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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦あけぼの弾道ミサイル攻撃事案【2】フーシ派ミサイル攻撃相次ぎ公海上でノルウェータンカーに命中

2023-12-14 20:15:04 | 国際・政治
■バベルマンデブ海峡危機
 フーシ派による日本護衛艦へ向けてのミサイル発射に際し未だに釈明も謝罪もありません。

 ソマリア沖海賊対処任務、海上自衛隊は現在、護衛艦あけぼの、P-3C哨戒機1機を派遣、P-3Cは海上自衛隊ジブチ航空拠点を中心に活動し世界各国の有志連合とともに海賊を警戒しています。今回ミサイル攻撃を受けたのはこの海賊対処任務において、タンカーが海賊の襲撃を受け、護衛艦が情報収集にあたったさいのことで、被害が無いのは幸いでしたが。

 あけぼの付近へ弾道ミサイルが着弾した事案では、11月28日、酒井海上幕僚長の定例記者会見において、落下した海域は護衛艦から18km離れた海域であり直接の危険はなかったとしています。ただ、むらさめ型護衛艦のレーダーには弾道ミサイルを探知する能力が元々なく、弾道ミサイルが直接命中する状況では迎撃する能力は無い、ともしています。

 対艦弾道弾などが開発はされているもの、イエメンは未だそういった装備は保有していないものとみられ、イエメンの弾道ミサイル能力を総合的に勘案した上で、護衛艦に直接弾道ミサイルを命中させる能力は無いものとして、警戒しつつ海賊対処任務を続けると発言していました。なお、むらさめ型護衛艦は対艦ミサイルならば複数目標に同時対応可能だ。

 こんごう型ミサイル護衛艦などイージス艦派遣の可能性はある。大きく状況が動いたのは12月5日の酒井海上幕僚長定例記者会見において、記者からの質問にージス艦派遣の可能性はあるのかとの問いに対し、派遣しないという選択肢は掛かれていない、としまして海賊対処法においてもイージス艦派遣の可能性を、記者への回答で否定しなかった構図です。

 イージス艦であれば弾道ミサイル攻撃に対応出来得る、射程次第ではペトリオットミサイルでも付近の地上施設周辺ならば迎撃できるのですが、海上の船舶への弾道ミサイル攻撃ならばイージス艦、海上自衛隊のイージス艦とアメリカ海軍の一部のイージス艦のみが弾道ミサイル迎撃能力を有しているだけで、世界中を見ても他に対応は不可能です。そして。

 ソマリア沖海賊対処任務の状況が大幅に変わりつつある、日本時間12月12日朝、中東のイエメン沖、バベルマンデブ海峡を航行中のノルウェー船籍タンカーがイエメンのフーシ派武装勢力から巡航ミサイル攻撃を受け、ミサイルが命中、火災が発生しました。今回使用されたのは地対空ミサイル改造の地対地ミサイルをタンカーへ誘導したもよう。

 フーシ派は犯行声明としまして、イスラエルに向かい船舶は全て攻撃目標となると発言しています。ただ、日本郵船船舶が襲撃された事からも分かるように、結局は理屈と膏薬はどこにでも貼りつくという状況で、例えば経由地に、運航会社の株式に、船会社の経営に、僅かでも関係しているならば攻撃を加える状況で、実質的には叩ける船を叩いている。

 対艦ミサイルに弾道ミサイル、攻撃手段はこの他にヘリコプターによる強襲と様々な手法が用いられており、これまでの、哨戒艦程度の機関砲と高速艇を積んでいれば対応できる、という状況はもはや過去のものとなり、海賊という安易なものではなく、海賊と共謀する武装勢力によるミサイル攻撃、という現在の状況は、簡単に見てゆく事はできません。

 軍艦で在れば万全なのかと問われれば、前回しめしました通り、アラブ首長国連邦海軍が運用していた高速輸送艦スイフトがミサイル攻撃を受けています。これに対する報復は行われたのかと問われれば、いやそのスイフトがイエメン内戦安定化作戦の為に派遣されていた、という正に戦闘中の事案ではあったのですが、対艦ミサイル攻撃は想定外であった。

 スイフトはアメリカ海軍も高速輸送艦として運用するもので、攻撃に用いられたのは中国製C-802対艦ミサイル、過去中国はイランへ大量に輸出しており、当初はレーダー不具合が多く、この前型に当たるC-801ミサイルなどはイランイラク戦争時代、実戦投入されたものの所用の効果を果たせなかったものでしたが。この攻撃では命中させています。

 ホルムズ海峡を警戒するアメリカの駆逐艦に向け発射したものの不具合を起こして戻ってきてしたもの。しかしC-802は待ったくの別物の次世代型、スイフトを大破させています。大破した原因として、スイフトはあくまで後方地域の輸送用であり、CIWSのような近接防空火器や電子戦装置を搭載していなかったのですが、海賊対処の状況が変りつつある。

 岸田政権は、本来ならば安倍政権時代の安全保障関連法が想定していた脅威、ホルムズ海峡機雷封鎖、こうした状況に正に合致するものです、今回攻撃を受けたバベルマンデブ海峡はスエズ運河を経て地中海とインド洋を結ぶ重要海峡なのですから。現在は党内の混乱収拾に政府はてんやわんやですが、脅威の変化を直視し、必要な決断を下すべき時です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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