細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ユダヤ人を救った動物園・アントニーナが愛した命』の恐るべき戦争秘話の強靭な美しさ。

2017年09月25日 | Weblog

9月13日(水)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-106『ユダヤ人を救った動物園<アントニーナが愛した命>』" The Zookeeper's Wife " (2017) Phantom Film / Sierra Affinity A Scion Films.

監督・ニキ・カーロ 主演・ジェシカ・チャスティン、ダニエル・ブリュール <127分・シネマスコープ> 配給・ファントム・フィルムズ

つい先日、「ブルーム・オブ・イェスタデイ』の時にも書いたが、このところ、やたらと戦後のナチス犯罪に絡んだ作品が多く目立つが、これもまた、そのナチス関連新作。

しかし戦争犯罪や、戦犯逃亡追跡などではなく、この作品はヒトラーの侵攻が始まった1939年のポーランドのワルシャワにあった、ヨーロッパ最大級動物園の秘話なのだ。

都市の爆撃やナチス軍の侵攻で、ワルシャワにあった動物園の、かなり多くの稀有動物たちも危機にさらされて、爆撃などでは多くの動物たちも災害に会い殺されてしまった。

その動物園の管理者だったジャヴィンスキ夫人は、夫が抵抗軍に参戦して留守の間も、出来るだけ多くの動物たちを爆撃から守り、ナチス軍隊の侵攻からも銃殺は免れりために画策したのだった。

というのも、この大きな動物園には、希少動物や大きなゾウやクマたちを養育するための地下介護室もあり、そのための補助施設や食料保管倉庫もあり、そこは厳重でナチスの進攻も逃れられた。

ジェシカが、つい先日見たニューヨークの<ロビー・レディ>を描いた『女神の見えざる手』でのおしゃれなオフィス・レディとは、また極端にも真逆な、この肝っ玉動物飼育管理女子を演じて見せる。

もちろん、これは戦争秘話なので事実だが、彼女の行った抵抗活動は、その広い動物園の地下介護飼育室の奥に、多くのポーランドに住む難民ユダヤ市民たちを隔離保護したのだ。

あの「アンネの日記」のアンネ・フランクは、自宅の屋根裏部屋に隠れてナチス軍の捜索を逃れたが、この動物園のジェシカは、動物たちの住む地下スペースに多くの同胞を匿ったという事実。

当然、不審に感じていたナチス地域担当高官のダニエル・ブリュールも、執拗にジェシカの隠蔽工作に不審を抱いて、摘発をしようとするが、彼女の善行には感づいているらしく、一線は踏み込まない。

この二人の微妙な信頼関係が、この実話ドラマのサスペンスを高めていて、お互いの立場とヒューマニズムを守ろうとする感情の交錯が、さすが二人の名優の演技で緊迫感が持続するのだ。

おそらくは「ダンケルク」と並んで、来年のアカデミー賞では多くのノミネートに挙げられるだろうが、ここ最近見たヒューマンな演技と、ドラマの迫力には魅せられてしまった。

 

■強打が左中間に転々する間に、悠々のスリーベース。 ★★★★+

●12月、TOHOシネマズみゆき座などでロードショー 


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