萩原朔太郎の詩を読む(4)小林稔
静物 萩原朔太郎
静物のこころは怒り
そのうはべは哀しむ
この器物の白き瞳にうつる
窓ぎはのみどりはつめたし。
「静物」
再会 萩原朔太郎
皿にはをどる肉さかな
春夏すぎて
きみが手に銀のふほをくはおもからむ。
ああ秋ふかみ
なめいしにこほろぎ鳴き
ええてるは玻璃をやぶれど
再会のくちづけかたく凍りて
ふんすゐはみ空のすみにかすかなり。
みよあめつちにみづがねながれ
しめやかに皿はすべりて
み手にやさしく腕輪はづされしが
真珠ちりこぼれ
ともしび風にぬれて
このにほふ舗石(しきいし)はしろがねのうれひにめざめむ
「再会」
朔太郎の初期詩篇「愛憐詩篇」は、北原白秋や室生犀星の影響を受けながらも、彼らの「抒情的表白」における文語体から少しずつ変貌をとげ、より簡素になり始めるのであった。抒情的肯定からそこで満たされない現実への剥離が反抗へと駆り立てられる心情の兆しが見えてくる。直接心情を語るのではなく物に語らせる、後のイマジスチック・ヴィジョンに向かう事態が生まれているのである。
「
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