北大路機関

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【防衛情報】F-15対艦爆撃とF-16最新情報,A-10新運用にJAS-39とラファールの改良にヘルメス無人機

2022-08-09 20:13:50 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は毎回の通り写真は微妙に自衛隊関連ですが世界の航空関連の11論点をみてみましょう。

 アメリカ空軍は戦闘機からの爆弾投下による艦船攻撃を研究するJCTDジョイントクイックシンク能力の実証実験を実施しました。これは4月28日にメキシコ湾において実施されたもので、実験には第96飛行開発実験航空団と第53航空団第85評価実験飛行隊が参加、そして、2000ポンド爆弾を転用したGBU-31-JDAM精密誘導爆弾が用いられています。

 GBU-31-JDAMはレーザーJDAMであり、GPS座標によってもレーザー照射によっても誘導が可能です。アメリカ軍にはハープーンミサイルやマーク48長魚雷など様々な対艦攻撃装備が配備されていますが何れも高価であり敵水上戦闘艦等の攻撃には不可欠です、対して輸送船など、船舶に対しては安価な打撃手段が求められ、この研究が進められています。

 戦闘機からの爆弾投下は目標が水上戦闘艦である場合には、個艦防空ミサイルであっても射程が延伸しており安易に接近する事は出来ません、ただ、輸送船である場合は別で、精密誘導爆弾も決してアメリカ軍の備蓄が無限であるわけではありませんが、対艦ミサイルよりは安価で、且つ地上での航空打撃戦に備え多数が備蓄され、備蓄所要の桁が違います。
■A-10攻撃機最新戦車狙う
 A-10攻撃機は毎年のように退役か存続かを議論するのですけれども取りあえず能力向上は続いています。

 アメリカ空軍のA-10C攻撃機は爆発反応装甲装着戦車へのGAU-8機関砲能力検証を実施しています。A-10攻撃機は冷戦時代にフェアチャイルド社が設計した対地攻撃専用の攻撃機で、地対空ミサイル命中を念頭にエンジンを胴体から離隔し双発としたり、操縦席を57mm高射砲弾まで想定したチタン製バスタブ構造とするなど、撃たれ強い攻撃機です。

 A-10C攻撃機は冷戦時代にソ連戦車部隊への攻撃を念頭に設計されましたが、冷戦終結後には長い滞空時間を活かした陸上部隊への文字通りの近接航空支援任務に重宝されていますが、搭載する30mm機関砲GAU-8は近年ロシア製戦車の基本となっている爆発反応装甲装着に対して有効性を2022年2月からネリス試験場にて実施しているとのことです。
■ラファール用TALIOS
 F-15EやF-16に搭載されているスナイパーやランターンのフランス版という。

 フランス空軍はタレスに対してラファール戦闘機用TALIOSポッド21基を発注しました。TALIOSポッドとは長距離目標識別追尾用光学システムポッドを意味し、ラファール戦闘機のエアインテイク部分側面に一体化するように外装されるもので、フランス空軍では2016年に試作機が完成、2019年からラファール戦闘機に搭載し実任務にも投入しています。

 TALIOSポッドは対地攻撃における目標識別と共にIRST前方赤外線監視装置の様に空対空目標の検出、そして戦術偵察任務に際する地上や海上目標の撮影に用いられるもので、画像は一部カラー、3Dマップ上に実画像を重ねる機能も付与、ラファールシリーズでは最新型のラファールF4に搭載、既に46基を取得し、今回更に追加することとなりました。
■JAS-39の改良と延命
 JAS-39は写真のF/A-18の双発エンジンを単発としました安価な機体なのですが長期間運用した場合は運用費用の増大が指摘されており、実際どうなのかが関心事ですね。

 スウェーデン空軍はスウェーデン国防装備庁を通じJAS-39グリペン戦闘機C型D型の改良と延命改修についてサーブ社との間で契約しました。スウェーデン軍はJAS-39最新のNG型とともに従来型のC型とD型についても2035年までは運用継続する方針であり、この為の将来脅威へ対応可能とする能力維持が今回の改良についての主眼とされています。

