北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮弾道ミサイル危機 自衛隊法95条初適用、イージス艦・ペトリオットPAC-3部隊警護

2012-04-03 23:15:48 | 防衛・安全保障

◆自衛隊法95条:武器等防護のための武器使用

 本日大荒れの天候、京都の二条城からNHKが捉えた豪雨の幕が迫り来る映像は正直凄かったです。

Pimg_2816 こうした西日本、東日本の記録的な悪天候とこれに伴う交通の混乱や事故に対して、日曜日に名古屋港を出港した輸送船、呉基地を出港した輸送艦、そして横須賀基地を出港したイージス艦は、それぞれ悪天候に巻き込まれることもなく、予定通り沖縄県内や九州佐世保基地へ入港したとのこと。

Pimg_4195 ペトリオットミサイルPAC-3は、映像を見る限り、展開に輸送艦おおすみ、くにさき、の二隻が参加したようで、他方名古屋港からは自動車運搬船のような船舶が輸送に運用、埠頭にはペトリオットミサイル部隊が並び、ほんの二週間前では考えられない南西諸島の防備が固まったところ。

Pimg_7205 同時に航空自衛隊のC-130輸送機による輸送支援を受け、陸上自衛隊沖縄救援隊が沖縄に順次到着、今後はヘリコプター部隊の展開も実施されるとのことで、明確にペトリオットミサイル部隊の警護と沖縄県内に万一弾道弾が落下した場合への住民救援体制を固めるとのことで、人員は450名が展開、旅団連隊規模の部隊が展開ということになります。

Pimg_9247 さて、今回の自衛隊沖縄緊急展開ですが、自衛隊法95条が初めて適用されることとなりました。これは自衛隊の装備する武器などが奪取乃至破壊される危険へ直面した場合、その行動を阻止するために武器を使用することができるという規定、要するにペトリオットミサイルやイージス艦をゲリラコマンドーや航空機が攻撃しようとした場合、排除行動をとれるということと理解してください。

Pimg_9648_1 ペトリオットミサイルを運用する高射隊は、自隊防護へ64式小銃や9mm拳銃などを装備はしているのですが、近接戦闘訓練を近年実施するようにはなっているのですけれども、やはり限界はあり、そして残念ながら航空自衛隊には部隊警備へ、特にゲリラコマンドーによる攻撃を封じるだけの人員が十分ではありません。

Pimg_2350 ミサイル部隊は、航空攻撃から部隊を防護するため、どうしても広範囲に分散し、発射装置やレーダ装置、管制装置と電源車、通信中継車などを展開させる必要があり、ペトリオットシステムはその運用だけならば2名の人員でも可能というほど自動化は進められつつも、これを防護するには多くの部隊の支援が必要となるわけ。

Img_8024 こうした任務へ、重要施設警備訓練などを行い、そして早い時期からレンジャー訓練として襲撃の研究を行っている陸上自衛隊には攻撃側の視点を理解しているため防護を行うことにも専門性を発揮でき、万一のゲリラコマンドー攻撃に対処、この姿勢を示すことで相手の選択肢を抑止することも出来るのです。

Pimg_2634 また併せて、航空自衛隊はF-15飛行隊を以てイージス艦上空に常時二機のF-15戦闘機を待機させ、戦闘空中哨戒、いわゆるCAPを行うこととしました。イージス艦は防空能力に優れたSPY-1レーダーを搭載していますが、今回は通常の周辺索敵範囲以遠の目標を警戒するため上空一方向に集中するとされ、システム上は同時に個艦防護を十分に行えることとなるのですが補完を行うという目的で行われるもよう。

Pimg_8785 これは、イージス艦に対し北朝鮮空軍の航空機では戦闘行動半径の圏外に展開することとなっているのですが、中国空軍やロシア空軍の偵察、つまりイージス艦が弾道弾警戒を行うレーダーの電子戦情報を収集する目的で電子偵察機などが接近する可能性があるわけです。

Img_0057_1 特に2009年の北朝鮮弾道弾実験のさいでは実際に生起していることから、偵察機の接近という可能性非常に高く、これを排除する目的のようです。このほか、E-2C早期警戒機の前方展開や浜松基地からE-767早期警戒管制機の九州南部への進出による空中警戒体制の強化なども考えられるでしょう。空中給油輸送機の展開も、あり得るのでしょうか。

Pimg_1403 いうまでもなく、沖縄周辺海域には海上自衛隊が護衛艦による哨戒網を構築していますし、那覇航空基地からは哨戒機が恒常的に対潜哨戒にあたります。更に直衛艦が配置されることも考えられ、このため、イージス艦へは幾重にも展開する海上と航空、そしておそらく潜水艦による海中からの防護が張り巡らされているのでしょう。

Img_8143 特にイージス艦から運用されるスタンダードSM-3は放物線を描く弾道ミサイルの頂点付近での迎撃を行う運用から射程が大きく、我が国領海内ではなく、我が国排他的経済水域での迎撃任務に当たることから、潜水艦による情報収集の対象となることも忘れてはならず、この観点から海上自衛隊の潜水艦が先行して警戒に当たっていることも考えられるでしょう。

Img_3305 報道では那覇基地の第83航空隊へF-15の増強が行われる旨の報道もありますが、同時に潜水艦への警戒から那覇航空基地へ鹿屋航空基地など全国の基地よりP-3C哨戒機が増勢される可能性もあるということになり、一時的とはいえ南西諸島の防壁は相当規模になるわけですね。

Pimg_5290 防衛省では、特に陸上自衛隊の南西諸島防衛に関する計画として常時部隊を張り付けるのではなく、緊急展開能力を重視し、有事の際などに緊張が高まった時点で緊急展開部隊を送り、抑止力を発揮することが想定されてきました、今回は想定された脅威が島嶼部侵攻ではなく弾道ミサイル脅威でしたが、この施策が試されることとなるのでしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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