労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

労組の仕事している勤務社労士がもしや誰かの役に立ってるんかな~と思いつつ飲んだくれて書いてるっす~(* ̄∀ ̄)ノ■☆

「労災認定について」のほんとに基本的な内容の講演を1時間でさせてもらったが、やっぱ1時間では時間が足らん…(__*)

2018-10-25 | 書記長社労士 労働災害
 今週月曜日に開催したうちの組織の「社会保障研究集会」では、全労済から、労働者共済運動の歴史と意味について、災害が多発している昨今で無補償者を無くす運動の重要性、災害に備えて、について講演をいただき、2番目には自分が「労災認定について」について講演、そして、介護離職のない社会をめざす会の共同代表で、NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジンの牧野史子様にお越し頂き「「職場から介護離職をなくすためにできること」~あなた自身心構えはありますか~」について講演をいただいた。

 今回の研究集会の講演テーマを決める際に、「うちの東ブロックと西ブロックの労働学校で社会保障について講座を組んだ際に、労災認定に関する質問が非常に多い」という問題意識と、「うちの産業の中で特にバスやタクシー職場で労働者不足が深刻な中、離職理由に『介護』のためということが増えている」という問題意識があって、どちらにしましょうかってと検討頂いたところ、両方組んで欲しいとなってしまったので、無理矢理二本立てになってしまった。

 いろいろタイムスケジュールで頭を悩ました結果、自分の持ち時間は精一杯絞り出しても1時間。
ほんとなら、悩むであろう「労災の認定事例や判例」を例示して、労災認定されたかどうか議論してもらうとか、またはフリーで参加者から「職場で実際にあった労災かどうか判断や対応が難しかった事案」を発言してもらってみんなで検討する、ってなワークを組み込みたかったけど、時間的には無理。
しかたないし、ほんとに、定型的な基本的な労災の考え方を、実例を散りばめながら、一方的に喋りまくったってな内容になってしまった。
聴く側としてはあまり面白くは無かったやろうなって反省だ。

 あとの懇親会とかでの参加者からの感想では、「盛りだくさんすぎてメモが間に合わない、せめて事例のキーワードだけでもレジュメに落としておいて欲しかった」という声が多くあった。
ごめんなさい、キーワードだけを落とすと、きっとあとで見返したときに、そのキーワードだけが一人歩きし、もっとも悩ましい「個別具体的な状況」ってのがどっかに行っちゃって、危ういのでそれは無理なのです!ごめんなさい!


「労災認定について」

◆業務災害 「労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害又は死亡」


 業務災害であると認められるためには、「業務起因性」がなければならず、業務起因性が成立するためには、その第一次的な条件として「業務遂行性」がなければならない。

○業務起因性
 傷病などが業務に起因して生じたものであるということであり、業務と傷病などとの間に、相当因果関係が存在することをいう。

○業務遂行性
 労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態をいう。 
① 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
② 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
③ 事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

 業務上の負傷の認定 業務に伴う危険が現実化して生ずる災害が、業務遂行性及び業務起因性が認められる災害である場合に、業務上の負傷として取り扱われる。

① 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
◇作業中
 作業中に発生した災害は、大部分が業務災害として認定される。
 ただし、その災害が業務外の原因により起こった場合や、担当業務外の行為に従事中などに起こった場合には、業務外とされることもある。

◇作業に伴う必要行為、合理的行為中
 労働者の担当業務とはいえないが、単なる私的行為ともいえないような行為は、それが特別の業務命令により積極的に是認されている場合には、その行為自体が担当業務となる。
 しかしそうでない場合には、次に該当するときに、業務行為または業務付随行為と判断され、その行為による災害については、一般に業務起因性が認められる。
Ⅰ 労働者の担当業務の遂行上、必要な行為。
Ⅱ 当該業務を担当する労働者として合理的な行為。
Ⅲ 業務行為の過程で通常ありがちな些細な行為。

◇緊急業務中
 緊急業務(事業場として突発事故・火災などの緊急の事態が生じ、これに臨んで行われる業務)は、事業主の命による場合はもちろん、事業主の命を待たなくても、その事業の労働者として当然に期待される行為(期待行為)である限り、当該行為中の災害については、一般に業務起因性が認められる。

② 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
◇作業に伴う準備行為または後始末行為中
 次のような準備行為または後始末行為は、業務行為に通常または当然に付随するものであれば、業務行為の延長とみられるため、当該行為中の災害については、一般に業務起因性が認められる。
Ⅰ 準備行為→機械器具や作業環境の整備など
Ⅱ 後始末行為→終業後の機械器具の整備・返還、作業環境の整理など

◇作業の中断中
 生理的行為(用便や飲水など)または反射的行為(風で飛ばされた帽子を拾おうとするなど)は、業務行為そのものといえないが、それが私的行為や恣意的行為などでなければ、業務に付随する行為として、作業からの離脱はなかったとみるのが相当であり、当該行為中の災害については、一般的に業務起因性が認められる。

◇休憩時間中
 事業主の管理下(事業施設内)にある限り、休憩時間中でも事業主の支配下にあることから業務遂行性は認められるが、休憩時間中は、労働者の自由行動が許されていることから、その時間中の個々の行為は私的行為とされる。したがって、休憩時間中の災害は、それが事業場施設またはその管理に起因することが証明されなければ、一般に業務起因性は認められないことになる。

