北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十四年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.04.21・22)

2012-04-20 23:07:04 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 桜前線北上中。先週相馬原は蕾でしたが、そろそろ東北南部の開花時期でしょうか、さて、明日土曜日と日曜日に自衛隊関連行事が実施されます。

Gimg_6048 1962年に陸上自衛隊は創設以来最大の部隊改編を実施、管区隊から師団制度を旧陸軍以来の復活を実現させました。そして半世紀、今年度は師団創設50周年記念行事が数多く行われ、今週末も北熊本駐屯地第8師団創設50周年記念行事、神町駐屯地第6師団創設50周年記念行事が行われます。

Gimg_9851 第6師団創設50周年記念行事神町駐屯地祭、東北南部を警備管区とし、東日本大震災において自衛隊創設以来最大の災害派遣を支えた師団は、山形県の神町に司令部を置きます。駐屯地は山形空港に隣接し、空港に隣接し400mの場所に或る神町駅は戦後に東北のGHQ鉄道輸送調整司令部が置かれた交通の要衝、震災災害派遣を記憶する機会として神町駐屯地祭は今週末最も注目と言えるやもしれません。

Gimg_1683 第8師団創設50周年記念行事北熊本駐屯地祭。九州南部と奄美諸島を警備管区にもつ第8師団も第8混成団からの師団改編を受け、今週末にて半世紀を迎えます。この半世紀を迎える直前には、北朝鮮弾道ミサイル事案に際し史上初めて実弾を装填し沖縄救援隊を派遣するなど、実任務に新しい一歩を重ねることとなりました。

Gimg_9918 前川原駐屯地創設58周年記念行事、陸上自衛隊幹部候補生学校創設記念祭。福岡県久留米市に置かれている駐屯地で、陸上自衛隊の幹部自衛官が防衛大学校や一般大学、部内選抜などを経て幹部自衛官へ練成されるのが、この幹部候補生学校です。候補生は陸曹長にあたり、全ての動作、自衛官の模範を目指しているところを示す行事ともいえるでしょう。

Gimg_2663 八戸駐屯地創設58周年記念行事。第2対戦車ヘリコプター隊、第4地対艦ミサイル連隊、第5高射特科群、第9後方支援連隊、第9施設大隊等が駐屯する駐屯地で、東北方面混成団新編に伴い即応予備自衛官主体の第38普通科連隊一部中隊も駐屯しているとのことです。対戦車ヘリコプター隊のAH-1S機動飛行など、期待というところでしょうか。

Gimg_6392 普通科連隊の行事も全国で一斉に始まります。弘前駐屯地創設44周年記念行事、青森県のこの駐屯地には第39普通科連隊、第9偵察隊等が駐屯しています。弘前駐屯地祭は市街パレードを実施するようですが、このパレードは自衛隊記念日行事として別の行事のようですね。

Gimg_5873 久居駐屯地創設60周年記念行事。三重県の駐屯地で、第33普通科連隊が駐屯する駐屯地で、中部方面隊において最初に軽装甲機動車を装備した普通科連隊。本年は軽装甲機動車受領から10周年になります。近鉄久居駅から、すぐ隣という駐屯地ですので、見学へ鉄道利用の方には非常に便利な駐屯地と言えるでしょう。

Gimg_6184 松本駐屯地創設62周年記念行事。長野県松本市の子の駐屯地には山岳連帯として名高い第13普通科連隊が駐屯しています。13連隊は、長野県の山岳地帯を文字通り山岳訓練地として用いているため、山間部の駐屯地部隊という以上に峻険な高山での山岳レンジャー養成をおこなているところ。精強な山岳連帯の行事です。

Gimg_6155 高田駐屯地創設62周年記念行事。新潟県に二つある普通科連隊駐屯地で、首都圏への裏口に当たる新潟方面への着上陸を警戒し配置されている部隊の一つ。興味深いのは、新潟の高田駐屯地と新発田駐屯地は高田城址と新発田城址にあり、再現櫓が置かれているというところ。城郭と駐屯地、なかなか稀有と言えるでしょう。

Cimg_9387_1 高良台分屯基地、福岡県久留米市の分屯基地で航空自衛隊のペトリオットミサイル部隊が配置されています。配置されているのは春日基地第2高射群隷下の第8高射隊で、広域防空用のPAC-2に加え2010年に弾道ミサイル迎撃能力を有するPAC-3を装備しています。芦屋基地からT-4練習機の航過飛行なども予定されているようです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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佐世保警備区沖縄本島周辺に自衛艦11隻遊弋、沖縄本島東方南東方海域にて実弾訓練

2012-04-19 12:57:47 | 防衛・安全保障

◆五島列島・豊後水道・紀伊水道・小笠原でも計28隻

 防衛省によれば、現在海上自衛隊は沖縄本島周辺海域において比較的大規模な自衛艦11隻による訓練を実施中とのことです。

Oimg_0028 沖縄周辺海域での訓練は、沖縄HH海域において10隻2機と二日間に渡り11隻2機、沖縄MM海域でも10隻2機と二日間に渡り11隻2機、沖縄Ⅱ海域についても10隻2機と二日間に渡り11隻2機、延べ96隻が参加する規模となりますが、10隻の部隊が海域を移動しつつ訓練を実施、途中1隻が合流し訓練、ということなのでしょう。海上自衛隊演習や自衛隊統合演習ではなく、日常的な訓練です。

Simg_1452 実弾訓練の期間は4月18日から26日までの期間で、予備日を含めた場合28日までの予定。実施海域は、沖縄本島東方のHH区域、沖縄本島南東方のMM区域、沖縄本島東方のⅡ区域で、訓練内容について、いずれも護衛艦や航空機などによる水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等が実施されると発表しました。

Simg_8664 沖縄本島東方HH区域は沖縄本島から太平洋側に位置する海域で、18日には、自衛艦10隻と航空機2機による水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等の射撃訓練の実施を発表していて、予備日に19日から22日の期間を設けているとのことです。

Simg_9085 この海域では23日と26日にも射撃訓練が予定され、予備日として25日と27日、28日が予定。こちらは自衛艦11隻、航空機2機が水上射撃、対空射撃、対潜ロケット射撃、フレア発射等の射撃訓練を行うとのこと。対水上射撃の実施には、曳航標的が用いられ、場合によっては訓練実施艦のほかに多用途支援艦や訓練支援艦の展開があるかもしれません。

Simg_0406 沖縄本島南東方MM区域、逆三角形に太平洋を広がる広大な訓練海域でこちらでも18日と予備日に19日から22日という設定にて、自衛艦10隻、航空機2機をもって対水上射撃訓練と対空射撃訓練、対潜ロケと射撃にフレア発射訓練の実施が発表されていました。

