無知というのは悪いものに決まっているというのが世間の常識だと思うのですが、無知がプラスに働く場合があるというお話をします。
例えば、ある人(Xさんとしましょう)が、あるアイデア(アイデアAとします)を思いつくとします。このアイデアAは客観的には、既に他の人が思いついているアイデアであるとします。が、Xさんはこれを知らずに、自分が世界で最初にこのアイデアを思いついたに違いないと勘違いしてしまい、興奮して調子に乗り、次々とその延長線にある、アイデアBや、アイデアC、更にはアイデアDといった本当に新規性のあるアイデアを思いついてしまうとします。
この場合、もしXさんがアイデアAが既に発明されていると最初から知っていたら、XさんがアイデアAを自分が思いついたに違いないという思い込みを持つことは不可能です。そして、この思い込みが生じないのですから、思い込みから来る興奮も、それによって調子に乗ることもない可能性が高いです。そのため、XさんがオリジナルのアイデアB、C、Dまでは思いつかない可能性が高くなってしまうのです。
こういうケースを考えると、何でもかんでも勉強すればいいというものではなく、無知な方がいい局面があることが分かります。
このケースでは、Xさんは、最初からアイデアAを既知のこととして勉強せず、自分でアイデアDまで思いついてから、既存の知識を調べればいいだけのことです。
で、「あ、アイデアAって昔からあったんだ!」と気づくわけですが、そのときにはもうオリジナルの、アイデアB、C、DがあるのですからXさんは立派な創造をなしとげているわけです。
もちろん、無知がマイナスに働く局面もいっぱいあるのですが、それは皆さんよくよくご存知でしょうからここでは割愛します。