一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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『元素周期表』を読む。

2005-06-24 00:03:59 | Book Review
例の大臣のいる文科省で、新しい表現をした周期表が発表された。

上に挙げたサム・ネイルでもお分かりのとおり、グラフィックな面に相当力を入れている(「美しくかつ豊富な情報を含んだ周期表」と文科省では自画自賛)。
内容的には、それぞれの元素が、どのような身近な科学製品などに使用されているか、をイラストや写真、文章で示していることが目新しいといえよう。つまり、無機的なデータのみではなく、日常生活レベルでの応用分野を示すことで、取っ付きにくい元素に親しみをもたせようということだ(制作は(株)化学同人)。

小生などは、化学の時間に「水(H:水素)兵(He:ヘリウム)リー(Li:リチウム)ベ(Be:ベリリウム)……」と語呂合わせで覚えた方だから、時代は変わったとは思う(ベリリウムがエメラルドの成分なんて知ってました?)。

もっとも、グラフィックのスペースを取った分、文字データ(文章)に舌足らずの部分があるのは、ちょとまずいだろう。ましてや、家に、それを補ってくれるほど知識のある「教師」などはいないのだから。
例)水素 「ロケット燃料、水素電池、燃料電池」:「~に使われている」だろう。
     「DNA二重らせんの水素結合」:どのようにして?
     「水、硫酸、クエン酸、アミノ酸」:「~の構成原子」?
     「診断用のMRI画像化」:どの過程で応用されてるの?

当初、この周期表のことを新聞報道で見たときは、科学技術に偏っているかな、との危惧があったのだが、その辺のバランスは配慮されているようだ。必ずしも、技術分野のみではなく、生物や医学などの分野にも目配りされている。

「一家に1枚『元素周期表』」というのはコピーだろうから、目くじらを立てる必要はないのだが、正直「余計なお世話」と言いたくなるのも確かなこと(表のタイトルは単に「元素周期表」)。ましてや「リビングルームで周期表を見ながら親子で科学のはなし、という状況を創り出し浸透させたい」というのは如何なものか(担当者の熱意は分るんだけれど、どこかずれている「家族観」。「サザエさん」んちじゃあないんだから……)。

それさえなければ、大臣の暴言とは別にして、文科省ひさびさのバント・ヒット(ポテン・ヒット?)と、褒めてあげたのに――小生みたいな〈旋毛曲り〉に褒められたって嬉しかないや、って? ごもっとも(苦笑)。


『元素周期表』
文部科学省
科学技術広報財団が1枚100円で頒布中。
*文科省HPでPDFファイルを
ダウンロード可能。