Simg_0109 23日と26日にも同海域において同じ内容の射撃訓練が実施され、自衛艦11隻と航空機2機が参加。こちらの予備日は25日と27日、28日となっています。訓練内容として示されている対空射撃訓練は護衛艦の艦砲や高性能機関砲を用いて行うもので、航空機により標的を曳航、実施するものです。

Simg_3437 沖縄本島東方Ⅱ海域は、沖縄本島から遠く離れ大東諸島南方に展開する五角形に広がる海上で、18日と予備日に19日から22日という設定にて、自衛艦10隻、航空機2機をもって対水上射撃訓練と対空射撃訓練、対潜ロケット射撃にフレア発射訓練。23日と26日に自衛艦11隻と航空機2機が参加する訓練が行われます。

Simg_0587 対潜ロケットとはアスロック対潜ロケットを意味しているものと考えられ、加えて航空機からのロケット弾攻撃訓練も示しているのかもしれません。フレアーは赤外線誘導ミサイルを回避する囮熱源を示し、護衛艦及び航空機からの発射訓練が行われる、ということなのでしょう。

Oimg_2416 これだけの規模の部隊訓練ですので、射撃訓練に参加しない支援艦として前述の多用途支援艦や訓練支援艦に加え、補給艦も護衛艦への補給へ参加している可能性があります。また自衛艦と記載がありますが、掃海艇やミサイル艇なども射撃訓練へ参加している可能性もあるところです。

Simg_3837 このほか、佐世保警備区では24日に五島列島南方F海域において自衛艦2隻が対水上射撃と対空射撃訓練を実施。同じく24日に下関沖S-2海域にて自衛艦3隻が水上射撃訓練を実施。翌25日には五島列島東方S-1海域において自衛艦1隻航空機1機による水上射撃訓練が実施されると発表されています。

Img_6612 これだけでも相当の規模ですが、同時に横須賀警備区では野島崎南方C海域にて24日に自衛艦5隻と航空機1機による対水上射撃と対空射撃に対潜ロケット射撃を実施予定。17日に同じ海域で自衛艦6隻と航空機1機による訓練を行ったところでの実施のもよう。

Img_6660 また、硫黄島東方Y-3海域でも1日から5月31日にかけ、自衛艦8隻が対水上射撃と対空射撃訓練を設定しています。流石に全ての期間で毎日実施、ということは無いでしょうが沖縄近海と大東島を支える小笠原諸島において、同時期にこうして実弾訓練が実施されているということ。

Img_3778 呉警備管区でも豊後水道では豊後水道南方L-1海域にて自衛艦5隻と航空機2機が19日と20日に対水上射撃訓練と対空射撃訓練を実施。同じくL-1海域に24日、自衛艦4隻による対水上射撃と対潜ロケット射撃が行われると発表。本日19日には紀伊水道南方K-1海域にて自衛艦3隻が対水上射撃訓練を実施中です。

Img_5758 沖縄周辺での訓練は、海上自衛隊全体の訓練規模からみれば、突出して大きいということは必ずしも言えませんが、沖縄東方海域を中心に巡回し訓練を行う、ということは訓練という形でも必然的にそれだけの部隊が集中し、抑止力として機能しているということは、同時に間違いありません。

Img_7448 特に訓練というかたちでも、自衛艦が巡回している海域には、我が国の島嶼部への領土的野心を表面化させている隣国に対し、艦船の接近を拒否する機能を発揮させることが出来るということそのものが、抑止力として機能します。実のところ、艦船数もさることながら、こうした巡回こそが抑止力であり、実戦での能力以上に武力紛争の発生を未然に防ぐという観点からは重要とさえ言えるもの。

Img_8490 近年、我が国南西諸島への隣国の領有権主張に加えて、南西諸島での同国海軍の行動が活性化している点が指摘されますが、同時期は我が国海上自衛隊がインド洋対テロ海上阻止行動給油支援や、ソマリア沖海賊対処任務といった新しい任務が重なり、訓練計画の体系に影響が出た時期と重なることを忘れてはなりません。

Img_7495 また、近年の原油価格高騰に対し、防衛費に占める艦艇訓練用燃料の取得費用が増額されなかった、ということも即ち艦艇の稼働時間へ影響するものですから、必然として訓練体系へ及ぼした影響がある、ということも、こうした訓練範囲の縮小というかたちで表面化していること、忘れてはならないでしょう。

Img_8811 これにより、日本周辺の巡回しての訓練実施も縮小され、その間隙に隣国の海軍力強化と加えて南西諸島地域での活性化が重なっているわけです。そうした意味でも、今回のような巡回しての訓練は、海上自衛隊の練度向上とともに、領土的野心を隣国が行動として示すことを封じるという意味で重要性が高いのだ、といえるわけです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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テニアン自衛隊基地案 島嶼部防衛力強化へ自衛隊マリアナ諸島に駐留拠点構築を計画

2012-04-18 23:37:46 | 防衛・安全保障
◆マリアナ諸島へ太平洋戦争以来の拠点
 日経新聞によれば、政府は島嶼部防衛に関する訓練環境強化へ、米自治領マリアナ諸島テニアンへ自衛隊の駐留施設構築を検討しているとのこと。
Img_2653 マリアナ諸島は現在では自衛隊が訓練に展開する場所ですが、第一次世界大戦により日本がドイツから委任統治領として委任され、第二次世界大戦において米軍との激戦の末に占領され、日本本土戦略爆撃の最大の拠点として機能、本土空襲のほか原爆投下の拠点ともなり戦後はアメリカ自治領へ転換し、今に至ります。
Img_1430 今日では特にグアム島は太平洋地域における戦略航空拠点として機能しており、日本有事において沖縄の基地機能がミサイル攻撃などにより維持不能となった場合には後方から支える日本の生命線としての位置づけにもあります。加えて環太平洋合同演習では陸上訓練なども実施されているところ。
Img_7080 防衛省では、特に沖縄県島嶼部に対する軍事的圧力へ対応する必要性を痛感しつつ、しかし離島防衛に不可欠な上陸や橋頭堡確保といった両用作戦訓練、航空阻止や近接航空支援の実爆訓練を行う十分な演習地を確保できない実情が指摘され続けてきました。
Img_2713 マリアナ諸島における日米訓練の強化はかなり前から日米で検討事項となっており、テニアン島への自衛隊施設は、同島におかれている米軍施設を拠点として、主として訓練部隊をローテーションにより駐留させ、特にこの訓練部隊は陸海空の統合部隊を編成させ訓練に当たるとのこと。
Img_6275 可能であれば、沖縄県の米軍北部訓練場などを日米共同運用とすることが望ましいのですが、演習場としての需要は大きく、他方で航空部隊の実爆訓練などは沖縄県では実施が難しく、結果テニアンへの訓練部隊駐留という方策が具体化したのでしょう。
Img_8316 今回の拠点構築は、自衛隊の能力強化へ寄与することや日米安保体制の強化が進展するという一方で、マリアナ諸島へ恒常的に自衛隊の訓練部隊がローテーション展開することとなり、結果的に自衛隊の輸送能力も強化する必要が出てくることが考えられます。
Img_7517 特に米軍再編に際して、沖縄よりグアムへ移転する米軍部隊の沖縄との移動に関して高速輸送船を日本側が用意する合意が為されており、カーフェリーなどを長期チャーターすることが考えられています。これに合わせて自衛隊のマリアナ諸島への定期的な移動が行われるようなれば、戦略機動能力の強化へ繋がるやもしれません。
Img_7_7_5_1 テニアン島は広島長崎へ核攻撃を行った爆撃機B-29の発進基地となった島ではあるのですが、この島へ自衛隊が駐留するということは日米関係の新しい一歩、もしくは再び旭日旗がテニアンに、という受け取り方も出来るのでしょうか。ともあれ、日米関係に新しい歩み、自衛隊にも新しい一歩となることは間違いないでしょう。
北大路機関:はるな

