大沢在昌さんの作品ですが、私はこれまでこの著者の作品は複数の作家によるオムニバス短編集でしか読んだことがありませんでした。
この作品についてのレビューを読んだところでは、大沢さんの作品をよく読んでいる人には割と不評のものが目立ちましたが、はじめて著者の長編を読んだ私としては、既成の期待ってものがなかったからか面白く読めました。
偶然コンピュータのシミュレーションソフト「ヒミコ」を解く鍵にされてしまった60代の男性を主役として、ハッカーに公安やらCIAまで出てきてスパイ合戦やら駆け引きやらでこのソフトの争奪戦が繰り広げられるのですが、作品中で著者の力説する主役の生き様やら生きてきた日本の時代背景の語りがあまりに多すぎて、くどい面は否めないです。
上下巻びっしりの長編でしたが、このあたりスッキリして展開を早めればもっとスリリングでさらに面白く読めたのにと残念です。
でもコンピュータ好きの私には、ストーリーはそのものがなかなか興味深く楽しめる作品でした。
タイトルは『ヒミコ』とかの方が良かったかも。