ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

「バイオガス排出削減事業」に係わるジェイさんのお話。

2008年07月29日 | ごみ処分場の子どもたち
ゆきも@まにら

まずは、こちらをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/icanmanilaoffice/e/a748897ba9bb5c5dd9aa053d2b1cafaf

7月22日のPangea Green Energy(パンジェア・グリーン・エナジー:パヤタスでメタンガスをエネルギーに再生する事業を出資する会社)への調査訪問では、事業開始の前の段階から、携わってきた職員の方(仮名:ジェイさん)の想いや悩みを聞くことも出来ました。





この事業は、元々はPNOC(フィリピン国策石油会社)がリードして調査・開発を進めてきました。ごみ山の地中に今も尚眠る有毒ガスを抽出してエネルギー化するというフィリピン国内でも初めての画期的な試みには、日本の銀行などの企業も出資しました。2000年のごみ山崩落事故以降、ごみ山の安全管理を担うPOG(パヤタス・オペレーション・グループ)との協働事業が予定されていましたが、途中で、PNOCに代わってPangea Green Energyが事業を引き継ぎ、頓挫しかけたこの事業を立て直し実施まで漕ぎ付けたという経緯があったそうです。


【ごみ山の上から設備を見下ろす。】

ジェイさんによると、初めて事業の成果により、暗い夜道が街灯で照らされたとき、「実現した!やはり素晴らしい事業だった!」と嬉しくなったと言います。これまで日が沈むと暗闇の中で遊んでいた子どもが、街灯で照らされた路上にいるのを見て、「この事業に関わり続けてきて本当によかった。」と思ったそうです。

一方、パヤタスには、家に電気が灯っていない家庭が多くあります。中には、ジェイさんの元に、「うちは夜になったら、真っ暗だ。私たちの地区の家屋にも電線を付けてくれないか。」と問い合わせに来る人もいるそうです。確かに、古いごみ山にパイプが埋め込まれたり、事業の開始が目に見えるようになってから、住民の間では、「近い将来は、きっと、あのごみ山からの電気でパヤタスのすべての家庭に電気が灯るかもしれない!」と期待が膨み続けています。



しかし、パヤタス全域の人口と電気の使用量を考慮した場合、電気を無償で供給することは現実的ではありません。10年間という事業期間が終われば、Pangea Green Energyはこの全設備をケソン市へと引き渡します。その後のメタンガスの埋蔵量・管理費を考えると、むやみに「貧しい家庭に電気を!」と‘慈善事業’にしてしまうことに果たして意味があるのか、とジェイさんは語ってくれました。

ジェイさんによると、ごみ山周辺に住む人々は、鉄の棒で地中深く穴を掘って、パイプを通し、なんとそこから出るガスを使って調理していたと言います。このようにガスを‘公共資源’として無償で使っていた人々にとっては、「大規模な事業により、資源が独占され有料化された」と批判的に見ている人もいるかもしれません。

「事業を公共の福祉のために最大限活かしたいと常に願っている。設備建設の時にも、少しは雇用機会の創出には役立ったと思う。とても特殊な技術や知識を要する事業だから、パヤタス出身の人は結局一人しか雇われなかったけど、でも、色んな人の想いが詰まっている事業だと思うわ。」と、ジェイさんの言葉には、住民の期待に100%添えないもどかしさが混じっていました。

環境問題に取り組み目に見える成果を出す事業に携わるジェイのような立場の人も、目の前に住む住民の希望や期待を「現実」と認識していることを実感できた一日でした。