北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮弾道ミサイル発射 ブースタ切り離し失敗し韓国沿岸に落下

2012-04-13 12:53:03 | 防衛・安全保障

◆迎撃態勢移行も我が国への影響無し

 本日0738時、北朝鮮は弾道ミサイルを発射しましたが、多段式ブースタ第一段の切り離しに失敗し、81秒後上空120km、韓国沿岸150km沖に十個程度に分裂、落下したとのことです。

Nimg_2849 ミサイル実験。韓国国防省は0739時に発射を感知、米軍の宇宙からの弾道弾監視にあたるDSP衛星も感知し0740時、政府及び自衛隊へ通知されました。この通知を受け、NHK等の報道では沖縄に展開するペトリオットミサイル部隊では信号弾の発射とミサイル警報が発令され、ミサイル発射装置付近を警備に当たっていた要員が発射時の後方爆風を警戒し退避したとされ、準備態勢に入っていたことがわかるでしょう。

Nimg_1403 海上自衛隊の弾道ミサイル警戒部隊、および航空自衛隊のレーダー警戒網は、今回のミサイル上昇を確認することはなく、米軍のDSP衛星も発射の赤外線は感知したものの上昇は確認出来なかったと発表しています。これは海上自衛隊のイージス艦が落下が想定される海域において我が国領域への落下情報を警戒し、東シナ海南西諸島近海に展開していたため。

Img_1927 上昇を感知するためには韓国海軍が展開する黄海へ進出しなければならなかったためです。この点情報収集ではなく警戒を重視していたということがわかります。今後赤外線検知装置を搭載した空中弾道ミサイル警戒機が実用化されたならば、この状況は変わってくるかもしれません。

Img_6654p 他方で、我が国の警戒情報通知ですが、弾道ミサイル飛来情報を通知するJアラートは今回使用されず、発射情報のみ報道される一方でJアラートが情報を発信しないため沖縄県の自治体などで混乱があったようです。これが、弾道ミサイルの飛来を通知するのがJアラートであり、発射失敗を通知する機能が無いためで、政府の自治体への緊急情報伝達を行うEm-Netを用いて0803に通知されたようです。

Nimg_3402 沖縄県など自治体は大きく混乱しました。この混乱は、同時に米軍DSP衛星からの情報通知を受け、自衛隊が発射をイージス艦やレーダーサイトにより把握したうえで通知を行うとしたもので、自衛隊のレーダーやイージス艦から探知できない遠距離で落下したため、このような状態となりました。

Nimg_4890 課題として、今回のように北朝鮮の弾道ミサイルが発射直後に落下、もしくは発射場で爆発事故があった場合、警戒情報だけではなく、安全確認を通知する体制や、文字通り発射直後に爆発した、という想定外を通知する体制を確立しなければならないでしょう。

Nimg_6287 防衛省では現在も警戒態勢が継続されています。ペトリオットミサイルPAC-3について、1250時頃には発射筒装置を上空から水平状態へ戻すと共に射撃姿勢を解除している様子が報道されていますが、ミサイル破壊措置命令は継続しているとのこと。

Nimg_3991 米海軍と韓国海軍では、韓国沿岸150kmの黄海海上に落下したことから、ミサイル本体の回収を検討しているとされます。当該海域は水深が比較的浅いこともあり、回収が実現すれば最大の技術情報が得られることとなるでしょうが、他方で北朝鮮が哨戒艇や潜水艦などにより妨害を行う懸念も考えられるでしょう。

Nimg_0568 海上自衛隊護衛艦への中国航空機の異常接近事案が発生しています。これは長崎新聞が報じたもので、12日1210時頃、東シナ海日中中間線付近を警戒中の護衛艦あさゆき、に対し中国国家海洋局の固定翼機が50mまで接近、飛び去ったとのことです。通常の警戒任務にあたっていた護衛艦への異常接近ではあるのですが、時期的にこの海域の緊張が高まっているさなかの出来事でした。

Nimg_0560 今後は、長距離弾道ミサイルの備蓄が無いため、中距離弾道弾であるノドンの実験を行う可能性、また核実験の準備が進められているとの衛星画像情報の解析もあり警戒が必要です。特に北朝鮮が発射実験の失敗を他国が電子妨害を行ったなど責任転嫁を行う可能性も捨てきれないでしょう。

Img_3136 緊張は継続しており、野田首相は臨時の安全保障会議を開き、日本独自の経済制裁強化を検討しており、強制力を持つ安保理決議により北朝鮮はミサイル実験そのものが禁止されていることもあり、日本時間で今夜にも国連安全保障理事会が開かれるようです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする