ボクスンはAランクの殺し屋。
それを隠してティーンエイジャーを育てる母でもある。
母娘の暮らすゴージャスなマンションの中央には、彼女の趣味の温室がある。
ボクスンはそこで鉢の手入れをしたり、難しい年頃の娘と会話を試みたりする。
マンションは実は実在する場所ではなく「ボクスンと娘が暮らす」心象風景だから、決して外の景色は映し出されない。
太陽の光は射さず、どの季節の風も吹き込んでこない。
その平和を彼女は文字通り命がけで守っている。
彼女を愛した者からの最後の贈り物は、その温室を壊す凶器だったけれど、意図はどうあれ必要な一突きだった。
彼女のような者の娘が、ただ守られる花であるものか。
その先の物語がどうなっていったのかは知らないけれど、二人を隔てる壁が壊れた隙間からは風と光が(たまに嵐も)通り抜けているはずだと思っている。