いせ九条の会

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映画「日本の青空」に関して/山崎孝

2008-02-26 | ご投稿
現在、映画「日本の青空」が伊勢の進富座で上映され、私が見に行きました24日は、ほぼ満席に近い盛況でした。

映画に出版社に勤める中山沙也可が国会図書館で憲法研究会草案要綱を調べるシーがありました。国会図書館のホームページには、憲法研究会の憲法草案要綱に関する資料が掲載されています。その資料を抜粋し、かつ現行憲法に反映された条文を註に付して紹介します。註は映画のパンフレットを参考にしています。

【憲法草案要綱 憲法研究会案】1945年12月26日GHQと政府に提出

研究会のメンバー 高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵

(註、映画のシーンに鈴木安蔵が起草したものを討議して付け加えていく場面がありました。高野岩三郎は共和主義者で天皇制廃止の意見を持っていたが、他のメンバーの当時の国民意識を考慮して天皇の政治に関わらない地位として残す考えの草案要綱に同意しました。私はその当時の判断としては妥当だとは思います。しかし、高野岩三郎は天皇制を残すことで反動勢力の利用されることを懸念していました。今日の自民党の憲法論議で表出した意見を見るとこの懸念は当たっているといえます。この反動勢力の企図を押し返すためには、国民の民主主義的な意識を高めていくことが何よりも大切と考えます。)

★根本原則(統治権)

一、日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス(註、現行憲法前文に反映)

一、天皇ハ国政ヲ親ラセス国政ノ一切ノ最高責任者ハ内閣トス(註、現行憲法第3条・第4条に反映)

一、天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル(註、現行憲法に第6条に反映)

一、天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス

一、摂政ヲ置クハ議会ノ議決ニヨル

★国民権利義務

一、国民ハ法律ノ前ニ平等ニシテ出生又ハ身分ニ基ク一切ノ差別ハ之ヲ廃止ス・一、爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ総テ廃止ス・一、国民ノ言論学術芸術宗教ノ自由ニ妨ケル如何ナル法令ヲモ発布スルヲ得ス(註、現行憲法に第14条に反映)

一、国民ハ拷問ヲ加へラルルコトナシ(註、現行憲法に第36条に反映)

一、国民ハ国民請願国民発案及国民表決ノ権利ヲ有ス(註、現行憲法に第16条に反映)

一、国民ハ労働ノ義務ヲ有ス・一、国民ハ労働ニ従事シ其ノ労働ニ対シテ報酬ヲ受クルノ権利ヲ有ス・一、国民ハ休息ノ権利ヲ有ス国家ハ最高八時間労働ノ実施勤労者ニ対スル有給休暇制療養所社交教養機関ノ完備ヲナスヘシ(註、現行憲法に第27条に反映)

一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス・一、国民ハ老年疾病其ノ他ノ事情ニヨリ労働不能ニ陥リタル場合生活ヲ保証サル権利ヲ有ス(註、現行憲法に第25条に反映)

一、男女ハ公的並私的ニ完全ニ平等ノ権利ヲ享有ス(註、現行憲法に第24条に反映)

一、民族人種ニヨル差別ヲ禁ス

一、国民ハ民主主義並平和思想ニ基ク人格完成社会道徳確立諸民族トノ協同ニ努ムルノ義務ヲ有ス(以下略)

映画には天皇大権を温存した日本政府の憲法草案をGHQが批判する場面がありました。GHQが日本政府を批判した根拠は、日本政府がポツダム宣言を受託していることにありました。ポツダム宣言は、日本の軍国主義的要素の一掃、日本の民主化を目的としていました。

従ってこの目的を具体化したGHQの憲法草案は、GHQの押し付けではなくポツダム宣言に則った国際的要求でした。そして肝心なことは明治以降、日本の先覚者たちが追求した自由と民主の理念を具体化した憲法研究会の草案要綱が、GHQの憲法草案に取り入れられていたことだと思います。