 JAS-39戦闘機は1988年に試作機が初飛行しており、量産機は1993年に完成、同時期に開発されたユーロファイター戦闘機やラファール戦闘機、F-16block52戦闘機などと比較した場合は運用費用面や取得費用面で優位にあるとされ、既に271機が製造され輸出も盛んに行われています。現在製造されているJAS-39は最新型のNG次世代型となっています。

 JAS-39CとJAS-39D戦闘機の能力向上については輸出された各国運用機についても持続的な能力向上を示し、いわば現在製造されているNG型についても持続的な改修が行われる事を示唆することで市場確保も視野に含められているのでしょう。なお、JAS-39は35年間運用した場合でF-35より割高との主張がロッキードマーティンにより為されています。
■F-16を16機42億1000万ドル
 サービスパックというわけではないのでしょうけれども一揃いこれで作戦が可能になります。

 ヨルダン空軍が希望するF-16戦闘機16機の導入42億1000万ドルがアメリカ国務省により了承されました。ヨルダン空軍が希望するのはAN/APG-83AESAレーダーを搭載したF-16block70戦闘機で、高額の契約には弾薬や搭載機器と整備関連器具などの関連機器とともにアメリカの民間保安会社による36カ月間のロジスティクサポートが含まれています。

 ロジスティクサポートは操縦士の教育を含め整備などの一式を外注する方式で、高額となりますが極端な表現ではヨルダン空軍は機数分の操縦士を用意するだけで一個飛行隊を運用する事が可能となります。産油国であるヨルダンには人口は少ないものの潤沢な石油資源があり、不安定化を増す中東地域での教育期間を省いての空軍力近代化という選択肢だ。

 関連機材には予備を含めエンジン21基、慣性航法装置、搭載用M-61機関砲21門、BLU-117爆弾200発、Mk82爆弾24発、GBU-31-JDAMキット100発、AN/ALQ-254バイパーシールド電子戦ポッド、JHMCSIIヘルメットマウントディスプレイ、AN/AAQ-33スナイパー目標照準装置6基、AN/ALE-47機体自衛装置など、まるまる一式が含まれています。
■F-16機体のみ16機17億ドル
 F-16は能力向上改修が続いている為にF-35と比較しても格段劣る訳ではないのですが高価格化に併せて立ち位置が中途半端になっている印象も。

 ブルガリア空軍が導入を予定するF-16戦闘機16機の輸出がアメリカ国務省により許可されました、これは16億7300万ドルの契約となり、その取得には予備部品や弾薬等が含まれるとされています。ブルガリア空軍は先行して8機のF-16戦闘機を2019年に導入契約締結しており、これにより24機という飛行隊規模のF-16部隊を整備する事となります。

 F-16戦闘機16機の16億7200万ドル、先行して取得したF-16戦闘機8機の契約は12億ドル規模であり、これには複座型のF-16D戦闘機2機が含まれていて、ブルガリア空軍は先ずこの機体により運用基盤を構築する事となるのでしょう。今回導入される機体は比較的新しいF-16block70水準の機体で、NATO各国のF-16との相互互換性を確保できます。
■JL-10練習機攻撃機運用
 中国は戦闘機が多い印象がありますが練習機も必要に応じて戦闘に参加させる総力戦を考えているのでしょう。

 中国空軍は最新型のJL-10高等練習機からの500kg爆弾投下試験を成功させました。500kg爆弾は2発が搭載され、高等練習機ながら大型爆弾の運用能力を有している点を誇示しています。この高等練習機への攻撃能力は、訓練生への多用途戦闘機操縦への機種転換を容易とする為のものとも説明されていますが、輸出での利点ともなるのでしょう。

 JL-10高等練習機は洪都航空工業集団が製造、中国空軍では猟鷹と命名されているほか、輸出市場ではL-15ファルコンとされ、軽攻撃機として運用した場合は3.5tの各種兵装を搭載可能であり、J-10戦闘機やJF-17戦闘機にJ-11戦闘機といった中国製戦闘機への機種転換を念頭に開発された機種ですが、途上国では戦闘機ともなり得る性能を有しています。
■T-7A練習機量産機納入
 アメリカは一旦採用を始めますと一挙に揃えますからいよいよT-38練習機の時代も終わるのでしょうね。

