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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【02】護衛艦むらさめ・たかなみ型へのFCS-3搭載という視点

2016-11-19 21:52:54 | 先端軍事テクノロジー
■FCS-3多機能防空システム
 江畑謙介先生はかつて、防衛費は血税である、との視点から護衛艦を簡単に除籍するのではなく、延命と改修、機関換装まで含め費用対効果をしっかり算定し、延命か除籍、納税者が納得する選択肢を採らねばならない、と指摘されました。

 むらさめ型護衛艦9隻、たかなみ型護衛艦5隻、FCS-2を運用する海上自衛隊の主力を構成する汎用護衛艦ですが、仮にFRAM工事を行い、あきづき型護衛艦、ひゅうが型護衛艦へ搭載されています多機能レーダーFCS-3を搭載する事が出来たなら、僚艦防空能力が護衛艦の基本性能となりシーレーン防衛能力や艦隊防空能力は非常に強力なものとなります。

 FCS-3,試験艦あすか、にて開発が進められた装備で、フューズドアレイレーダーを基本としたFCS-2の能力を更に高め、低高度高速目標の同時多数対処能力を強化し、遠距離を含めた索敵能力と併せ、射程50kmという新短距離艦対空ミサイルESSMとあわせ、護衛艦の能力を個艦防空能力から限定的な艦隊防空能力を持つ僚艦防空能力へ発展させました。

 当初、たかなみ型護衛艦への搭載も模索されていたようですが、開発計画の関係から、むらさめ型の改良型へ留め、FCS-2搭載艦として建造し、FCS-3の搭載は護衛艦あきづき型護衛艦からとなり個艦防空と共に艦隊とまではいかずとも護衛隊規模相互防空が可能、イージス艦の弾道ミサイル防衛任務時での航空攻撃からの掩護という運用も想定されました。

 最新鋭あさひ型護衛艦から改良型のFCS-3/OPY-1を採用しています。5000t型護衛艦として対潜能力を重視した設計でしたが、FCS-3/OPY-1の搭載により対空警戒では400km近い遠距離目標も識別可能とのことですから、対潜能力を重視しつつ、対空戦闘でも従来護衛艦と伍する、すなわちFCS-2搭載護衛艦よりも一歩進んだ能力を持つことが分かります。

 むらさめ型護衛艦9隻、たかなみ型護衛艦5隻、14隻へFCS-3をFCS-2からFRAM工事として換装すれば、能力が大きく向上するのですが、しかし、FRAM工事を行う場合、その実施は一般に考えられるほど楽ではありません、こういいますのも、護衛艦は船舶であり、重心と復元性が非常に重要です、復元性不十分であれば最悪の場合転覆しかねません。

 復元性は商船よりも水上戦闘艦の方が遥かに厳密に要求されます、これは商船には荒天時に避泊や航路変更という選択肢があり得ますが、水上戦闘艦の場合、荒天時であっても対潜脅威がなくなるわけではありませんし、ミサイル回避を含めた艦隊運動では水上戦闘艦以外では想定されないような急転舵を繰り返し、復元性が無ければ戦闘力に関わるのです。

 FCS-3は上部構造物と一体化し大型化しています、上部構造物が大型化すればその分、風力抵抗が増大し復元性計算を複雑化させますし、大型化するならばその分重量も大きくなるため船体強度計算と補強改修の必要性も高くなる、もちろんかりに、たかなみ型が元々FCS-3搭載を念頭として設計に余裕があり、艦橋構造物設計に配慮があるならば別ですが。

 費用対効果の問題もあります、FCS-3を含めた上部構造物をブロック工法により建造するまでに一年間、FCS-2を搭載する区画を換装する入渠工事と公試に二年近くを要します、この間は艦隊運用から離れる事を意味しますから、この間の艦艇を代替させなければなりません。世界には、アメリカのスプルーアンス級駆逐艦やカナダのイロコイ級駆逐艦、オーストラリアのアンザック級フリゲイト、中国のルフ級駆逐艦等近代化改修により能力を大きく向上させた事例がありますが、時間も費用も掛かる事を忘れてはならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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