Takekida's log

千里の道も一歩から

仏果を得ず

2013-04-20 22:16:51 | Books
法事で久しぶりに津まで行ってきました。津は三重の中では人口は四日市に次いで2番手、四日市と松坂の争いでその中間に位置することから県庁所在地に選ばれたという不思議なところです。ただもともと藤堂高虎の安濃津藩の本拠地であったこともあり、それなりの規模があります。津駅は世界で最も短い駅名なのだとか。

仏果を得ず (双葉文庫)
クリエーター情報なし
双葉社


高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜になる。以来、義太夫を極めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝をつかんでいく―。
人形浄瑠璃という世界には残念ながら触れたことがなかったのですがその文楽の世界と青春というか恋愛を組み合わせたような小説です。もちろん中身は文楽の世界にどっぷり使った内容であり生半可な取材で書けるような話では無いと思います。「風が強く吹いている」では競技者に迫った描写に驚かされましたがこの作品も取材含め苦労して描かれた作品であるように思います。特に演目の登場人物に感情移入しながら実際の恋愛沙汰が進んでいく点は普通の恋愛小説にはない特徴と言えることでしょう。それらの登場人物も決して理想的な輩なんていなくて悩んでいたりどうも弱い方に進んでしまうのが人間だというのは面白いところです。この本のタイトルも仮名手本忠臣蔵の中の情景から来ているようです。

言ってみれば人形劇なのですが普通の劇であれば身1つで済んでしまう役割を太夫、三味線、人形遣いの「三業」で構成しているのが特徴です。なぜこんなに回りくどいことをするのかというのはありますがこれらのコンビネーションだからこそ完成する芸術であるからというのとただ何もしなければそこにいるだけの人形に人間の手を使って息を吹き込むという作業が価値あることと感じるからと思います。からくり人形を奉納したりと日本ではどうもこういった人形に対する感情移入というものに価値を感じるようです。
またこの人形浄瑠璃の世界は世襲制でないということもほかの芸能とは一線違っているところで魅力の一つにつながっているものと思います。

この本がきっかけで文楽がユネスコの無形文化遺産に登録されてというのをはじめて知りました。歌舞伎の演目も文楽で人気であったものを取り入れたものが多いとのことで芸能のなかでは非常に影響力のあるものと思います。機会を見つけて触れてみたいと思います。(非常に人気のようで予約できなさそうですが)
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