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沖縄救援隊は900名規模 石垣島・宮古島・沖縄本島・与那国島へ緊急展開

2012-04-17 23:48:23 | 防衛・安全保障

◆第15旅団2100名を支援、まもなく撤収完了
 南西諸島の防衛について、陸上自衛隊は沖縄に第15旅団を配置していますが、その全部隊が沖縄本島に駐屯、離島地域の防衛への不安が指摘されていた中、北朝鮮弾道ミサイル事案はここを狙い撃ちしたかたちとなりました。
Oimg_3885 こうしたなかで、沖縄救援隊が編成され派遣され、現在は撤収が進んでいることは幾度も記載しましたが、自衛隊の北朝鮮弾道ミサイル事案へ、陸上自衛隊の展開規模が自衛隊の機関紙という位置づけにある朝雲新聞に掲載されていました。それによれば、陸上自衛隊による沖縄救援隊は900名と、対馬警備隊やかつてのイラク派遣部隊の規模を上回り、師団一個普通科連隊に近い規模の部隊が展開していたとのことで、沖縄を防衛警備管区として任務にあたる第15旅団の規模を考えた場合、実任務として、災害派遣を除けば非常に稀有な派遣であることがわかりました。
Oimg_4622 弾道ミサイルの沖縄県上空通過予告を受け、陸上自衛隊は田中防衛大臣によるミサイル破壊命令を発令すると共に陸上自衛隊は沖縄救援隊を編成、石垣島、宮古島、沖縄本島へ増援部隊を派遣した、という報道は繰り返し行われていますが、朝雲新聞による内訳では、石垣島へ450名、宮古島に200名、沖縄本島へ200名、与那国島へ50名の部隊を派遣していたとのことです。
Ofile0116 沖縄救援隊の任務は破片落下事案が発生した場合に、迅速な災害派遣任務への移行を行うことを主眼に実施したものとされますが、航空自衛隊のペトリオットミサイルPAC-3部隊が展開した石垣島新港地区では警戒に当たる高機動車が報道されており、実質的に航空自衛隊の警護任務も合わせて実施していたことは考えられるでしょう。
Oimg_2782 この中で、石垣島へ展開した450名は、派遣規模としてはかなりの規模ということが出来ます。例えば第四師団隷下にあり対馬の島嶼部警備を担う対馬警備隊は350名、本部中隊と普通科中隊に後方支援隊を併せて今回石垣島へ派遣された規模よりも少ない編制となっています。化学防護小隊が第八師団から派遣されていますが、規模としては80名とされ、施設科部隊や普通科部隊など、その他の部隊が比率として大きいことが見えてくるのではないでしょうか。
Mimg_6455 また、宮古島は航空自衛隊の第53警戒隊が運用するレーダーサイトが配置され、ペトリオットミサイルも今回この分屯基地に配置されたのですが、この宮古島へも一個普通科中隊に匹敵する200名が派遣されています。石垣島との規模の違いは、警戒隊に警備小隊があり、石垣島新港と異なりミサイルをゲリラコマンドーの攻撃から防護できる土盛や人員用掩体など基地施設があったことが背景にあると考えます。
Mimg_5956 派遣地域で最も特筆すべきは、与那国島へ50名の部隊が派遣されていることです。与那国島は日本列島の西端にあり、特に台湾との距離が近く飛行場を有することから台湾有事に際して、中国からの侵攻を受ける可能性があり、陸上自衛隊では沿岸監視隊の配置を準備している最前線です。ここへ迅速に部隊を配置できたということは、非常に大きな意味があるといえるやもしれません。
Oimg_2816 900名という規模。沖縄全域を防衛警備管区とする第15旅団の規模も2100名であり、第15旅団は沖縄県という在日米軍施設の集中を背景に独自の防空能力を持つ必要があり、此処で本来は方面隊直轄の高射部隊が運用する射程が比較的長い戦術防空用のホークミサイルを第6高射特科群として運用しているため、普通科や施設科部隊の規模は小さいという実情があり、この点は以前から課題であると一部識者からは指摘されていました。
Oimg_1049 第15旅団は、第1混成団を拡大改編し誕生した旅団ですが、普通科連隊は第51普通科連隊の一個のみとなっているのです。これは例えば第2混成団を改編して誕生した四国の第14旅団は普通科連隊二個を基幹とし、その他旅団も三個乃至四個の普通科連隊を基幹としているのに対し、一個普通科連隊だけを基幹としていること、規模が小さいということが端的に表れているわけです。
Oimg_1406 旅団普通科連隊は人員規模が師団普通科連隊よりも少なく、連隊本部と本部管理中隊に三個普通科中隊を基幹とした700名程度とされています。このため、今回派遣された900名規模の沖縄救援隊は、この旅団一個普通科連隊を大きく上回るものだといえるところ。
Oimg_5426 陸上自衛隊では南西諸島への緊張が切迫した場合に、このように緊急展開部隊を編成し投入するという姿勢はかねてより運用研究を重ね、協同転地演習などにより実動訓練も行ってきたのですが、ミサイル実験予告から僅かの期間にこれだけの規模の部隊を送り込んだということは、驚きの一言に尽きます。
Oimg_6019 特に沖縄本島では自衛隊の迎撃任務への反対機運が破壊命令発表からしばらくして街頭抗議などで表面化しましたが、対して領域での脅威を直接受けている島嶼部では配備は理解と賛同を得て進み、石垣島、宮古島、与那国島という特に防衛上の要衝となっている地域での配備が迅速に進められたということも特筆すべきでしょう。今回の事案、緊張に際して迅速に任務を遂行する能力の明示、我が国の抑止力が画餅や屏風ではないことを示した、一つの事例となるのでしょうね。