 アメリカ空軍は四月末、T-7Aレッドホーク練習機初号機をボーイングより受領しました。これはアメリカ空軍が導入する351機のT-7A練習機にかんする最初の一機となります。T-7A練習機はT-38高等練習機の後継機として2018年に採用が決定され、試作機の納入は2021年4月に行われるという驚くべき開発速度により実用化された航空機となっています。

 T-7A練習機の特色はF-35戦闘機の要員養成を第一に開発されており、主要部分はサーブ社が開発したJAS-39グリペン戦闘機の技術が応用、機体後部の製造をサーブが担い、機体前部と主翼などはボーイングが製造し全体製造をボーイングが担当しています。F-35は機上ソフトウェア運用の比重が高く、この点を意識した世界唯一の練習機ともなっています。
■ヘルメス900無人機
 飛行している無人機の写真と云うのは日本では撮影が難しくお茶を濁すように全然関係ないF-16の写真とともに。

 スイス空軍は大幅に遅れていたイスラエルIAI社製ヘルメス900無人機の受領を開始しました。先ず4月21日と4月26日に2機が納入され、2023年内に残る4機を受領する計画です。これは2015年にスイス空軍が2億5000万スイスフラン、邦貨換算300億円を投じて6機の調達が決定していたもので、もともとは2019年までに納入される計画でした。

 ヘルメス900無人機の納入が遅れた背景には事故があり、これはスイス空軍納入予定の機体がイスラエルでの試験飛行中に墜落、安全性の問題が指摘された為でした。また、旅客機などの過密空域である欧州上空での運用を念頭に航空機検知回避システムが搭載される計画でしが、これも遅れており、2024年までに要する為、作戦運用は当面、先でしょう。
■ヘロン無人攻撃機
 ドイツはトーネードの後継機を曖昧にしていますので取りあえず開戦初日に飛行させられる機体を求めているということか。

 ドイツ連邦軍はロシア軍ウクライナ侵攻を受け防衛力強化へイスラエル製無人攻撃機を導入します。これはドイツ国防委員会が4月6日に発表したもので、現在運用しているイスラエル製ヘロン無人偵察機へ武装キットを追加し、無人攻撃機に用いるとのこと。ドイツ軍が運用しているものはヘロンTP,最大1000kgの各種センサーか弾薬を搭載可能です。

 ヘロン無人偵察機は重量250kgの無人偵察機で最高速度は207km/h、最大52時間に渡り滞空が可能であるとともに巡航高度は10000mです。今回導入されるのはヘロン用空対地誘導弾140基、その取得費用は1億5260万ユーロで邦貨換算では207億円、連邦軍では60基が訓練用弾薬であり80基が第一線用、連邦軍は2年以内に装備化する方針とのこと。
■AN/ALQ-257IVEWS開発開始
 F-16V戦闘機はF-16の生産期間が長いことと採用国が多い事もあり進化が続くようでF-15運用国としては複雑な気持ちです。

 アメリカ空軍はノースロップグラマン社との間でF-16V戦闘機用AN/ALQ-257IVEWSバイパー統合電子戦システムの開発試験を契約したとの事です。AN/ALQ-257IVEWSはAPG-83AESAレーダーと電子戦能力のデータリンク能力を付与させるもので地上や上空からの脅威電波の受信を経て、対抗手段や脅威位置の情報を戦闘機間で共有するという。

 F-16V戦闘機はF-35戦闘機など第五世代戦闘機が増大する中で、F-35は世界中どこにでも運用基盤を展開可能と云う訳でもなく、一方でAPG-83AESAレーダーの搭載などでF-16C戦闘機等と比較し能力は大きく向上していて、また空軍自身がF-35を必要な数揃えるには予算上無理があるとしており、F-16戦闘機には当面空軍の主力を構成するようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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