椿山荘の庭園
津田令子様の著作本「接客革命」(芦書房 1,575円)から転載。
◎「あたりまえ」が「感動」を呼ぶ
元旦に、これぞ一流ならではというホスピタリティ力を体験しました。
それは目白にある日本庭園が有名で、ホテル、結婚式場などからなる総合施設Cでのこと。
タクシーを降り、二、三歩あるいてホテルのドアを開けていただいたその矢先に、「いらっしゃいませ、津田さま、お待ちしておりました」という思いもかけない台詞が、聞こえてきたのです。
「なぜ私の名前を?」という驚きと同時になんだかとてもうれしい気持ちになりました。福井から出てきた義母と義姉も敷居の高い東京のホテルに初めて泊まるという不安が一気に吹き飛んだようでニコニコうれしそう。それにしても何度か利用したことがあるとはいえ、予定の到着時間も告げていないし、なにせ元旦で大勢の人でごったかえしているし、私の顔を覚えているわけもないしなどと考えているうちに、その理由がわかりました。
とっても単純で簡単なことでした。
海外旅行からから帰ったばかりの義姉のスーツケースのネームプレートに大きく「TSUDA」と記されているのをトランクから出す際にベルボーイが瞬時にみて確認していたのです。
私のことを呼んだのだと勝手に思い込んでいましたが、考えてみればこの車に乗っているのは全員津田だったのです。ネームプレートに書かれた名前を呼ぶというあたりまえのことをベルボーイはしただけなのに、私に「顔を覚えていてくれたなんてうれしい」と感動させてしまうCのホスピタリティ力に脱帽をしました。
でもこのことは目白のCでなければできないことなのでしょうか。すぐれたベルボーイでなくとも、一流のホテルでなくても、「やる気」さえあればできるはずです。
「できない」のではなくただ「やろうとしない」だけのことです。
お客さまに到着から出発まで快適に過ごしてもらおうと本気で思えばどのホテルでも誰でもできることです。できることをみつけて本気で取り組み、感動していただければ、お客さまは「ただいま」と必ずまた来てくださいます。
(7月16日記)