北大路機関:はるな

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任務完了!自衛隊沖縄救援部隊、北朝鮮弾道ミサイル危機収束に伴い撤収を開始

2012-04-16 23:14:58 | 防衛・安全保障

◆沖縄防衛の決意示した初の自衛隊緊急展開
 防衛省によれば、北朝鮮ミサイル危機の収束を受け沖縄へ展開した沖縄救援部隊の撤収開始が始まったとのことです。
Timg_8586 ミサイルは発射後一分少々で空中分解となりましたが、これにより幸いにして我が国への被害は生じませんでした。実験失敗は、北朝鮮では特にミサイル発射失敗との表現が用いられているとされ、人工衛星ではなくミサイルという認識が北朝鮮国内でも一部でなされている模様。恐らく今後も、一つの国威発揚としてミサイル開発と核開発は継続されるものとは考えられるため、十分な準備と即応体制は維持されなければなりません一方、我が国は対外的に断固迎撃するという強い姿勢を示しました。このことが非常に大きな実例と言えるのではないでしょうか。
Timg_2865 ミサイル発射実験は失敗に終わった翌日に当たる14日土曜日、田中防衛大臣はミサイル破壊命令の解除を発令、これを以て凡そ二週間に渡る沖縄県での緊張はひと段落した構図です。14日には西部方面隊第八師団より沖縄へ派遣されていた第八化学防護隊の隊員35名と車両18両が鹿児島行きの民間フェリーにより北熊本駐屯地へ撤退を開始。この部隊はミサイルの推進剤に記念な液体燃料ヒドラシンが用いられており、この燃料タンク部分が人口密集地域等に落下した場合に備えて展開していた部隊になります。今週末の日曜日に第八師団は創設50周年記念行事を迎えますが、第八化学防護隊は、課せられたその任務を完了させました。
Timg_6531_1 ペトリオットミサイルPAC-3,石垣島港湾部と宮古島のレーダーサイトへ展開、射程十数kmのミサイルですがミサイル本体に直撃し比較的航空で大型の目標を破砕し弾頭を無力化すると共に推進剤などの有害な物質を地上の影響が及ばない範囲内で拡散させる目的で展開しました部隊も撤収を開始です。石垣島より同日14日、航空自衛隊のミサイル部隊も撤収を開始し、警備任務に当たった80名が航空自衛隊輸送機により原隊である那覇基地へ撤収。ミサイル発射器なども19日までには撤収するとのことで、こちらは海上自衛隊輸送艦と民間車両運搬船が展開に協力していますので、恐らく撤収にも同様の手段が用いられるのでしょう。
Timg_3037 ミサイルの発射を感知できなかったことについて、政府部内では我が国も独自の弾道ミサイル早期警戒衛星を保有し、早期警戒情報を得る必要はあるのではないか、という見解が示されています。ここで考えておきたいのですが、今回のミサイルは高度120kmまで上昇したとのことで、地球の局面と朝鮮半島南部の地形障害を考えても、下甑島レーダーサイトなど航空自衛隊の警戒網では探知出来ていた、と考えることが出来ます。我が国へ飛来しなかったため継続追跡はできませんでしたが、目的は達することはできたのではないか、とも。
Timg_1283 早期警戒衛星は、特に我が国へ中国東北部に或る我が国を標的とする中距離弾道弾などへの警戒には必要なものと考えられます。しかし、北朝鮮の場合は早期警戒衛星の開発と実用化、それに運用に要する予算については、かなりの費用を要するものがありますので、第一にイージス艦の増強を行うことの方が重要でしょう。優先度は高いことは認めるのですが、北朝鮮からの弾道ミサイル情報についてはイージス艦の配備数に余裕を持たせることの方がより優先度は高いわけで、今回もイージス艦に余裕があったならば黄海洋上へ展開させ、米海軍や韓国海軍と共同し早期警戒情報を得ることはできたはずです。
Timg_9394 例えば、現在護衛艦隊には四個の護衛隊群が編制され、各護衛隊群は二個護衛隊編成、ミサイル防衛に当たるイージス艦を中心とした護衛隊、そしてヘリコプター搭載護衛艦を中心とし対潜掃討及び戦力投射任務にあたる護衛隊の二個を基幹としています。護衛艦隊にはこの護衛隊八個が置かれているのですが、八個を共通編制として、ヘリコプター搭載護衛艦とミサイル防衛対応イージス艦を有する艦隊編成としたならば、半数を稼働させる体制を確保していた場合でも四隻のイージス艦を任務に充て、朝鮮半島近海での警戒任務と共に人口密集地域での防空に充てることが出来ます。
Timg_6561 他方一部では、我が国においてJ-アラートシステムが用いられなかったことに対して批判があるようですが、飛来しないという情報はJアラートで通知するものではありません。これはミサイルの接近を警戒情報として通知するものですから、ミサイルが接近しない情報についてはJ-アラートを用いる必要はないわけです。具体的には緊急地震速報を思い浮かべるといいでしょう。緊急地震速報は携帯電話に通知し、テレビ放送などでも危険を通知する我が国の優れた危機管理情報通知システムですが、例えばインド洋上や南米に中央アジアといった地域の緊急地震速報が携帯電話で通知されたとしてどうでしょうか、ニュース速報の字幕で通知する必要はあり、ニュースでも扱われるべきですが、緊急地震速報が扱う内容ではないと批判されるでしょう、それと同じことです。
Timg_3673 さて、冒頭にも示しましたが今回の事案ですが、我が国は沖縄を護るという断固たる意思を示すことが出来たのは非常に大きな意義があります。弾道ミサイル脅威が沖縄に及ぶということは、文字通り当初は想定外という段階にあったのですが、我が国は本土から迅速に迎撃舞台と沖縄救援隊を編成し展開させました。南西諸島へは、特に沖縄本島那覇の真西に中国上海が位置し、海洋進出の足掛かりとして領土的野心を表面化させています。これに対し、有事の際には自衛隊を緊急展開させ、防備を一挙に強化する、という姿勢を示していましたが、実際に行ないえるのか、という疑問符が我が国の危機管理の限界として危惧があったのですけれども、今回実例を構築しました、大きな意義として、我が国は主権国家として責任ある姿勢を行動と共に示す、これを明示したことが大きいでしょう。

北大路機関:はるな

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第12旅団創設11周年記念行事・相馬原駐屯地祭(2012.04.14)

2012-04-15 22:10:27 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆雨天下の空中機動旅団記念行事

