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のんびりかな打ち日記  ini's blog

NikonD7100やSonyRX100M3で撮影した画像と日々の出来事を“ かな入力 ”でのんびり綴るブログです。

葉桜の季節に君を想うということ

2008-08-26 00:40:34 | 通勤快読


歌野晶午さんの作品は初めて読みました。
例によって文庫についている帯に 「 2004年版このミス1位、第4回本格ミステリ大賞受賞、第57回日本推理作家協会賞受賞 」 などの文字があったので思わず手にとってました。

いつもレビューを書くときには、Amazonなどでアップされている他の方のレビューも読んだりするのですが、この作品は賛否が大きく分かれている作品のようです。

私の感想としては、十分面白かったです。
最後に、あぁなるほどって種明かしのような部分があるのですが、これは特にトリックって感じでもなく笑って読めました。
もちろん、その設定のために若干無理なところもありますが、それもご愛嬌ということでいいんじゃないでしょうか。

2003年の作品ですが、上手く時代を反映していますね。
霊感商法、悪徳商法の酷さをちゃんと表現していますし、日本が少子化と寿命の伸びで、間違いなく老人大国になろうとしている点も上手く捉えています。
そんな中で壮年パワーに期待しているってところがまたいいんですよね。

確かに、2004年のミステリー賞を総なめにしたっていうのはやや出来すぎのような感もありますが、印象的には男性向きの作品で、そのあたりを割り切ればいいのかも?

容疑者Xの献身

2008-08-14 23:56:17 | 通勤快読

東野圭吾さんが、やっと取った直木賞受賞作品。
それだけにずっと読みたいと思っていましたが、文庫が出るまで我慢してました(^^;)
読む前は、へんてこりんなタイトルだなって印象でしたが、読み終えた今では内容を的確に表したストレートなタイトルでもあり力作だと思います。

残念ながら読後感がいい作品ではありません。
もともとそういう作品ではないのですが、ちょっと胸がつかえるような感じです。

理系である著者のミステリー作品としての真骨頂でしょうか、数学者が衝動殺人を瞬時に完全犯罪として組み立てる見事なトリック、でも決して謎解きを楽しませるだけの軽いストーリーではありません。
そして最後は、有り得ないような真相でありながらも、単純にそりゃないよ! って言わせないところが駄作と力作の分岐点なのかも知れません。

読後に胸がつかえる感じなのは、容疑者Xの献身的な愛情をどう捉えるのかでしょう。
緻密な数学者の異常な愛情の末路と考えるほうがスンナリ消化できますが、そうは表現されていないところが少し引っかかりますね。
ちょっと考えれば、起こってしまった殺人事件ではあるが、それは決して計画的でないし、そのまま自首しておけば情状酌量の余地も十分にあるだけに、結果的にこの事件にかかわって大きな悲劇と代償を生むことになってしまうこの容疑者Xの存在そのものに虚しさを感じてしまうことが胸のつかえになっているように思います。
さらには、たとえ容疑者Xの緻密な計算通りに隠ぺい工作が成功したとしても、これまた本当は決して誰ひとり幸せにはならないことを考えても同じです。
ただそのあたり著者がどう表現したかったのかまでは伝わってこないですね。

さまよう刃

2008-08-07 07:49:47 | 通勤快読

今野敏さんのライト感覚な小説ばかりもなんなので、久々にずっしりテーマの重い東野圭吾さんのさまよう刃を読みました。
凶悪犯罪、少年犯罪の多発する今の日本に対して、とてもタイムリーに問題を投げかける小説です。著者の主張が強く伝わってきますね。

愛する一人娘を強姦され殺された父親が、警察よりも先に犯人にたどりつく、犯人は未成年、法の裁きを受けさせることもできるが、それが遺族にとっていたたまれない結果を招くことは目に見えている。そして父親は“冷静に考えて”復讐する道を選ぶ。

犯人が未成年でもなければ、少なくとも日本にはまだ死刑という判決があります。
もちろんどんな判決が出ようとも殺された娘が帰ってくるわけではないし、気がおさまることもありません。
でも法の裁きを受けさせるよりどころは、せめて憎い凶悪犯人に対する死刑判決かも知れません。

