最終回のそれなりのハッピーエンドの前に、アパートで主人公が一人食事をしていて涙するシーンがある。
何か食べながら食器を洗いながら、あれ?と自分でもよくわからないなと彼は目から出る液体を拭く。ちょっと姿を消して(きっと物干場のタオルに顔を埋めて泣いて)気を取り直してテレビをつけたのに、ソファの彼はついに嗚咽する。
私たちはなんで泣いたのかな、という気持ちと、とにかく泣けてよかったな、という気持ちでそれを見ている。
いいかげんができない不器用なやつで、周りのみんなにも、世界で一番可哀想な子にも可哀想がられる。いつでも役割を果たそうとする人だから、一人にならないと泣けなかったはずだ。
なんで泣くのか、自分だってわからなかっただろう。自分の気持ちこそがわかんない人だし、そもそも泣いたことすらないはずだしね。
あれはね、ポン、と栓が抜けたんだよね。
ずっとこうあるべきって自分で自分に課したものの中で、窒息していた。そして静かに死にかけていた。
だからあの涙は生き返る、息を吹き返す、血が流れ始める、そんなようなものだったと思う。
きちんと自分を生きないと、ね。
私たちもみんな。
ファイティン。