 榛名山霞み雨に曇る群馬県榛東村、昨日、第12旅団創設記念行事へ行ってまいりました。写真整理中ですが、取り敢えずの掲載です。

Simg_4015 第12旅団長塩崎敏譽陸将補が整列した隷下部隊を視閲。第2普通科連隊、第13普通科連隊、第30普通科連隊、第48普通科連隊、第12ヘリコプター隊、第12特科隊、第12高射特科中隊、第12偵察隊、第12施設中隊、第12通信中隊、第12後方支援隊、第12音楽隊が整列しています。

Simg_4036 塩崎旅団長の訓示とともに大澤正明群馬県知事の祝辞も。北関東信越地区を警備管区にもつ旅団としての期待を交え挨拶、大澤知事は海上自衛隊幹部候補学校を卒業、任官はしていませんが候補生ですので元海曹長ということになります。式典は残念なことに雨天という環境にありました。当方は雨衣を着用、周りには傘が朝顔の如くという状態ですが式典参加部隊はそうはいきません。

Simg_6182 観閲行進。第12旅団は、冷戦時代において第12師団として、新潟から北関東へソ連軍の限定侵攻に警戒する位置にあり、この地域へ着上陸を受ければ日本海沿岸地区は山間部と海岸線が隣り合う増援を受けにくい地域にあり、関越道を抜けられたならば首都東京への進入を許すという防衛上の要衝の一つでした。しかし、冷戦終結後、装備を軽量化し迅速な展開を行う空中機動重視編成に改編されました。

Simg_6192 軽装甲機動車。なかなか第12旅団へ配備は実現しませんでしたが、ようやく少数が全ての連隊へ配備です。冷戦終結後、第12師団は、首都圏への迅速な増援を行いつつ全国への緊急展開を可能とするべく戦車大隊を廃止、多用途ヘリコプターや輸送ヘリコプターを配備するヘリコプター隊を新編し、空中機動旅団とする改編を行いました。しかし、輸送ヘリコプターは6機程度、多用途ヘリコプターも数は少なく、実質的には信越地区という山間部における機動力向上という位置づけに終わっています。

Simg_6376 第12対戦車隊。師団直轄の対戦車部隊は、師団普通科連隊への対戦車中隊新編が一部で行われ、普通科中隊対戦車小隊の対戦車ミサイル強化により、方面隊へ転換か廃止されているのですが空中機動旅団として対戦車能力の被空輸能力の高さを考え、対戦車隊は維持されているようです。車両が73式小型トラックから新型になっていました。

Simg_6897 第12ヘリコプター隊は8機を以て祝賀飛行を行う予定でしたが、陸上自衛隊が定めた機種ごとの運用基準以上の視界不良があり、ホバーリング展示のみでした。しかし、東千歳駐屯地第7師団創設51周年記念行事では雹が降る、より強い降雨と強風下でUH-1とOH-6が模擬戦に参加したのを思い出しました。規定があるのは致し方ないですが、明野駐屯地のように滑走路上を地上滑走して一列に並んでほしかったですね。

Simg_6527 訓練展示模擬戦は、空中機動が行えないため中止、第12偵察隊のオートバイ機動展示と第12特科隊の音楽演奏空包射撃展示が行われたのみ。立体模擬戦は楽しみにしていた、というのが来場者のほぼ一致した思いだったでしょう。安全要員は天候回復に備え、訓練展示へ準備足していたようなのですが。

Simg_6789 CH-47JA輸送ヘリコプター。側面は特別塗装、創設三周年頃に整備班長さんがひとつ特別塗装をやってやろう、ということで徹夜作業で仕上げたのが始まりなのだとか。第12旅団は東日本大震災では管区の第6師団を支え福島県への災害派遣を担当、新潟中越地震での派遣の経験を様々なところで活かした、とのことで、いろいろと貴重なお話を聞くことが出来、そちらが興味深い一日でした。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十四年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.04.14・15)

2012-04-14 00:01:11 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 北朝鮮弾道ミサイル事案があり、掲載予定が変更、零時を過ぎ土曜日と日が替わりましたが、今週末の行事について。

Img_17_14 今週末は、まず本日、第12旅団創設記念行事が相馬原駐屯地において行われます。群馬県の空中機動旅団として第12師団を改編し誕生した部隊ですが、全国への緊急展開を掲げつつ、実質的には山間部における空中機動を重視した運用となった部隊で、昨年は旅団改編10周年でしたが、東日本大震災により中止となった行事です。

Img_0329 東北方面航空隊が置かれている仙台市の霞目駐屯地でも駐屯地祭が行われます。毎年東北方面隊創設記念行事が飛行場地区において行われていますが、方面隊行事とは異なる東北方面航空隊の行事で、東日本大震災において津波被害を免れた内陸部の飛行場として最大の救助拠点となりました。

Img_6006 同じく宮城県、船岡駐屯地では第二施設団創設記念行事が行われます。第二施設団は第10施設群、第11施設群、第104施設器材隊、第312ダンプ中隊より成り、特に陸上自衛隊が創設以来重視してきた架橋装備は、東日本大震災においても破損した橋梁の応急復旧に大活躍したことはご記憶の方も多いのではないでしょうか。

Img_0435 郡山駐屯地祭、第6特科連隊、第6高射特科大隊が駐屯している福島県の駐屯地です。福島県でも郡山は内陸部に位置し、福島第一原子力発電所へのモニタリングポイントとして原子力災害発生後は重要な位置づけにありました。また多数の輸送車両を有する特科部隊が災害派遣にも大きな能力を発揮したことは言うまでもありません。

Img_9539 第34普通科連隊が駐屯する静岡県板妻駐屯地、創設50周年を迎えます。富士演習場に近いことから訓練環境に恵まれ、戦車部隊や特科部隊が駒門と北富士と近傍にあることから野戦部隊としての能力を高める環境にあります。駒門駐屯地と同じ御殿場線沿線ですが、鉄道駅からはかなり距離があるので注意が必要でしょう。2200時追記:静岡地本によれば板妻駐屯地祭は6月3日と記載がありました。ご注意ください。

Img_2836 吉井分屯地創設記念行事、第12旅団HPに実施が記載されていました。第12旅団司令部からほど近い、群馬県高崎市にあります。先週駐屯地祭が行われた新町駐屯地の分屯地で関東補給処吉井弾薬支処があります。弾薬庫での行事ですので、内容は未知数ですが、式典や装備品紹介などが行われるのでしょうか。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

2200時追記:板妻駐屯地祭の6月3日への延期・・・http://www.mod.go.jp/pco/sizuoka/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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北朝鮮弾道ミサイル発射 ブースタ切り離し失敗し韓国沿岸に落下

