない」と訴えている。

その上で(1)被害者および家族への謝罪および完全な補償(2)実効性のある具体的な再発防止策について万全を期す(3)米軍基地の一層の整理縮小を図るとともに、海兵隊を含む米軍兵力削減の推進―を要求している。

抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官、在日米軍沖縄地域調整官、在沖米総領事、在沖米海兵隊基地司令官あて。意見書は内閣総理大臣、外務、防衛、沖縄担当大臣あて。

[解説] 実効性ある綱紀粛正を

在沖米海兵隊による暴行事件に対する県議会の抗議決議は、女子中学生が被害者になった米軍人犯罪への怒りを示し、実効性のある綱紀粛正と米軍基地の目に見える形の整理縮小を日米両政府に突きつけた。

市町村議会の抗議決議が相次ぐ中、基地問題の早急な解決を求める県民世論をさらに高め、全県的な抗議行動に拍車が掛かりそうだ。

決議案を審議した県議会米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は、「実効性がある再発防止策」という案文に、「具体的な」という文言を加えた。米軍側の綱紀粛正が形骸化していることへの強い不満とともに、「これ以上の事件再発は絶対に許さない」という憤りを強調した形だ。

米軍構成員による女性暴行事件は、一九九五年の米兵暴行事件以降も十四件発生している。野党委員は「基地あるがゆえの事件。海兵隊はすべて撤退すべきだ」とし、普天間飛行場移設を盛り込んだ米軍再編を進める県の姿勢を批判する。

自民党県連の外間盛善会長代行らも十三日に在沖米総領事館を訪れ、「綱紀粛正の徹底がなければ、日米安保の根幹を揺るがす」とケビン・メア総領事に迫った。

抗議決議が全会一致で可決されたことで、超党派の県民大会を求める動きが強まるのは必至だ。

ただ、「決議の趣旨で、日米両政府に早急な基地の整理縮小を求めるべきだ」と主張する野党側に対し、与党側は「米軍再編の推進で、現実的な整理縮小を進めるべきだ」と慎重な構えだ。

普天間飛行場の移設問題でも、与野党のスタンスは違う。抗議決議で実効性ある再発防止策や兵力削減で一致しても、具体的な方向性の相違は明確で、県民大会の実現は不透明だ。

軍特委では、喜納昌春氏(社大)が「事件を防げなかった責任は国や県だけでなく、県議会にもある」と発言した。事件の再発防止に向けては、県議会の具体的かつ実効性ある対応も問われる。(政経部・与那原良彦)

【女性3団体、強く抗議/米兵暴行事件】(2008年2月13日付沖縄タイムスより)

「暴力と隣り合わせの生活を、これ以上続けられない」。米兵による暴行事件で、女性三団体が十三日午前、日米両政府の機関を相次いで訪れ、抗議の声を上げた。戦後六十三年間、生活に侵入してくる軍隊の暴力にさらされてきた女性の歴史を突き付けた。抜本的な再発防止策としての基地撤去と、被害者への謝罪や精神的ケアを求めた。

◆県婦人連合会 県婦人連合会(小渡ハル子会長)は、沖縄防衛局を訪れ事件に対し抗議。小渡会長は「こんな状態では、子どもを安心して生み育てることはできない。この問題は強く抗議しなければならない」と語気を強めた。

要請書は「事件は基地あるが故に起こった凶悪事件」と厳しく批判。「日本全国の米軍基地75%をかかえる沖縄で同じような問題が、また起こらないとは限りません」「基本的には基地の撤去を一日も早くと要請」するとした上で、「米兵に対する綱紀粛正と再発防止の徹底」「県民の人権を守るため米兵の教育の徹底」「一日も早い基地の撤去、または整理縮小」を強く求め、厳重に抗議する、としている。

同会は同日中に、県、県議会、在沖米国総領事館にも同様の要請を行う。◆新日本婦人の会 新日本婦人の会沖縄県本部(前田芙美子会長)のメンバー七人は、外務省沖縄事務所を訪ね、「卑劣な犯罪に激しい怒りを禁じえない」と強く抗議。「基地がなくならない限り事件は続く」とし、再発防止へ実効性のある対策や新基地建設の中止、地位協定見直しなどを要請した。

前田会長は「これまで二度と事件が起こらぬよう何度も申し入れてきたが、砂をかむようなむなしさを感じる」と訴えた。

対応した山田俊司外務事務官は、事件翌日に米側に再発防止と綱紀粛正を申し入れたことや、米兵への教育に取り組んでいるとし、「再発防止に全力を挙げたい」と述べるにとどめた。

◆基地許さない女たちの会 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代、糸数慶子両共同代表ら四人は浦添市の在沖米国総領事館にケビン・メア総領事を訪ね、基地外に住む米兵の行動管理と規制などを申し入れた。

同会は「外出制限時間の前に起きた事件であり、まして基地外に住んでいれば制約はない」と問題視。同会によると、メア総領事は「事件は一つ発生しても(数として)多いと考える」と述べる一方で、「米国人が基地外に住むことに反対なのか」と聞いたという。

