学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

岩波文庫と角川文庫

2020-12-21 21:47:23 | 読書感想
このあいだ国木田独歩の『武蔵野』を読みたいと思って、書店をのぞいたところが、岩波文庫版と角川文庫版がそれぞれあって、値段は岩波文庫の方が200円程高めでした。値段だけなら角川文庫のほうがお得ですが、それぞれ手に取ってみると、同じ中身でも、表紙も違えば活字の組み方も違います。岩波文庫の表紙は武蔵野の昔の地図を使い、活字の文字間や行間はやや広めでゆったりと組んであります。角川文庫の表紙は眼鏡をかけた若者のイラストが飾り、活字と文字間の行間はやや狭い。どちらにするか最後まで悩みましたが、角川文庫にしました。というのも、値段の安さはもちろん、ページのめくりやすさが手にしっくりときたこと、さらに現代の感覚で楽しめるよう表紙を今風にした心意気を買ったというところです。角川文庫といえば、今から20年程前に夏目漱石の全シリーズをイラストレーターのわたせせいぞうさんの表紙で飾ったことがあって、若い時分の私には衝撃的だった記憶があります。出版業界のことはよくわかりませんが、角川文庫はわりと過去の文学作品の表紙を今風にアレンジすることで、手に取りやすい本にしているようです。岩波文庫には大変申し訳ないところですが、しばらく角川文庫の『武蔵野』を楽しみたいと思っています。