2012-04-13 12:53:03 | 防衛・安全保障

◆迎撃態勢移行も我が国への影響無し

 本日0738時、北朝鮮は弾道ミサイルを発射しましたが、多段式ブースタ第一段の切り離しに失敗し、81秒後上空120km、韓国沿岸150km沖に十個程度に分裂、落下したとのことです。

Nimg_2849 ミサイル実験。韓国国防省は0739時に発射を感知、米軍の宇宙からの弾道弾監視にあたるDSP衛星も感知し0740時、政府及び自衛隊へ通知されました。この通知を受け、NHK等の報道では沖縄に展開するペトリオットミサイル部隊では信号弾の発射とミサイル警報が発令され、ミサイル発射装置付近を警備に当たっていた要員が発射時の後方爆風を警戒し退避したとされ、準備態勢に入っていたことがわかるでしょう。

Nimg_1403 海上自衛隊の弾道ミサイル警戒部隊、および航空自衛隊のレーダー警戒網は、今回のミサイル上昇を確認することはなく、米軍のDSP衛星も発射の赤外線は感知したものの上昇は確認出来なかったと発表しています。これは海上自衛隊のイージス艦が落下が想定される海域において我が国領域への落下情報を警戒し、東シナ海南西諸島近海に展開していたため。

Img_1927 上昇を感知するためには韓国海軍が展開する黄海へ進出しなければならなかったためです。この点情報収集ではなく警戒を重視していたということがわかります。今後赤外線検知装置を搭載した空中弾道ミサイル警戒機が実用化されたならば、この状況は変わってくるかもしれません。

Img_6654p 他方で、我が国の警戒情報通知ですが、弾道ミサイル飛来情報を通知するJアラートは今回使用されず、発射情報のみ報道される一方でJアラートが情報を発信しないため沖縄県の自治体などで混乱があったようです。これが、弾道ミサイルの飛来を通知するのがJアラートであり、発射失敗を通知する機能が無いためで、政府の自治体への緊急情報伝達を行うEm-Netを用いて0803に通知されたようです。

Nimg_3402 沖縄県など自治体は大きく混乱しました。この混乱は、同時に米軍DSP衛星からの情報通知を受け、自衛隊が発射をイージス艦やレーダーサイトにより把握したうえで通知を行うとしたもので、自衛隊のレーダーやイージス艦から探知できない遠距離で落下したため、このような状態となりました。

Nimg_4890 課題として、今回のように北朝鮮の弾道ミサイルが発射直後に落下、もしくは発射場で爆発事故があった場合、警戒情報だけではなく、安全確認を通知する体制や、文字通り発射直後に爆発した、という想定外を通知する体制を確立しなければならないでしょう。

Nimg_6287 防衛省では現在も警戒態勢が継続されています。ペトリオットミサイルPAC-3について、1250時頃には発射筒装置を上空から水平状態へ戻すと共に射撃姿勢を解除している様子が報道されていますが、ミサイル破壊措置命令は継続しているとのこと。

Nimg_3991 米海軍と韓国海軍では、韓国沿岸150kmの黄海海上に落下したことから、ミサイル本体の回収を検討しているとされます。当該海域は水深が比較的浅いこともあり、回収が実現すれば最大の技術情報が得られることとなるでしょうが、他方で北朝鮮が哨戒艇や潜水艦などにより妨害を行う懸念も考えられるでしょう。

Nimg_0568 海上自衛隊護衛艦への中国航空機の異常接近事案が発生しています。これは長崎新聞が報じたもので、12日1210時頃、東シナ海日中中間線付近を警戒中の護衛艦あさゆき、に対し中国国家海洋局の固定翼機が50mまで接近、飛び去ったとのことです。通常の警戒任務にあたっていた護衛艦への異常接近ではあるのですが、時期的にこの海域の緊張が高まっているさなかの出来事でした。

Nimg_0560 今後は、長距離弾道ミサイルの備蓄が無いため、中距離弾道弾であるノドンの実験を行う可能性、また核実験の準備が進められているとの衛星画像情報の解析もあり警戒が必要です。特に北朝鮮が発射実験の失敗を他国が電子妨害を行ったなど責任転嫁を行う可能性も捨てきれないでしょう。

Img_3136 緊張は継続しており、野田首相は臨時の安全保障会議を開き、日本独自の経済制裁強化を検討しており、強制力を持つ安保理決議により北朝鮮はミサイル実験そのものが禁止されていることもあり、日本時間で今夜にも国連安全保障理事会が開かれるようです。