高里、糸数両共同代表は「軍人が基地外に住むことが事件につながった」と認識の落差に反発した。

駐日米大使や在日米軍司令官の来県には、「事件を深刻に受け止めたというより、沖縄の基地反対の声が広がらないよう必死で対応しているだけだ」と冷めた視線を向けた。

同会は同じ要請文を、近くブッシュ米大統領あてにも郵送する。

国際潮流と合わない方向の日本の歩む道/山崎孝

2008-02-13 | ご投稿
少し前ブログで「対話は、軍事的手段ではなく衝突に対峙する最善の方法だ」という基調の会議「文明の同盟」の第一回フォーラムがスペインで開かれたことを紹介しました。ヨーロッパでは欧州共同体があり、アジアでは「文明の同盟」と同じ基調の条約と機構があります。以下の記事を読むと、改憲して集団的自衛権行使を可能にして日米同盟を強化していく日本の方向が時代に合わないことをつくづくと感じます。

【TAC(東南アジア友好協力条約)/ユーラシア覆う/平和の共同体 9条と共鳴】(2008年2月11日付「しんぶん赤旗」)

 憲法九条と響きあう「戦争放棄」の流れが世界に広がっています。東南アジア友好協力条約(TAC)です。五カ国でスタートした同条約にはいま二十四カ国が加入。ユーラシア全体を覆いつつあります。TACはどういう歴史をへて誕生し、どうやって平和を作り出そうとしているのでしょうか。

「TAC」って? TACは一九七六年に、「世界の平和、安定、調和をいっそう促進するために、東南アジアの内外のすべての平和愛好国との協力が必要」(前文)という考えから結ばれました。当初の加入国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの五カ国です。

 条約の最大の特徴は、「武力による威嚇または行使の放棄」や「紛争の平和的手段による解決」、つまり戦争放棄を定めた日本国憲法と共通する目標を明記していることです。

 加入国間で争いが起きたら、「武力による威嚇や武力の行使を慎み、常に加入国間で友好的な交渉を通じて、その紛争を解決する」と定めています。当事国だけで解決することが難しい場合は、加入国の閣僚級代表でつくる理事会が仲介することも明記されています。

 国連憲章の諸原則、バンドン会議(一九五五年)の平和十原則、東南アジア諸国連合(ASEAN)設立宣言、「平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)宣言」を再確認し、加盟国間の永遠の平和と経済、社会、文化などでの協力をめざしています。

 二〇〇五年から三回、「東アジアにおける平和、安定及び経済的繁栄を促進することを目的とした対話フォーラム」で共同体形成をめざす東アジア首脳会議が開かれており、TAC加入が参加条件です。

なぜ戦争放棄? 東南アジアの国々が長年にわたり、戦争によって苦しんだことが背景にあります。

 一九五五年にインドネシアのバンドンで、第二次世界大戦後に独立したアジア・アフリカの旧植民地国など二十九カ国が国際会議を開きました。日本も参加しています。

 会議が採択した「バンドン十原則」は、国連憲章の原則をふまえ、主権尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決、武力行使の放棄が盛り込まれています。欧米の植民地支配や日本の侵略戦争に苦しんだ国々は、自分たちの運命は自分たちで決めることに合意したのです。

 TACの精神の原型はここにあります。

 ところがバンドン会議後、東南アジアは米国のベトナム侵略戦争に巻き込まれます。米国は南ベトナムに親米独裁政権を据えて介入を深めます。南ベトナムでは米国と独裁政権に対する解放闘争が拡大。米国はベトナム北部への空爆や南部での米軍の投入など侵略をエスカレートさせました。

 こうしたなか、東南アジア条約機構(SEATO)加盟国のタイとフィリピンの米軍基地などが戦争の足場にされました。

 ベトナム侵略戦争が続く中で、一九六七年には、東南アジア諸国連合(ASEAN)が結成されます。ASEANは七一年、「平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)宣言」を発表し「中立志向」を明確にしました。

 七五年四月、米国がベトナム侵略戦争に敗れ、南北ベトナムは統一されました。翌七六年二月、ASEANはインドネシアのバリ島で初めての首脳会議を開き、ベトナムなどインドシナ三カ国との友好関係樹立の意思を表明するとともに、TACを締結したのです。

日米の態度は? 日本は〇四年にTACに加入しました。〇三年のASEAN首脳会議では加入を拒否しましたが、理由は「相互不可侵を基本とするTACと日米安保条約との整合性がとれないため」でした。

 日本が一転してTAC加入を決めた背景には、ASEAN側の不満とともに、日本政府内、経済界の一部からの批判がありました。とりわけ、急速に力を増しつつある中国とインドが加入したことに、日本政府はアジアで取り残されるという危機感を感じていました。

