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【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」②課題

2024-03-21 | 書記長社労士 お勉強の記録

【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」①歴史 からの続き
【21🏃Run5-12 5.70km 33:21 皇居】 東京大学社会科学研究所を年度末をもって退職をされる、水町勇一郎教授の最終報告が、3月15日、東京大学本郷キャンパス 法文 2 号館 31 番教室にて開催されたので、聴きに行ってきた。(4月から早稲田大学へ)
タイトルは「日本労働法の歴史と課題」。
その内容の【メモ】2回目。


Ⅱ 課題 ⇒工場労働を前提とした集団的保護ではカバーできない ⇒労働法の見直しが必要
1 世界(欧米先進諸国)の課題
〇グローバル競争と格差社会 ⇒低成長と社会的排除
□差別禁止政策(action plan,accountability,disclosure) ⇒罰則的なものではなく、PDCAを回しながら改善でアプローチ
□セーフティネットの整備(personal support service,mutual obligation,basic income) ⇒困った人にお金を出すのではなく ⇒パーソナルサポート(訓練➡就職活動➡働く)
〇経済と社会の連動・複雑化 ⇒デフレスパイラルが転機 ⇒格差是正・最低賃金アップ
□経済政策・社会政策と労働政策の融合(ex. アメリカ:EITC、イギリス:Universal Credit、フランス:RSA,prime d'activité) ⇒給付付税額控除
□市場と連動した労働政策(企業情報公表、優良企業認定、政策上の優遇) ⇒企業の努力を公表➡インセンティブを与える
〇デジタル化と労働法制 ⇒工業化でできた労働法=同じ場所で指揮命令➡ネットワーク(場所・時間が異なる、分散型、フラット化)
□労働法制の基盤の見直し(「労働者」概念、「使用者」概念等) ⇒労働法上の責任 ⇒事業場の概念
□プラットフォーム就業者等の保護政策 ⇒フリーランス⇒労働法の労働者でない場合
□デジタル化(AI・アルゴリズム)への対応(アルゴリズムによる監視・管理、個人情報・プライバシーの浸食、内在する差別からの保護等) ⇒ウェアラブルデバイス(スマートグラス・スマートウォッチなど)で情報がとられる、あるいはプロファイリング ⇒情報を身ぐるみ剥がされる ⇒労働法でどう対処するか? ⇒繋がらない権利

2 日本の課題
〇世界的課題と日本の対応 ⇒共通
□背景と政策の方向性の類似性 ⇒日本は諸外国と比較
□課題と対応の内容、速さ ⇒一周遅れ、二周遅れ
〇日本に固有の課題 ⇒労基法が守られていない! ⇒ほとんどの職場に労働基準法が存在していない
□労働法の実効性確保システム
・労使関係(企業別労働組合の限界と不存在) ⇒労働組合が現場で監視 ⇒しかし日本は呉越同舟(ストが少ない) ⇒フランスより日本は組織率高い、しかしフランスは産業別組織 ⇒日本の99人以下の中小企業の組織率は0.8% ⇒ネットワークの活用で改善できないか ⇒「企業内労組から産業別労組➡自発的展開で横に拡がる・デジタル化➡フリーランスが鍵➡労働協約の地域的拡張適用・労働者代表のあり方」
・行政監督(労働基準監督官等の人員の少なさ) ⇒ILO基準=労働者1万人で1人 ⇒日本は労働者6000万人で3000人 ⇒2万人で1人 ⇒日本には516万事業場 ⇒監督官が毎日1か所回っても(物理的に無理だが)7~8年かかる
・裁判所(裁判所利用率の低さ) ⇒日本では6500件/年の救済、仏で12万件、独で26万件 ⇒メンタリティの課題よりシステムの課題
□分権的社会秩序(企業共同体)を重視した労働法
・日本的雇用システム(正社員中心主義)がもたらした弊害 ⇒「過重負担⇔非正規」 ⇒格差、教育、低賃金、エンゲージメントの低下 ⇒同一同一
・労働政策決定におけるコンセンサス重視がもたらした弊害 ⇒共同体的決定 ⇒抜本改革ができない ⇒欧州なら「労使が反対してもマニュフェストで法制化」「法改正されなくても産業別労使で労協化」 ⇒だから日本と違って欧州は早い
・フィクションとしての労使関係と労働法の空洞化

3 労働法改革の方向性
〇世界的課題に対する機動的・動態的な対応
□山積する中長期的課題
□労働法学(社会法学)の役割と政治の役割 ⇒これまで出来ていない、やって来なかった
〇労働法の基盤(実効性確保システム)の整備
□現場での対等な交渉・調整の基盤となる労使コミュニケーションの場の構築
□働く人の健康や人権を守る行政や裁判所の機能強化 ⇒現場に任せられない
□市場やデジタル技術を生かした法政策の整備・構築
➡多様でスピードの速い社会変化に対応できる重層的な労働法の基盤の整備


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