いせ九条の会

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自衛隊恒久法 憲法を揺るがす議論だ/山崎孝

2008-02-18 | ご投稿
2月17日付北海道新聞社説を紹介します。

自衛隊をいつでも海外に送り出せる。そんな法律(恒久法)をつくろうという動きが政府・与党内で加速している。

自民党は法案を検討する合同部会を発足させた。月内には公明党も参加して与党プロジェクトチームを旗揚げし、今国会への法案提出を目指すという。

私たちは恒久法制定に反対してきた。憲法九条の規定や理念を踏み外す恐れがあるためだ。

九条は戦争や海外での武力行使を禁じている。そこから「集団的自衛権の行使は認めない」という戦争の歯止めとなる政府見解も生まれた。

恒久法には、この日本の平和主義を揺るがしかねない危うさがある。

政府・与党は、インド洋で給油活動を行うための新テロ対策特別措置法の成立に苦労した。しかも来年一月には期限切れとなり、また国会で延長論議をしなければならない。

恒久法制定を急ぐ背景には、そんな面倒は避けたいという思惑がある。国会による文民統制を軽視した発想といわざるを得ない。

自民党が恒久法のたたき台としているのは、二○○六年に党内でまとめられた「国際平和協力法案」だ。

その柱は二つある。

一つは、国連平和維持活動(PKO)協力法やイラク特措法を含む現行法で派遣の前提となっている国連決議や国際機関の要請がいらないことだ。

この条件がなくなれば、たとえば米国単独の軍事作戦を自衛隊が支援することも可能になる。派遣のハードルがぐっと低くなるのは間違いない。

もう一つは現在、正当防衛と緊急避難に限定されている武器使用基準の緩和だ。自衛隊の海外活動に治安維持任務を加え、攻撃を受けた他国軍のもとに赴いて武器で応戦する「駆けつけ警護」を容認している。

駆けつけ警護は憲法が禁じる武力行使につながり、認められないというのがこれまでの政府見解だ。武器使用基準の緩和はこうした憲法解釈の見直しをも迫るものになる。

自民党合同部会の山崎拓座長は「従来の憲法解釈の枠内で議論を進めたい」という。だが過去、なし崩しに解釈を広げてきたのは自民党だろう。

最近、聞きおけない閣僚の発言があった。ドイツで開かれた安全保障会議での高村正彦外相の演説だ。

恒久法制定を目指す。PKO派遣にも積極的に取り組む。国内論議を置き去りにしてそんなことを外国に約束した。先走りがすぎないか。

民主党は自民党の協議呼びかけを拒否している。抱きつき戦術には乗らないということらしいが、対テロ新法の対案では恒久法制定を打ち出している。民主党にも憲法を踏まえた慎重な対応を求めたい。