 米国はTACへの加入申請をしていません。

 それでも、〇五年十一月に韓国・釜山で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、ブッシュ大統領とASEAN首脳が「ASEANと米国のパートナーシップ強化に関する共同ビジョン声明」を発表。米国はTACを「地域の平和と安全促進のために国家間の関係を律する行動規範」と認め、「同条約の精神と原則を尊重する」と表明しました。

 マレーシアのアブドラ首相は〇五年九月の訪米でTAC加入を検討するよう要請。同年十二月の東アジア首脳会議では「米国もTACに加入すれば首脳会議に参加できる」と呼び掛ける一方で、東アジア共同体は米国からの自立の過程と語り、アジア諸国の共同による平和を強調しました。

 軍事同盟を結んでいる日本や米国も、軍事力偏重の外交ではなくTACの精神を言葉だけでなく実践で生かすことが求められています。

戦争どう防ぐ? ASEANは、一九八七年にTAC加入を域外に開放し、九八年に加入手続きを整備しました。加入国は〇三年以降に急増しています。〇三年三月に米国がイラク戦争を強行する一方、東アジアからは平和の共同が広がっていったのです。

 理由の一つは、ASEANが東アジア首脳会議への参加の条件にTAC加入を挙げたことがあります。さらに重要な理由は、TACへの加入で地域の平和と安定を実現しようという意志です。

 〇七年に加入したフランスは「欧州連合(EU)やASEANのような地域組織間の緊密な協力を通じて、世界の安定を促進したい」と表明。EUもすでに加入を申請しています。

 TACは欧州連合(EU)に見られる欧州統合を参考につくられました。ただ、EUは欧州の平和維持を軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に大きく依存しており、域外の「脅威」に対し集団的に軍事力を行使することもあります。

 一方のTACは、域外の「脅威」に集団的に軍事力で対応せず、戦争放棄を決めた条約の加入国を増やしていくことで平和を実現しようとします。

 加入国が広がるなかで、中国とベトナムは海域の国境問題を残しながらも、陸上国境問題を対話で解決。インドと中国が数十年にわたる紛争と対立に終止符を打ち、インドとパキスタンは領土問題での深刻な対立を平和的に解決しようと試みています。

【参考情報】

TAC加入国

 ASEAN加盟国十カ国のほか、東ティモール、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド、日本、中国、韓国、ロシア、モンゴル、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、フランス。計二十四カ国。人口は三十七億人で、地球人口の57%に達します。

東南アジア諸国連合(ASEAN)

 一九六七年、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンの五カ国が「豊かで平和な共同体がつくられる基盤を強化する」(結成宣言)目的で結成。外国軍基地が域内諸国の民族の独立と自由をくつがえしてはならないと憲章で宣言。加盟国は現在、ブルネイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーを加え十カ国。

東南アジア条約機構(SEATO) 一九五四年九月、米国主導で結成された軍事同盟。加盟国は米国、英国、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、タイの八カ国。フランスがインドシナ(ベトナム、ラオス、カンボジア)侵略戦争で敗退した後、インドシナ半島での民族解放運動を封じ込めるのが当初の目的。七七年に解体。

アフガンへの軍事関与を欧州諸国民が支持しないのは…/山崎孝

2008-02-12 | ご投稿
【アフガン・イラク戦/“欧州では不支持”/米国防長官が認める】(2008年2月10日「しんぶん赤旗」)

【ロンドン=岡崎衆史】ゲーツ米国防長官は八日、記者団に対し、米英主導のイラク戦争とアフガニスタンでの軍事作戦が欧州で支持を受けていないことを認めました。アフガンへの軍事関与を欧州諸国民が支持しないのは、猛反発された米国のイラク戦争と混同しているからだ―との説明の中で示唆しました。

 長官は、八日まで二日間開かれたリトアニア・ビリニュスでの北大西洋条約機構(NATO)非公式国防相会議に出席。安全保障問題での国際会議に参加するため同地をあとにし、ドイツ・ミュンヘンへ移動する飛行機の中で述べたものです。

 現地からの報道によると同長官は、「多くのヨーロッパ人がイラクとアフガニスタンの任務を混同していることを憂慮している」「彼らの多くがイラクへのわれわれの関与に困難を感じ、そのことをアフガンに投影している」と発言。イラク戦争への欧州の反発がアフガン軍事作戦への不支持の根底にあるとの見方を示しました。

 ゲーツ氏はまた、アフガンは米国だけでなく、欧州でのテロ攻撃にもかかわってきたとし、「欧州の安全保障上の直接の脅威だ」と強調。欧州諸国のアフガンへの軍事的関与の増加を促しました。(以上)

アフガンへの軍事関与を欧州諸国民が支持しないのは、米国のイラク戦争と混同しているからではありません。アフガニスタンの民間人の死者を増やしている米軍の軍事作戦を、欧州諸国は遺憾と思っていること、米国主導のアフガニスタン政策が成功するか否かについて欧州諸国では悲観的な見方が広がっている(有力なロンドンの国際研究所の報告)からです。

