渋谷将泰庵でランプ芯のローストビーフをいただきました。
わさびを載せて、岩塩をちょいとつけてぱくり。
うーん、美味しい!赤身肉の旨味がぎゅっと詰まった究極の美味にワインがこくこく進みます。
ローストビーフは、イギリスの重要な伝統料理です。
イギリスでは伝統的にキリスト教の安息日である日曜日の午後に、最高のご馳走としてローストビーフを食べる習慣がありました。
肉が十分に賄えない貧しい家庭でも、ヨークシャー・プディングを大量に添えるなど工夫してそれでも安息日にローストビーフは欠かしたくないというソウルフード的な位置づけだったようです。
貴族にはサンデーローストという、日曜日に牛を丸ごと屠ってローストビーフを焼く習慣がありました。
日曜日に客を大勢招いて贅沢にローストビーフをふるまうのが貴族としての矜持で、月曜日から土曜日はその残り物でつつましく食べるのが嗜みでした。
でまあ、曜日が進むにつれ食材のお肉が古く切れ端となっていき食卓が貧相になります。
誇り高いイギリス貴族は文句を言わず、固く固くなり臭いも怪しくなった切れ端肉を黙々と食べました。
この辺の文化が、「イギリスには美味しい食べ物がない」というイメージの源泉となったようです。
さて、この問題を解決する革命的な料理が遠くインドで発見されます。
カレー。
香辛料をふんだんに使ったこの魔法の煮込み料理は、古いお肉の臭みを消し、固くなった切れ端肉をも極上の美味に仕立て上げました。
サンデーローストの残り物肉を美味しくいただくためのレシピとして、イギリス風カレーが劇的な発展を遂げます。
このイギリス風カレーは東郷平八郎らの英国留学生、また横浜の外国人街レストラン等から国内に伝えられ、今の日本風カレーの礎となりました。いわゆる日本カレーの母が英国風カレーで、その源流がローストビーフの余り肉を美味しく食べたいとの悲願です。
伝統をつなぐ強固な意志と誇り、より美味しいものが食べたいという人類の悲願、尊いですねなんてローストビーフタイムでした!