ひのっき

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「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義」から覗く資本主義の顔

2017年07月08日 | 絵日記
[改訂新版]藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義 (光文社新書)
藤巻健史
光文社

「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義」を読みました。
面白かったです。勉強になりました。
本作品は、一般や学生向けに開いた金融マーケットセミナーの講義録です。
金融知識0の状態を前提に、噛んで含めるように教えてくれるので大変分かりやすいです。
金利スワップや、先物オプションの仕組みや稼ぎ方を丁寧に解説します。
これまでこういった金融取引って、欲望に飢えた金の亡者がぼろもうけするための手段と言ったイメージがありましたが、これがないと経済が回らないということが丁寧に説明されます。
例えば1ドル=100円の時に日本の自動車会社が100億円分の車をアメリカの販売店に1億ドルで売り代金を一年後に受け取る場合。
自動車会社は為替のリスクを負いたくないので、「1年後に1億ドルを100億円で売る権利」を買いたいと思います。
例えばその権利が1億円だとしても、99億円の売り上げが確定し為替リスクが切り離されるなら自動車会社は助かります。
こういった取引がいつでもできるのは、欲望に飢えた金の亡者たちがリスクをとるからです。
米ドルやユーロ、日本円等のメジャー通貨にはディーラーやファンドなどの亡者たちが沢山いるのでスピーディーに必要な金融取引が完了します。

金の亡者たちは時には政府へも牙をむきます。
1992年に発生したポンド危機では、イングランド銀行がジョージソロス率いるヘッジファンドのポンド売り攻撃に負けてポンドが急落しました。
勝ったジョージソロスは20億ドルもの巨額の利益をあげ、負けたイギリスはポンドからユーロへの切り替えを断念せざるを得なくなります。
しかし皮肉なことに安いポンドのおかげでイギリスの輸出産業がうるおい、どん底だったイギリス経済が復活しました。
発生当時は「ブラック・ウェンズデー」と言われた9月16日は、今ではイギリス経済を救った「ホワイト・ウェンズデー」とも呼ばれているそうです。

この成功を見た世界のヘッジファンドたちは、2004年に日本の円をターゲットにした円買い攻撃を仕掛けます。
これを受けて立ったのが財務大臣谷垣禎一。日本銀行は一日一兆円規模の円売り介入をコツコツと続け、ヘッジファンドたちの資金を枯渇させました。一説にはこのとき世界で2000社以上のヘッジファンドが倒産したとも言われています。
見事勝利した日本銀行ですが、皮肉なことにこの介入で市場にばらまいた大量の円が未曽有の金余りを生み、日本経済は様々な問題に悩まされることになりました。

勝負に勝って試合に負ける、その逆もまた然り…か…。

人間の欲望をエンジンに経済を回すための様々な仕組み、資本主義の危うさと力強さに思いを馳せた読書タイムでした!


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