日本に目を転じると、ペシャワール会の代表中村哲さんは「日本の議論には、現地での空爆という人災と旱バツという天災の襲撃を受けている農民の視点が欠落している」と述べています。この言葉を軍事による国際協力なるものを推し進めようとする与党と民主党の政治家たちが耳を傾けなければと思います。

ゲーツ米国防長官、NATOに圧力/山崎孝

2008-02-11 | ご投稿
2月10日付の朝日新聞の情報を拾い集めますと、2月10日、ミュンヘン安全保障会議に出席していた高村外相は自衛隊の海外派遣を随時に可能にする恒久法について、「必要な法制度の検討を進めていきたい」と語りました。

2月10日、自民党の山崎元副総裁は自衛隊が海外で活動をする基準を定める恒久法について検討をする与党のプロジェクトチームを2月中に立ち上げることを明らかにしました。山崎元副総裁は、今国会の成立を目指したいとして、民主党とも事前の非公式協議を行ないたいと語っています。

恒久法の海外で活動をする基準は、民主党の小沢代表が主張する、国連決議があれば海外で武力行使をする基準だと思われます。これは明らかに解釈改憲です。

解釈改憲をして国連決議があれば海外で武力行使を可能にすれば、日本は次のような局面にさらされる可能性があると思います。

2008年2月11日付朝日新【「増派しないとNATO崩壊」アフガン問題で米警告】

【ミュンヘン(ドイツ南部)=金井和之】ドイツ訪問中のゲーツ米国防長官は10日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、独仏など北大西洋条約機構(NATO)同盟国の一部が戦闘の激しいアフガニスタン南部への展開に難色を示していることを念頭に「(戦闘に参加する意思のある国とない国に二分するなら)事実上NATOは崩壊するだろう」と強く警告した。

 ゲーツ氏は「NATOはもっと負担を共有していかなければならない」とも述べ、アフガン南部への増派をNATO各国に改めて要請した。(以上)

【憲法を守る輪が更に広がる】河北新報のニュースを紹介します。

【保守系実力者ら9条守る会結成 元市町村長14人 宮城県】(2008年0月8日付河北新報)

憲法九条の改正反対を主張する宮城県内の市町村長経験者14人が8日、「憲法九条を守る首長の会」を結成した。現職時代に強力な指導力を発揮した保守系の実力者らが顔を連ねている。全国の首長経験者のほか、知事や市区町村長に賛同を呼び掛けるという。

全国市長会の副会長を務めた前白石市長の川井貞一氏(75)が会長に就任。元鹿島台町長で全国町村会副会長だった鹿野文永氏(71)、元七ケ宿町長の松村行衛氏(69)、前山元町長の森久一氏(62)らが参加した。

初会合で「九条改憲こそ市町村住民の安全を脅かす最たるものであり、断固として阻止する」とのアピール文を作成。近く全国の都道府県や市区町村に郵送し、ホームページも立ち上げる。

県庁で2月8日記者会見した川井会長は国民投票法制定や自衛隊のイラク派遣を指摘し、「米国に引きずられ、日本が危ない方向へ進んでいる。党派にとらわれず、国に遠慮せず地方から声を上げることが必要」と述べた。

鹿野氏は「改憲阻止を明確に表明しにくい首長もいるが、会の結成が励ましになる。県内外に広く発信したい」と述べた。

国旗・国歌の強制に対する東京地裁判決について/山崎孝

2008-02-09 | ご投稿
【「君が代」強制に歯止め/不起立訴訟/都に賠償命じる/東京地裁 職務命令は「合憲」】(2008年2月8日付「しんぶん赤旗」)

 卒業式などで「君が代」の起立斉唱を命じた職務命令に違反したことを理由に、東京都教育委員会が退職後の嘱託採用を拒否したのは違憲・違法だとして、元都立高校教職員十三人が損害賠償を求めた裁判の判決で、東京地裁(中西茂裁判長)は七日、都に計約二千七百六十万円の賠償を命じました。

 中西裁判長は判決理由で、「原告らの行為は積極的に式典の妨害をするものではなく、勤務成績を決定的に左右するものではない」とし、「不合格は客観的合理性や社会的相当性を著しく欠き、都教委が裁量を逸脱、乱用した不法行為である」とのべました。

 一方、職務命令については「『国歌を斉唱するよう指導するものとする』と定める学習指導要領の趣旨にかない、思想・良心の自由を制約するものではない」とし、合憲と判断しました。

 原告らは都教委が「日の丸・君が代」を強制する通達を出した二〇〇三年十月以降の卒業式などで「君が代」斉唱時に起立せず、懲戒処分を受けました。その後、定年などで退職するにあたって嘱託としての採用を希望しましたが、不合格とされました。

 原告の一人、新井史子さんは「いまも高校生を見るたびに、こんなことさえなければ教室で教えていたはずだと思います。たった四十秒間の不起立で採用を拒否され憤りを感じてきました。違法だと認められたことは非常にうれしい。現場への影響も大きいと思う」と喜びを語りました。