北大路機関:はるな

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北朝鮮弾道ミサイルの脅威度 推進剤は液体燃料方式を採用

2012-04-12 23:34:08 | 防衛・安全保障
◆北朝鮮、即応性高い固体燃料技術は未完成?
 本日の発射は見送られた北朝鮮弾道ミサイル。北朝鮮の弾道ミサイルについて、燃料注入が行われている、と報じられたのは昨日ですが、素朴な疑問を思い出しました。固体燃料ロケットブースタの実用化はできていなかったのか。
Mimg_9501 我が国ではM-5ロケットなどが固体燃料方式を採用しています。発射直前に燃料注入を行う必要が無く、特に商用人工衛星打ち上げ事業への本格参入を念頭に、大量生産し取得費用を低減させると共に迅速な打ち上げ需要に対応するべく備蓄することが出来る、こうした利点があるためです。全長30.8mの三段式固体燃料ロケット方式を採用し、軌道投入能力、即ち積載量は1.85t。現時点では固体燃料方式を採用する世界最大のロケットとなっているもの。加えて来年以降をめどに後継となるイプシロンロケットが、やはり固体燃料方式として開発が進められているのですが、北朝鮮の弾道弾は液体燃料方式を採用しています。
Bimg_2040 SM-3迎撃ミサイルの先端に搭載されているキネティック弾頭。宇宙空間で弾道ミサイルを姿勢制御しつつ進路上に待ち伏せ、目標が自ら衝突することで自壊させます。さて、弾道ミサイルの燃料である推進剤ヒドラシンが有毒物質であることから、今回の発射実験へは、弾頭がHEではなく人工衛星であったとしても不安は残るのだ、と記載している一方、実は重要な部分、北朝鮮の弾道ミサイル技術に関する忘れてはならない部分を見落としていました。それは、燃料が注入されている、と報じられた時点で、実のところ北朝鮮が保有している可能性が囁かれていた固体燃料による弾道ミサイル推進剤の実用化は、未だ、という事実が隠れていたのではないか、と。
Bimg_2120 固体燃料と液体燃料。重要な点は固体燃料であれば発射可能な状態のまま長期保存が可能で、コンテナ化すれば機動展開も可能です。基本的に自衛隊が運用する対空誘導弾、対艦誘導弾は全て固体燃料となっています。液体燃料は、ミサイル草創期のものであれば超低温でなければ保存できないという難点、現在でも発車直前に装填しなければならない難点があり、即応性に欠けています。推進剤としては特性から高出力を容易に得られるという固体燃料以上の利点があるのですが、安全性、特に漏出する危険性は捨てきれず、例えば米海軍などは水上戦闘艦及び潜水艦への誘導弾推進剤としての液体燃料の搭載を禁止しているほど。もっともSM-3の推進剤に検討はされているようですけれども。
Bimg_2098 中国が我が国を狙うDF-21弾道ミサイルは固体燃料方式を採用しており、移動式発射装置により航空攻撃や特殊部隊の攻撃を避けるべく戦術機動を行い、発射準備には10分程度で射撃に入ることが可能とされています。対して、ノドンミサイル、北朝鮮の射程として1300km程度と我が国を射程に置く弾道ミサイルは液体燃料方式を採用、燃料のヒドラシンは腐食性があり、充てんした場合数日以内に発射しなければ隔壁部分が腐食により使用不能となる危険があり、北朝鮮はノドンミサイル300発程度、最大で350発程度を準備し対日用に準備しているとのことですが、液体燃料であることから発射準備に時間を要するという問題点があるわけです。仮に無人偵察機、RQ-4であれば150km程度先の目標を合成開口レーダーや光学装置により補足することが可能で、発射準備に時間を要している場合、有事であれば格好の攻撃目標となるでしょう。
Bimg_1914 即ち、液体燃料方式の弾道ミサイル化、固体燃料方式の弾道ミサイルか、それが我が国への脅威度、これを払拭するために考えられる障壁の高さを左右するわけです。ここで弾道ミサイル技術開発における北朝鮮との連携を一つ上げてみましょう。2009年12月16日、イランは新型中距離弾道弾セッジール2の発射実験を実施、射程は2000kmに達する性能を有するとされ、欧州地域を射程内に収める弾道弾脅威が改めて認識され、米軍による東欧地域への弾道ミサイル防衛システムの配備が促進、結果、ロシアとアメリカとの間で東欧地域へのミサイル防衛網配備の可否に深刻な国家間対立を引き起こしたこと、ご記憶の方はいらっしゃるでしょうか。
Mimg_9497 セッジール2ですが、このミサイルには二段式の固体燃料方式ロケットブースタが装着されており、液体燃料方式よりも発射兆候を秘匿しやすいため発射以前い航空攻撃などで無力化される危険性が低い特性が指摘されています。このイラン製セッジール2ミサイルは、同時にイランが北朝鮮やパキスタンと共に国家間の弾道ミサイル共同開発連携に依拠してミサイル開発が行われている、という一つの事実を包含すれば、実のところ非常に脅威をはらんでいるもの、と言えるかもしれません。 事実、イラン製弾道弾シャハブ3はノドンミサイルの改良型であるとされていて、シャハブ5などは、二段式ロケットロケットブースタのうち、第二段部分の液体燃料ブースタ部分に北朝鮮の技術協力があるとされ、加えて第一段の固体燃料ブースタ部分をロシアの技術協力によりRD-216エンジン、このRD-216エンジンは旧ソ連が1960年代にR-14弾道ミサイルや、この派生型である人工衛星打ち上げ用のコスモス3などに搭載するべく開発したものです。参考までにコスモス3ロケットの搭載能力は1.4t、1968年までに6回中4回の衛星軌道投入に成功したロケットです。

Bimg_1958 また、パキスタンの弾道ミサイルガウリも北朝鮮のノドンミサイルの派生型とされ、外見的特徴はノドンミサイルとガウリミサイルでほぼ一致することが知られています。もっとも、ノドンミサイルは旧ソ連が1950年代に開発した戦術弾道ミサイルスカッドの改良型で、スカッドミサイルと呼称されるこのミサイルは多連装ロケットや長射程のカノン砲射程外にある敵後方策源地を叩くものであったのですが。誤解を恐れずに記載すれば陸上自衛隊が運用する多連装ロケットシステムMLRSの長射程型ATACMSと共通する部分があるかもしれません。
Bimg_1915 以上の通り、固体燃料方式のミサイルを、北朝鮮とミサイル開発における連携を行う国の一部では弾道ミサイルに実用化しており、今回の北朝鮮が準備を行っている弾道ミサイルについても、一応固体燃料方式のミサイルである可能性、即応性に優れたものであった可能性はあったわけです。武器の供給は、我が国のように明確に公開され為されているものだけではありません。特に2009年12月11日に北朝鮮からイランへ向かう輸送機がタイのバンコックでタイ当局の査察対象となり、イラン向け石油掘削装置という名目に対し、機内からは大口径ロケット砲とロケット弾、地対空ミサイルなどが搭載されていたため、タイ当局が国連安保理決議に基づく武器輸出禁止措置への違反と判断し、緊急に接収する事案がありました。こうした武器のやり取りがあったならば、固体燃料方式の弾道弾技術も非公式に共有されている可能性はあるのではないか、こうした懸念はある意味説得力があるでしょう。しかし、少なくとも払拭された可能性は今回あるわけです。もちろん、北朝鮮側が燃料は発射器基部から迅速に供給される構造、としているのですが、推進方式そのものに欺瞞情報を交えている可能性も否定はできないのですが。
北大路機関:はるな

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列島防空体制固まる 北朝鮮弾道ミサイル事案、明日から発射予告期間へ

2012-04-11 23:56:21 | 防衛・安全保障

◆4月12日から五日間以内に発射を予告

 明日から北朝鮮が発表した弾道ミサイル実験実施期間に入りますが、防衛省自衛隊はミサイル破壊命令を受け、先週までに部隊の展開を完了しました。

Mimg_6844_2 ミサイル発射の期間は12日から五日間。自衛隊は警戒を強めねばなりません。北朝鮮北西部東倉里では燃料注入を開始しており、すでに完了したとの報道もあります。発射場発射実験と天候ですが、偵察衛星や早期警戒に当たるDSP衛星から一瞬でも欺瞞を期して曇天時に発射を行う可能性は充分あるからです。

Mimg_2708 海上自衛隊は日本領域へ落下する場合に際しては、最初の防衛を受け持ちます。イージス艦こんごう、きりしま、ちょうかい、の三隻は射程1000kmを超えるスタンダードSM-3を搭載し、東シナ海へ展開、発表こそされていませんが、全てのイージス艦にはイージス艦のSPY-1レーダーが上空へ集中する期間の防空能力補完へ護衛艦が直衛についていることでしょう。

Dimg_0709 また、これは推測ですが海上自衛隊は電子情報収集機EP-3を洋上へ進出させ、公海上から通信量や電子情報等を通じた発射兆候の警戒に当たっていることが考えられますし、通常のP-3C哨戒機も通常の哨戒飛行を強化するという形で警戒任務に当たっていることが考えられます。

