「ああ、嫌だ~」母はそう言って帽子を放り出した。
見れば、つば広のしゃれた帽子だ。
母は帽子が好きで楽しんでいる。また、よく似合うのだ。
しかし、痩せて顔が小さくなり被ると魔法使いみたいだと嘆く。
「顎がしゃくれて、ホウキを持ったら魔女みたいだよ」
確かに髪にボリュームが無くなって目まで隠れてしまうのだ。
私はお腹を抱えて笑ってしまった。
泣きはらした目の小さな魔女を想像してしまったのだ。
愛妻を天国から見ている父さんが友人に自慢しようと下界を覗き、
驚いて逃げ出してしまうと、母は泣き笑いをした。
そして鏡を覗きこんで自分でも大笑いをした。
久しぶりに母の笑った顔を見た。
父は万年筆を買うのが好きだった。
青々としたインクの男らしい字の練れた字を書いた。
誕生日の一封に【健康に気をつけろよ】と一言書いてくれたりした。
その万年筆を久しぶりに見つけた。
母は私に使えと言うが、
最近、或る昇進試験を受けた妹が合格したら、
それを使って先ず最初にサインをしたらいいと思っている。
父が、その合格を凄く楽しみにしていたからだ。
きっと、喜んでくれると思う。
母さん、まだ、帽子を被って父さんに見せに行ってはダメだよ。
もう少し、ゆっくりこちらを楽しもうよ。 ねっ!!
見れば、つば広のしゃれた帽子だ。
母は帽子が好きで楽しんでいる。また、よく似合うのだ。
しかし、痩せて顔が小さくなり被ると魔法使いみたいだと嘆く。
「顎がしゃくれて、ホウキを持ったら魔女みたいだよ」
確かに髪にボリュームが無くなって目まで隠れてしまうのだ。
私はお腹を抱えて笑ってしまった。
泣きはらした目の小さな魔女を想像してしまったのだ。
愛妻を天国から見ている父さんが友人に自慢しようと下界を覗き、
驚いて逃げ出してしまうと、母は泣き笑いをした。
そして鏡を覗きこんで自分でも大笑いをした。
久しぶりに母の笑った顔を見た。
父は万年筆を買うのが好きだった。
青々としたインクの男らしい字の練れた字を書いた。
誕生日の一封に【健康に気をつけろよ】と一言書いてくれたりした。
その万年筆を久しぶりに見つけた。
母は私に使えと言うが、
最近、或る昇進試験を受けた妹が合格したら、
それを使って先ず最初にサインをしたらいいと思っている。
父が、その合格を凄く楽しみにしていたからだ。
きっと、喜んでくれると思う。
母さん、まだ、帽子を被って父さんに見せに行ってはダメだよ。
もう少し、ゆっくりこちらを楽しもうよ。 ねっ!!