 原告側弁護団は「通達や職務命令の違憲・違法性が認められなかったのは残念だが、都教委の強制に歯止めをかけた判決だ」と評価しました。

 都教委の「日の丸・君が代」強制については〇六年九月に東京地裁(難波孝一裁判長)が、通達は違憲で、教職員に起立斉唱の義務はないとの判断を示しています。

【違憲判決勝ち取ろう】 卒業式を間近に控えて出された七日の東京地裁判決を受け、同日、都内で報告集会が開かれました。百人を超える支援者が集まり、原告、弁護団に温かい拍手を送りました。

 「判決でわれわれは歯止めを勝ち取った。さらに憲法違反だという判決を勝ち取るために頑張っていきたい」。弁護団は東京都教育委員会の裁量権乱用を厳しく指弾した判決を今後に生かしていこうと呼びかけました。

 都教委は都立学校の卒業式や入学式で「日の丸・君が代」を強制する「10・23」通達を二〇〇三年に出しました。原告らは同通達は憲法違反だとする判決を勝ち取りたいと、たたかい続けてきました。

 しかし、判決は通達や職務命令は合憲と判断しました。原告の一人は「正直、複雑(な気持ち)です」と切り出し、「裁判長の価値観をひっくり返していかなければいけない」と今後への決意を語りました。

 違憲判決を勝ち取れなかったことにがっかりする原告を弁護団は「判決の全文をよく読むと(今後の運動に)役立つところは必ずある。(裁判長は)われわれの主張も受け止めている。われわれは勝ったのだから前向きにとらえよう」と励ましました。

 都教委から懲戒処分を受けた人たちでつくる「被処分者の会」の教師は「原告十三人がたたかったからこそ今日の判決があった。不採用事件については非の打ちどころがない判決。確信を持って周りに訴えていき、他の裁判でも勝ち抜いていきたい」と語りました。(以上)

【君が代判決/都教委は目を覚ませ】(2月9日付朝日新聞社説)

卒業式の君が代斉唱で起立しなかったからといって、定年退職した都立高校の教職員らの再雇用を拒むのは、裁量を逸脱、乱用したもので違法だ。東京地裁がこう判断し、13人に計2700万円の賠償を支払うよう東京都に命じた。

東京都では国旗・国歌への強制ぶりが際立ち、抵抗する教職員が次々に処分されている。定年を控えた教職員に対しては再雇用をしなかった。こうした処分に対する訴訟も相次ぎ、今回の判決はそのひとつだ。

 国歌斉唱で起立しなかったことは、ほかの教職員や来賓には不快かもしれないが、積極的に式典を妨害するものではなく、再雇用を拒否するほどのものか疑問だ。これが判決の論理である。

 私たちはこれまで社説で、「処分をしてまで国歌や国旗を強制するのは行き過ぎだ」と主張してきた。稜々な歴史を背負っている日の丸や君が代を国旗・国歌として定着させるには、自然なかたちで都教委は目を覚ませ進めるのが望ましいと考えるからだ。今回の判決は都教委の強制ぶりを戒めたもので、評価したい。

 再雇用拒否の当否が争われた裁判では、東京地裁の別の裁判長が昨年、都教委の主張を認めた判決を出している。「一部の教職員が起立しないと式典での指導効果が減る」との理由だが、再雇用を拒むほどのことではないという今回の判決の方が常識にかなっている。

 今回の裁判でもう一つの論点は、起立させる校長の職務命令は、思想・良心の自由を保障した憲法に違反するかどうかだった。判決は「職務命令は原告らに特定の思想を持つことを強制したり、禁じたりしていない」として合憲とした。

 この点については、東京地裁の別の裁判長が06年、都教委の通達や指導を違憲と判断した。その当否は別として、裁判官によっても分かれているほど判断が難しい問題を、教育の場で一方的に押しっけるのは好ましくない。今回の判決を機に、都教委には改めて再考を求めたい。

都教委の強硬姿勢が際立ったのは03年、入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱のやり方を細かく示す通達を出してからだ。この通達のあと延ベ400人近い教職員を戒告や減給、停職の懲戒処分にした。再雇用を拒否された人は、今回の原告を含めて約40人にのぼる。

 教職員は君が代斉唱の時に、踏み絵を迫られる。立って歌っているかどうかを確認するため、校長だけでなく、都教委の職員が目を光らせる。

 こんな光景が毎年繰り返された結果、残ったのは、ぎすぎすした息苦しい雰囲気である。子どもたちの門出を祝い、新しい子どもたちを迎える場としては、およそふさわしくない。

 あまりに行き過ぎた介入は教育そのものを壊してしまう。今年も卒業式や入学式の季節が近づいているだけに、都教委にはそろそろ目を覚ましてもらいたい。(以上)