③ 事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
◇出張中
 通常「出張」とは、一般に事業主の命令により、通常の勤務地を離れて用務地に赴いてから、用務を果たして戻るまでの一連の過程を含むものである。つまり、特別の事情がない限り、出張過程全般ついて事業主の支配下にあるといってよく、その過程全般が業務行為と判断される。したがって、出張中の個々の行為は、積極的な私用・私的行為・恣意的行為などを除き、一般に出張に当然または通常行う行為であり、当該行為中の災害については業務起因性が認められる。

◇通勤途上
 通勤途上は、事業主の支配下にあるとはいえないことから、業務遂行性はないことになる。したがって、その間に発生した災害については、一般に業務起因性が認められない。
 しかし、次のような災害は業務災害となる。
Ⅰ 事業主が提供する労働者のための専用の交通機関(通勤専用バスなど)の利用に起因する災害
Ⅱ 突発事故などにより事業主の命令を受けて出勤する際の災害など

④ その他特殊な状況による場合
◇療養中
 療養中の災害については、当初の業務上の傷病と、その療養中に、業務外の災害によって加重し憎悪した場合、ないしは療養中における業務外の災害による死亡との間に因果関係があるかどうかによって、現在の死傷病の業務上外が決まる。

◇天災地変による災害
 天災地変(暴風雨、水害、地震、土砂崩れ、落雷、噴火など)に起因する災害であっても、天災地変による災害を被りやすい業務上の事情があって、その事情と相まって発生したと認められる場合には、業務に伴う危険が現実化して発生したものとして、一般に業務起因性が認められる。

◇他人の故意による災害
 他人の故意による災害であっても、災害の原因が業務にあって、業務と災害との間に因果関係が認められる場合には、業務災害となる場合がある。したがって、加害行為が明らかに業務と関連しており、私怨や私的関係に起因したものでない場合には、それぞれの具体的事情を考慮することにより業務起因性が認められることがある。

◇自己の故意による災害
 故意とは、一般に、自分の行為が一定の結果を生ずべきことを認識し、かつ、その結果を生ずることを認容することをいう。故意による災害については、通常、業務との因果関係が成立しないため、業務起因性は認められない。ただし、労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる災害については、一般に業務起因性が認められる。

◆業務上の疾病
 業務上の疾病の認定については、業務が競合する原因のうち、相対的に有力な原因として認められる場合に、業務上の疾病として取り扱われる。
業務上疾病の範囲と分類は、労基法施行規則別表第1の2に明示されている。
Ⅰ 業務上の負傷に起因する疾病
Ⅱ 物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
Ⅲ 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
Ⅳ 化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
Ⅴ 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病
Ⅵ 細菌、ウィルス等の病原体による疾病
Ⅶ がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病(石綿業務による肺がん又は中皮腫など)
Ⅷ その他厚生労働大臣の指定する疾病
Ⅸ その他業務に起因することの明らかな疾病


◆通勤災害
 通勤災害とは「労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡」とされているが、この「通勤による」とは、通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具現化したことをいうのであり、これは業務災害の場合のいわゆる業務起因性に相当する考え方である。

労働者災害補償保険法 第7条
2 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

① 就業に関し
 「就業に関し」とは、移動行為が、業務に就くためまたは業務を終了したことにより行われるものであることを意味する。
 つまり、通勤と認められるためには、移動行為が業務と密接な関係をもって行われることが必要となる。

② 合理的な経路及び方法
 「合理的な経路及び方法」とは、住居と就業の場所を移動する場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び手段などをいう。
○合理的な経路
 乗車定期券に表示され、または、会社に届け出ているような、鉄道、バスなどの通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路など。
○合理的な方法
 通常用いられる交通方法は、その労働者が平常用いているか否かにかかわらず、一般的に合理的な方法とされる。

③ 業務の性質を有するもの
 「業務の性質を有するもの」とは、以上に述べた通勤の要件を満たす移動ではあるが、当該移動による災害が業務災害と解されるものをいう。このような移動は、業務災害として労災保険の保護を受けることができるため、通勤災害の範囲から除かれている。

④ 住居
 「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している場所で、本人の就業のための拠点となるところをいう。

⑤ 就業の場所
 「就業の場所」とは、業務を開始し、または終了する場所をいう。

⑥ 就業の場所から他の就業の場所への移動
 複数就業者の事業場間の移動

⑦ 住居間の移動
 住居と就業場所との往復に先行し、または後続する住居間の移動は、厚生労働省令に定める要件に該当するものに限り、通勤災害として認められる。(単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動)

労働者災害補償保険法 第7条
3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

 厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為
① 日用品の購入その他これに準ずる行為
② 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為
④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
⑤ 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)


 ご静聴ありがとうございました。
個別具体的な状況により、業務災害・通勤災害と認められるかどうかの判断がなされます。
また、不認定となった場合、納得がいかなければ、不服申し立ての制度もあります。
ご不明なケースがありましたら、ご相談ください。
一緒に、対応を、検討しましょう!
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