かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発を詠む(5)――朝日歌壇・俳壇から(2013年2月18日~5月6日)

2013年05月06日 | 鑑賞

朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。

 

被爆地にひとり覚めをる町長の義憤を知らぬ住民哀れ
                     (いわき市)馬目弘平   (2/18 佐佐木幸綱選)

ふるさとの「戸の入」無人にする為の集団移転と今日決める町
                     (本宮市)廣川秋男   (2/18 佐佐木幸綱選)

薪風呂を焚きし昔に戻らんかセシウムの無き夕焼け恋いつつ
                     (福島市)吾妻芳子   (3/18 佐佐木幸綱選)

放射能の検査のための漁をして競りなき市場で測定始まる
                     (平塚市)三井せつ子   (4/1 永田和宏選)

放射能物質今も流さるる海に魚の避難所はなし
                     (平塚市)三井せつ子   (4/8 馬場あき子選)

真っ白なご飯炊き上ぐるコンセントの先に原発あること悲し
                     (横須賀市)梅田悦子   (4/14 佐佐木幸綱選)

セシウムに汚染といえど手賀沼は沼面に春日揺らぐ小波
                     (我孫子市)板谷三雄   (4/14 佐佐木幸綱選)

ふくしまの何に寄り添う寄り添わぬもとの生業返してほしい
                     (二本松市)安田政幸   (4/22 佐佐木幸綱選)

嘘といふ種には嘘の花が咲く原発事故はぺてんの如し
                     (三郷市)岡崎正宏   (4/22 佐佐木幸綱選)

原発の事故はなかったことにするそんな動きがじわりとみえて
                     (坂戸市)山崎波浪   (4/22 佐佐木幸綱選)

廃棄すれど消滅せぬを明かすごと汚染土の山庭に居残
                     (福島市)米倉みなと   (5/6 佐佐木幸綱選)

原発反対叫びて過ぎし三十年上関の里に春は来にけり
                     (山陽小野田市)淺上薫風   (5/6 佐佐木幸綱選)

除染などありえません移染ですセシウム静かに人間を諭す
                     (長野県)小林正人   (5/6 馬場あき子選)

 

 

春寒や便器のごとく原発炉
                     (仙台市)木戸月彦   (3/18 長谷川櫂選)

被爆地を這ふほかになき山楝蛇(やまかがし)
                     (いわき市)馬目空   (4/8 金子兜太選)

炉を塞ぎあの原発のことをふと
                     (向日市)松重幹雄   (4/14 金子兜太選)

帰る日近き白鳥の声除染中
                     (福島市)池田義弘   (4/22 金子兜太選)

つちふるや産地確認する野菜
                     (多摩市)福田澄子   (5/6 金子兜太選)