 周知のように戦争を可能にする国家は国民を総動員する準備をします。その準備の一環として。思想信条の自由に干渉して抵抗する人たちを社会の異端者扱いし排除します。都教委は教師が服従すべき国家の権威として国旗・国歌を用います。教職員が君が代斉唱の時に、立って歌っているかどうかを確認するため、校長だけでなく、都教委の職員が目を光らせ、実行しない教員に処罰を加えるやり方はその序曲と言えます。このような教育行政を容認していれば、エスカレートしていくに違いありません。

朝日新聞社説は《都教委にはそろそろ目を覚ましてもらいたい》と述べていますが、東京都教育委員会をこのような体質にした張本人を選挙で変えなければ改まらないと思います。

現在の国際社会の対北朝鮮政策は、北朝鮮包囲網なのか/山崎孝

2008-02-06 | ご投稿
【韓国政権交代 対北朝鮮包囲網を再構築せよ】(2月6日付・読売社説)

韓国の政権交代を機に、日韓両政府は両国関係を抜本的に改善すべきだ。日米韓などによる「北朝鮮包囲網」も再構築し、核問題の前進につなげたい。

盧武鉉大統領時代の5年間、日韓関係は歴史認識や竹島の問題で冷え切った。だが、李明博次期大統領は関係強化に強い意欲を見せている。歴史問題に関しても、「新しい成熟した韓日関係のため、私は、謝罪せよなどの言葉は使いたくない」と強調する。

1月中旬に来日した実兄の李相得国会副議長も、福田首相らと「未来志向の日韓新時代」を作ることで一致した。

2月25日の大統領就任式の際は、福田首相が訪韓し、2年半以上中断しているシャトル外交を再開する。4月の韓国総選挙後と、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)には李次期大統領の来日が検討されている。頻繁な首脳外交を通じて日韓関係を緊密化させたい。

日韓両国が最優先で取り組むべきは、北朝鮮政策の戦略的調整である。

盧政権は、一方的な北朝鮮支援になりがちな融和政策に固執し続けた。米国や日本との安全保障関係はぎくしゃくし、米国はアジア地域で「日米韓」より「日米豪」の枠組み重視に転じた。日米韓の足並みの乱れは、核問題で北朝鮮の身勝手な外交を許す一因となっている。

北朝鮮は、昨年末までに実施すると約束した核計画の「完全で正確な申告」をいまだに実施していない。日米韓は、緊密な協議を重ね、北朝鮮に核放棄プロセスの早期履行を迫らねばならない。

李次期大統領は、融和政策を見直し、北朝鮮への大規模な経済支援には核放棄が必要との考えを示している。400億ドル規模の国際協力基金を設立し、うち100億ドルは日朝国交正常化後の日本の経済協力を充てる、という構想もある。

日本の経済協力の規模は無論、日朝協議で決めるべきものだが、核を放棄すれば、関係国が協力して北朝鮮を支援する、という構図は自然なものだ。

その場合でも、日本の経済協力の前提は、核だけでなく、拉致やミサイルの問題の包括的な解決だ。韓国からも北朝鮮に拉致問題の進展を促すなど、日韓の連携を拉致問題にも活用したい。

経済界出身で前ソウル市長の李次期大統領は、経済重視の姿勢も鮮明にしている。当面は、2004年11月から中断している日韓の自由貿易協定(FTA)交渉の再開が重要課題となる。

日本と韓国はそれぞれ互いに、中国、米国に次ぐ第3の貿易相手国である。市場開放による双方の利益は大きい。FTA交渉を早期に再開すべきだろう。(以上)

読売新聞の社説は《核を放棄すれば、関係国が協力して北朝鮮を支援する、という構図は自然なものだ》と述べていますから、社説の見出し、北朝鮮包囲網という表現がふさわしいとは思えません。今日の国際社会の北朝鮮政策は圧力を主体とした北朝鮮包囲網ではなく、対話を主体とした北朝鮮を説得する共同努力の輪と言えます。

社説は《日米韓の足並みの乱れは、核問題で北朝鮮の身勝手な外交を許す一因となっている。》と述べますが、6カ国協議に合意した北朝鮮は身勝手な行動はできません。6カ国協議の原則である行動対行動に縛られ、核施設の無能力作業を進めています。

社説は《李明博次期大統領は関係強化に強い意欲を見せている。歴史問題に関しても、「新しい成熟した韓日関係のため、私は、謝罪せよなどの言葉は使いたくない」と強調する》と述べていますが、この李明博次期大統領の言葉は、日本の政治家が日本政府の公式見解から逸脱しないことを前提にした言葉ですから、社説はこのことも指摘した上で李明博次期大統領の姿勢を強調すべきです。

朝鮮半島情勢をみるうえで肝心なことは、朝鮮半島情勢を緊張から緊張緩和へと向かわせたのは、2代にわたる韓国政権の宥和政策です。6カ国協議の前進もブッシュ政権の宥和政策への転換が大きな推進力となっています。

社説の《日韓両国が最優先で取り組むべきは、北朝鮮政策の戦略的調整である》という主張は、6カ国協議を前進さす立場での戦略的調整でなければならないと思います。この立場は圧力一辺倒の日本の対北朝鮮政策の変更が不可欠になると思います。

