つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

ホスピタリティの心(7)

2012年07月19日 | 友人
                           とらや本店

津田令子様著作本「接客革命」(芦書房 1,575円)より転載。

◎老舗のなせる心の技
初詣を兼ねて赤坂の豊川稲荷別院から日枝神社まで歩いたときのことです。数人の仲間と青山一丁目駅から外へ出た途端、容赦なく吹きつける北風とビル風に震えあがってしまいました。歩き出してから15分もすると、八甲田山さながら「勇気をもって引き返そうよ」という者も出てきました。向かい風でなかなか前に進まない道を歩いていると、とらや本店の看板が目に入りました。

「ちょっと温まっていこうよ」「なんかいわれたら誰かが何か買えばいいわよ」といいながら温まりたいだけが本心で一同お店に入ったのです。
すると笑顔の美しい店員さんが「お寒いなかご来店ありがとうございます」と押し付けがましくなく至極自然に迎えてくれました。

私たちみたいな目的で入る人が多いのかどうかはわかりませんが、この笑顔、この言葉、このさりげなさ、やられた~と思いました。
結局六人すべてが、ありがたいやらうれしいやらで一口羊羹、ゴルフボールの形をした最中などを喜んで買うことになりました。そして当初の目論見どおりもちろん身体も温かくなったというわけです。人の心とはそのようなものなのですね。

「買って買って」と商売が先行すると買いたくないと意地でも思うものです。しかもその逆もあるということです。寒いなかあるいは暑いなかわざわざ来てくださったお客さまに、「お寒いなか(お暑いなか)ご来店ありがとうございます」と自然にいえるお店がどれほどあるでしょうか。そんな心くばりのできるお店だったら毎日だって行ってみたくなりませんか。

(7月19日記)

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