一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』を読む。

2005-06-16 00:08:24 | Book Review
歴史書の分類に入るのでしょうが、読んでいる小生としては、推理小説のつもり。
副題に「トルーマンとバーンズの陰謀」とあるように、原爆投下と日本の降伏受入れとの関係が、どのように決まっていったかを述べた本です。

もし、小生がタイトルをつけるとしたら、「4つの日付のある日程表」としたでしょう。
4つの日付とは7月4日、7月15日、8月1日、8月8日で、それぞれ「プルトニウム爆弾の実験の日」「米英ソ三国首脳会談の開始日」「ウラニウム爆弾の投下用意完了の日」「ソ連の対日戦開始の日」ということになります。
この順番に日付が並ぶことが、トルーマンとバーンズには必要だった、ということを解明するのが本書での著者のねらいです。

「はじめに」から引けば、
「アメリカ大統領ハリー・トルーマンと国務長官ジェームズ・バーンズの二人は、原爆の威力を実証するために手持ちの二発の原爆を日本の二つの都市に投下し終えるまで日本を降伏させなかった。
 これがこの本で講究する主題である。」
となります。

そのために残された証拠はまことに少ない。したがって、著者はある程度根拠のある推測を積み重ねることになります。歴史家では、ここまで思い切ったことは書きたくても書けないでしょう (だからか、歴史家の大江志乃夫氏は『凩の時』という小説も書いている)。

小生は、本書は一種の推理小説だと思っていますので、ネタをばらすことは避けます。
ただ、もし、本書の仮説が真実に近いものであれば、確かに
「百万のアメリカ兵を救うために原爆を落とした」
という説が虚構(投下責任者であるアメリカ大統領、および国家としてのアメリカ合衆国を免罪するために、いまだに流布されている)であることが、より明らかになることでしょう。

鳥居民
『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』
草思社
定価:本体1600円+税
ISBN4794214081


*ちなみに、鳥居民氏は、『昭和二十年』という同年1月1日から1日ごとに描いたドキュメンタリー(第1期全14巻、既刊11巻。草思社刊)の著者でもある。