朝鮮半島情勢の本流は、宥和政策でつながった南北縦断鉄道(京義線)を利用して、中国入りする南北合同オリンピック応援団の結成(2月4日合意)という動向だと思います。

【参考情報】1月22日共同通信配信記事 ロイター通信によると、米国務省の対テロ対策責任者のデル・デーリー調整官は22日、北朝鮮はテロ支援国家指定解除に必要な用件を「満たしている」と述べ、日本人拉致問題が解決していなくても解除は可能との見方を明示した。

解除は、6カ国協議の合意に基づき昨年末までに実施されるはずだった「すべての核計画申告」が遅れていることから実施されていない。

同調整官の発言は、申告さえ行えば解除に向けた条件は整うとの米政府の姿勢を鮮明にし、北朝鮮側に申告に向けて歩み寄るよう呼び掛ける狙いがあるとみられる。

橋下徹・次期大阪府知事の発言に思う/山崎孝

2008-02-04 | ご投稿
【防衛政策 住民投票で異議挟むな/橋下氏発言、学者ら反論】(2008年2月3日付朝日新聞)

 米空母艦載機移転をめぐり06年春に山口県岩国市が実施した住民投票に対する橋下徹・次期大阪府知事の発言に、憲法学者や政治学者らが首をかしげている。弁護士でもある橋下氏は、反論した前岩国市長の井原勝介氏を「憲法を勉強して」と痛烈に批判したが、「橋下さんこそ不勉強では」との指摘も出ている。

 橋下氏の発言が飛び出したのは1月31日。3日告示の岩国市長選で艦載機移転容認派が推す前自民党衆院議員の福田良彦氏を応援するビデオ撮影に応じた後、「防衛政策に自治体が異議を差し挟むべきではない」「間接代表制をとる日本の法制度上、直接民主制の住民投票の対象には制限がある」と持論を展開した。

 小林良彰・慶大教授(政治学).は「この種の住民投票には法的拘束力がない。住民の意思の確認・表明なのだから、それを憲法が制限することはあり得ない」と指摘。「基地問題は地元住民にとって生活問題だから、意見を言う資格がある。憲法が認めた言論の自由だ」と述べ、「橋下さんこそ憲法を勉強した方がいいんじゃないか」と皮肉った。

小林節・慶大教授(憲法)は「地域の問題について住民の声を直接聞いて、その結果を地方自治体の意向として国に示して実現を図っていい、というのが憲法の考え方だ」と言う。

 奥平康弘・東大名誉教授(憲法)は「弁護士が『憲法』と言えば、いかにも説得力があるように聞こえるが、政治家として政治的な発言をしたまで。人びとの注目を集め、目的を達成したんじゃないのかな」と冷ややかに語った。

【学者ら批判に橋下氏が反論/政治の現場知らぬ】(2008年2月4日付朝日新聞)

 米空母艦載機移転をめぐり、06年春に山口県岩国市が実施した住民投票に関し、「住民投票の対象には制限がある」などとした橋下徹・次期大阪府知事の発言を憲法学者らが批判していることについて、橋下氏は3日、福岡市内で報道陣の質問に答え「机上の憲法論しか知らない学者にとやかく言われたくない。学者に生の政治の現場が分かるわけがない」と反論。「住民投票に法的拘束力がないなら、経費的にもなおさらそういう手段は取るべきではない」と話した。(以上)

橋下徹氏は大阪府知事選挙のとき、大阪府が赤字を膨らました政治を批判しました。しかし、その赤字を膨らました前知事の政策を推進してきたのが地元の自民党、公明党でした。この両党の支援を受けながらも徹底した政党隠しを行ない、当選すると真っ先に両党の府議団を訪問しています。

非常に欺瞞に満ちた政治行動です。選挙戦の演説は短い言葉を何回も繰り返す一種の催眠術のような手法を用いています。

橋下徹氏は「学者に生の政治の現場が分かるわけがない」と反論していますが、御自身も政治の現場の経験はありません。タレント活動で名を知られるようになっただけです。府知事に当選しても政治の現場を体験するのはこれからで、現時点では学者と同じ体験でこのような批判をすることは出来ません。大阪府の政治の現場=これまでの首長と政党との関係を認識していないから、矛盾に満ちた政治行動をするのです。大阪府の選挙民の多くがこれを見抜けなかったのは残念です。

2006年の岩国市が実施した住民投票は、健康で文化的な生活を営む権利を守る市民運動でした。憲法12条は、憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により保持しなければならないと規定してあります。岩国市民の住民投票運動はこの規定を認識した行動と言えます。橋下さんこそ憲法を勉強した方がいいんじゃないかといわれても仕方がありません。

映画「母(かあ)べえ」をみて

2008-02-02 | ご投稿
2月1日、以前ブログに書いたことのある山田洋次監督作品「母べえ」を明和にあるジャスコの映画館で観ました。太平洋戦争開始前後の日本の社会を一つの家庭を通して描いていました。その家庭の父親(父べえ)は当時の日本人の多くが国策に同調し戦争熱に浮かされていたのとは違い、冷静に政府のすることを批判的に見ていました。