その意味でこの小説は、死刑制度の是非論を一蹴しているところもあります。
この上、死刑制度まで廃止されたなら凶悪犯罪の被害者の遺族はたまらない、もう自分で復讐するしかないんじゃないのか。そんな主張も感じます。

この父親が犯人の一人を殺し、もう一人の犯人を追う間、当然、父親もまた一人の人間を殺した殺人犯として警察に追われます。

ここで読者はこの父親がもう一人の犯人を見つけて復讐をとげさせてやりたいか、先に警察に捕まって犯罪を重ねるのを止めさせたいか、読者自身の気持ちが問われているように感じます。
私はもちろん、この父親に復讐を遂げさせてやりたい、それまでは警察に捕まって欲しくないと思って読み進みました。
大半の読者がそう思うのではないでしょうか。そしてそう思わせることこそが著者の狙いでしょう。
なぜなら、その思いはすでに今の世の中では間違っているとされているからですね。
気持ちの矛盾を起こさせてあらためて問題点を見つめさせる手法でしょうか。
そのために犯人の少年はあくまで悪人に、そして父親はあくまで善人として書かれています。
実際はそこまで明確ではないから難しいのですが。
とにかく少々荒削りな部分も勢いで読まされてしまう内容です。
ラストはやや端折った感がありますが、著者としては結末以前に目的を果たしているのかも知れません。

マティーニに懺悔を

2008-07-31 00:07:52 | 通勤快読

またまた今野敏さんの連作短編集。
ハードボイルドタッチな作品にもかかわらず相変わらずシンプルな印象です。
荒削りな印象もあって初期の作だろうなって思ってみたらやはり19年前の作品でした。
でも読みやすいライトな感覚は、最近の作品にも通ずるところがあります。

主人公は茶道の師匠でありながら、武道の達人、いつもいきつけのバーから話が始まってバーにはおなじみの名脇役が集っているというよくある設定。
勧善懲悪的で水戸黄門みたいな部分もありますが、著者が実際に武道の有段者だけに格闘シーンがリアルです。簡単な内容で安心して読める作品でもあります。

ラン

2008-07-24 22:54:23 | 通勤快読

これも中学生の次男が買った本を読みました。
と言うより、図書券をたくさん持っていつも単行本を買う次男に 「 これなんかどう? 」 って、こっそり勧めた本です。もちろん 「 読み終わったらお父さんにも読ませてネ 」 なんていつもの調子で(笑)

でもって先に読んだ次男の感想が 「 うーん…それなりに面白いことは面白かったけど… 」 だったので、ひょっとして小難しい本だったかと心配しながら読みました。

読み終わってみて、小難しいってことはなかったものの、正直、私もやや消化不良です。
スポ根的なものを期待していた息子には確かに肩透かしだったでしょうけど、私としても 「 確かに面白いことは面白いけど… 」 って感想でしょうか。

スポーツ根性物ではないながら、青春小説でもなく、恋愛小説でもなく、かと言ってユーモア小説でもなく、型にはまらないところがいいのかも知れませんが、ややつかみどころもなかった気がします。
主人公の22才の女性 「 環 ( たまき ) 」 は、13才で交通事故で家族を失い、その後一緒に暮らしていた叔母も20才で失うという境遇ではあるが、ある日ひょんなことから自分で乗っていた自転車に導かれて生と死の境界を越えて家族に会うことができる、これがレーン越えらしいのだが、ルールにのっとって40キロ走れば、何度でもレーンを越えて家族に会いに行くことが出来るようになる。

ところが自分を導いてくれた自転車を本来の所有者に返すことになり、今度は自分の足で40キロを走ってレーン越えすることをめざす。
そこから愉快で個性豊かなランニングチームに参加し、展開も面白くなってくるのですが、いまひとつ強いものを感じないまま終わってしまいました。
同じ幽霊とも言えない幽霊が出てくる小説でも例えば高野和明さんの「幽霊人命救助隊」ぐらい意図がハッキリしていると、もっと消化しやすいのかも知れません。