Img_4967 護衛艦の哨戒も強化されているでしょう。1993年のノドンミサイル発射実験では、日本海中央部まで北朝鮮海軍のラジン級フリゲイトの進出がP-3C哨戒機により確認され、実験の評価試験を実施したと推測されました。外電が伝えるところではミゼットサブであるサンオ級潜水艦数隻が日本海側の基地を出港しているという情報もあり、海上警備行動へ発展する可能性も否定できません。

Mimg_92381 このほか、2009年のミサイル実験では、期間中に舞鶴基地が一般公開されていたため足を運んだところ、護衛艦と掃海艇が緊急出港準備を行っていました。特に落下物が確認された場合には回収を行うべく、今回も近海への落下に備え、勝連基地や佐世保基地では掃海艇が待機しているでしょう。

Mimg_5643 航空自衛隊は、日本領域へ落下する弾道弾を防護する第二の、そして最後の盾となります。沖縄本島の二か所、石垣島、宮古島へペトリオットミサイルPAC-3を展開させました。射程は13~15km程度、本来は米陸軍が実戦配備を開始したより長射程200kmのTHAADを配備が望ましいのですが。

Mimg_4334 加えて首都圏でも防衛省市ヶ谷に展開し、万一弾道弾が首都圏を狙った場合に備えています。イージス艦は少なくとも海上自衛隊のものは全て南西諸島警戒に当たっており、首都圏唯一の防備ということに。PAC-3は現時点で有する最良の装備を展開させています。これまで模擬弾は数多く一般公開されていますが、今回は当然実弾です。

Mimg_6630 このほか、F-15戦闘機がイージス艦上空へ国籍不明機の接近に備え戦闘空中哨戒の実施を行うとされています。実質数日間にわたる戦闘空中哨戒の実施となりますが、此処まで長期間の実任務での戦闘空中哨戒は1976年のMiG-25函館亡命事件に際しての北海道上空F-4EJ戦闘空中哨戒任務以来の事でしょうか。

Mimg_5084 陸上自衛隊は沖縄救援隊を編成、九州及び本州から展開しました。CH-47JA輸送ヘリコプターとともに化学防護車を展開、沖縄救援隊は、第一に弾道ミサイル落下に際して住民被害が出た場合の迅速な救命救助任務、第二に展開した航空自衛隊ミサイル部隊の警備任務にあたります。

Mimg_1373 こちらも実弾が携行され、任務にあたっており、一部報道では実弾携行ではなく実弾装填という報道も。混同しているのかもしれませんが後者であれば国内では初ということになります。ペトリオット部隊近くにCH-47が待機し、周辺を高機動車が警戒している様子が報じられているのをご覧の方も多いのではないでしょうか。

Mimg_6788 沖縄県警も燃料ヒドラシンの散布を警戒し、化学剤テロを想定し装備している化学防護器材を準備し、自衛隊と共に落下時には協同し任務に当たるとのことで、消防吏員とも連携を取ることが当然考えられるでしょう。また、海上保安庁も航路警戒情報を発令し、特に落下地域付近海域を航行する船舶へ注意を呼び掛けているところ。

Img_7184 理論論議に必要な予備知識として、重要なことですが、弾道ミサイル技術と人工衛星発射技術は、特にロケットモータ技術と誘導技術においてほぼ合致するもので、初期の人工衛星打ち上げには弾道ミサイル技術、場合によっては本体そのものが流用されていた、ということを覚えておかねばなりません。これは日本のように平和目的での開発に特化し、国是として長距離弾道弾の保有を禁止し、実績を重ねていなければ致し方ないということ。

Mimg_3839 1998年のミサイル試験では東北地方上空を飛翔し太平洋に落下、海上自衛隊のイージス艦みょうこう、がイージス艦として世界で初めて弾道弾探知に成功した事案でしたが、北朝鮮では人工衛星打ち上げを口実としています。しかし、2006年と2009年の試験では明確に弾道弾試験であることを明示、そして今回打ち上げられる飛翔体については、安定翼等に解消は施されているものの前回の弾道弾と形状が共通していますので、少なくとも弾道ミサイル技術開発と言わざるを得ません。

Mimg_8823 さて、日本国内へ、今回の試験では北朝鮮を発射し、朝鮮半島南部を飛翔したのち黄海洋上へ進出し、燃料を搭載した第一段を切りは無し。その後沖縄県島嶼部上空を通過し、第二段をフィリピン近海へ落下させる航路を飛翔する、これが北朝鮮の発表している航路です。2006年の実験では発射後42秒で空中分解し日本海中央部に落下しました。

Img_2008 この事案、更に数分空中分解が遅れていれば北海道から東北地方へ空中分解した数十tの本体が落下する可能性がありました。今回懸念されているのはまさにこの点で、切り離された燃料タンク部分が落下する可能性に加え、第二段ロケット切り離しの段階で空中分解を起こした場合には我が国領域内へ落下する可能性が生じ、その際に燃料として用いている推進剤ヒドラシンが有毒物質であるため、イージス艦により高高度で破壊し、地上へ飛散する以前に高高度の大気中で拡散させてしまう、ということが目的です。

Mimg_1192 三沢基地には米軍の電子偵察機RC-135などが既に展開、嘉手納基地にも高高度監視機G-1159 HELOが展開、P-3C派生型の観測航空機も展開しているとのことですし、ミサイル巡洋艦シャイローなど日本に前方展開しているミサイル防衛対応イージス艦に加え、中距離弾道弾迎撃試験での実績をもつミサイル駆逐艦オカーンも展開、日米は一体となり対応しています。

Img_8956 嘉手納基地へ展開しているペトリオット防空砲兵大隊のPAC-3運用部隊は現段階で基地防空任務に就いているとみられ、航空自衛隊の那覇基地へ展開するPAC-3部隊の射程外となる沖縄本島中央部の防衛に寄与するものと考えられます。もっとも、具体的な指揮系統の協同への日米両政府からの明示はされていないのですけれども。

Img_5673 弾道ミサイルの迎撃は技術的に困難を伴うことなのですが、しかし、弾道ミサイル防衛の必要性を確認してより我が国でもすでに十年以上を経ており、その間の技術開発は進みました。今回落下が懸念される沖縄地域へは中距離弾道弾射程に相当し、t落下速度が大きくなるため難易度はさらに高くなることは、否定しません。

Img_7166a しかし、発射位置が定まっており、経路も明示されています。突如異なる経路に変更し運用され、対応するまでにミサイル防衛の技術は対応していませんが、発射位置と経路が定まっている、そして基本的に日本領域への着弾が目的としていない状況では、不測の事態へ備え、できることは全て行っている、ということだけが言えるのでしょう。

北大路機関:はるな

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