父親が出版社に出した原稿は検閲を受けて本は出版できません。そして治安維持法に触れたとして特高警察に逮捕されてしまいます。妻(母べえ)は、夫は犯罪者ではないと固く信じて二人の女の子を守り育てました。

国力のない日本が国民の持つ貴金属まで供出させ総動員して戦争をする、戦争政策を批判的に見る人を非国民のレッテルを張り排除してしまう社会、その中で多くの人が本音をあらわさず愛国という建前で生きる姿を表現していました。

父親は拘置所を出たいのであれば、今までの考えを改めた上申書を書けといわれ書きますが、上申書に日支事変を戦争と表現し、大学時代の教え子の検事に聖戦という考え方を強要されますが、これを拒否して拘置所の中で衰弱して病死してしまいます。内心の自由を守ろうとすると生存権や生活権を脅かされる時代でした。

現在、内心の自由、思想信条の自由を守ろうとすると生活権を脅かされる事態が起こっています。その典型的なのは東京都教育委員会の国旗・国歌を教師に強要して、従わない教師に対する処罰が毎年行なわれています。教師は自分の生活を守ろうとすれば、内心の自由を放棄しなければならなくなっています。違憲の判決が出ても東京都教育委員会は教育行政を改めません。学校の終業式や始業式に用いられる国旗と国歌は単なる国家のしるしではなく、国家の絶対的な権威を表すシンボルとして意味づけされ、服従すべきものとされます。

1940年2月6日、生徒の心を個性的で創造性を豊かにしようと生活綴り方運動をしていた教師300人が検挙される事件が起きています。個性を発揮することを軍国主義は嫌います。現在の日本は教育基本法を改定し、愛国心と言う一様の価値観を育てようとすることが目論まれています。

国民の多くが政府の戦争政策に同調した大きな要因に、新聞が謀略まで行い中国の占領地を拡大した軍部の既成事実を認めてしまい政府の政策に対して批判力を失ったことがあります。

現在の日本は、国連決議があれば海外で武力行使が出来ると主張し、自衛隊海外派遣恒久法の制定を考える、民主党の小沢代表が自民党総裁と大連立の談合を行ないました。この談合の仕掛け人は日本で一番の読者を持つ読売新聞の渡辺恒雄氏でした。権力を監視する立場のジャーナリストとしてあるまじき行動です。

民主党は、政府提出の新テロ特措法に対する「対案」の中で、恒久法に盛り込むべき「基本原則」として国連による軍事行動を含む強制措置への対応や、「憲法の下での自衛権の発動に関する」ものをあげています。これらは武力で国際紛争を解決しないとする憲法理念を放棄するものです。

私は如何なる名目であれ、海外での武力行使の既成事実を作らせてはならないと思います。一つの既成事実は国連決議という名目に止まることはないと思います。軍部や政府の既成事実の積み重ねが太平洋戦争に発展していった歴史を改めて省みる必要を感じました。現在、専守防衛であった自衛隊は戦争するイラクに派遣され、海外任務は本来任務に格上げされて、既成事実は積み重ねられています。

映画「母べえ」は、父と母が子供を守り育てるという穏やかな家庭の「ありふれた日常」を、思想犯という理不尽な理由で奪われた日本の歴史を描いています。「ありふれた日常」という表現は父親役の坂東三津五郎さんの言葉です。そして、「ありふれた日常」は思想犯の家だけではなく、太平洋戦争を起こした国家が多くの国民から奪っていくことになります。

映画人九条の会は、2007年11月24日で結成2周年を迎えました。映画人九条の会結成2周年に寄せられた映画人のメッセージの中で述べています。

山田洋次 (映画監督) 大事なことは、志を同じくする人々が元気をつけ合うことだけでなく、外部から国を守るためには軍隊はあった方がいいと考えている人や、政治に全然関心がなくて投票にも行かないような大勢の人たちに、どうすれば九条改変を含めた新憲法制定の問題に真面目な関心を持ってもらい、国民的な議論の輪に参加してもらえるか、ということだと思います。

非戦の願いを込めて 吉永小百合 (女優) 2006年は、61年前を深く見つめた日本映画が、何本も封切られました。「紙屋悦子の青春」「出口のない海」そしてドキュメンタリーの「蟻の兵隊」。映画人の非戦・平和への思いが、しっかりと伝わってきて、胸が熱くなりました。

今年私は、山田洋次監督の「母(かあ)べえ」に出演します。1940年からの暗黒の時代を、懸命に生きた家族の映画です。

戦争に反対して投獄されてしまった夫の代わりに働きながら、子供を育てる母親役。どこまで演じられるか分かりません。でも、日本が二度と戦争への道を進まないようにと祈りながら、この役にしっかりと取り組みます。(映画人九条の会のホームページより)