のんびりかな打ち日記  ini's blog

NikonD7100やSonyRX100M3で撮影した画像と日々の出来事を“ かな入力 ”でのんびり綴るブログです。

死神の精度

2008-04-08 01:12:29 | 通勤快読


タイトルからして設定的にホラーじゃなければ、コメディかオチャラケだろうと気軽に読めそうなので買ってみました。

伊坂幸太郎さんの6つのやや変形の連作短編集です。
最初の2話ぐらいまではつかみどころのない、悪く言えば内容の薄い話って印象でしたが、読み進めていくうちにこれはこれでなかなか面白くて妙な魅力があるように思えてきます。

死神界から派遣された人間の姿をした「千葉」って名前の死神 ( 死神は皆んな姓が地名らしい ) が、出会うそれぞれの人生、しかもこの千葉の調査報告によって基本的には不慮の事故などで一週間後に死ぬハズである調査対象者、それぞれの人間模様が上手く描かれています。

死神は皆んな何故かミュージックが大好きで、調査のために人間界に出てきたときは調査対象者と接しているとき以外はタワーレコードのようなところでヘッドフォンをつけて視聴に余念ない・・・なんて設定などコメディタッチではあるが、いたってまじめに書いてあるので読む方もとりあえずまじめに読んでしまう。

そして死神が「我輩は猫である」の猫のように人間の生活や行動を別の視点で追うことでその滑稽さが浮き彫りにされるところが面白い。
最近で言えばちょうど缶コーヒーのボスのCMに出てくる人間の姿をしたトミー・リー・ジョーンズが宇宙人ではなくて死神だったと言えばピッタリでしょうか。
「人間というものは実に疑り深い、自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすく、ほとほと救いようがない・・・」てな感じでまさしく宇宙人トミー・リー・ジョーンズのつぶやきそのものがこの死神から語られるところがミソですね。

それでいてこの「千葉」は、基本的に最後は死神界の慣例どおり調査結果を「可」で報告する( 「可」と「見送り」があるが基本は「可」 ) のだが、読者はどうしても調査対象者に感情移入するため「見送り」にすることを期待してしまう。
「見送り」で報告すれば対象者はとりあえず死を見送られるが、彼はそれぞれ調査対象者とかかわりながらもちゃんと「可」で報告するところがまたこのストーリーのよいところなのかも知れません。