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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】マーリン早期警戒ヘリコプターとルレオ級コルベット,極地砕氷哨戒艦ウィリアムホール、

2024-07-15 20:01:50 | インポート
■防衛フォーラム
 今週は海軍関連の話題ですが最初にちょっともったいないなあと感じるイギリスの話題から紹介しましょう。

 イギリス海軍は来年初度作戦能力付与のマーリン早期警戒ヘリコプターを2029年に全廃する方針を発表しました。マーリン早期警戒ヘリコプターは空母クイーンエリザベス艦載機としてAW-101ヘリコプターへ空中警戒装置を搭載したもので、早期警戒ヘリコプターという装備自体は先行してシーキングAEW早期警戒ヘリコプターがありました。

 ジェームズカートリッジ防衛調達担当大臣がイギリス議会下院への所管として明らかにしたもので、マーリン早期警戒ヘリコプターは空母打撃群に不可欠の艦載早期警戒機として整備が進められ2023年には航空機そのものの初度運用能力を獲得し、2025年には艦上配備が開始されることとなっていましたが、配備期間は僅か4年間となります。

 クロウズネスト早期警戒システムなどマーリン早期警戒ヘリコプターの担った空中警戒任務そのものは代替手段を確保し空母部隊を丸裸にするというかんがえではないものの、無人機を早期警戒機とする案などが検討されているもよう。なおこのマーリン早期警戒ヘリコプター開発にはあと一年を要し更に4億2570万ポンドが投じられるとのことでした。
■NATO艦隊
 パリからNATO本部を追い出したのが遠い昔話である事を改めて実感しますがF-35搭載のイギリスやイタリア空母とのギャップを実感する様に。

 フランス海軍は原子力空母シャルルドゴールをNATO艦隊へ編入します。シャルルドゴールは2023年いっぱいにかけて行われた定期整備を終え4月22日からの任務に復帰しますが、シャルルドゴール空母打撃部隊指揮艦であるフランス海軍のジャックマラール提督によれば今回の任務復帰はNATO艦隊の旗艦としての復帰となるとのこと。

 シャルルドゴール空母打撃群にはラファール戦闘機18機とE-2C早期警戒機2機、フランス海軍は防空フリゲイト及び多目的フリゲイトと攻撃型原潜を護衛につけるとともに、アメリカ海軍やスペイン海軍とイタリア海軍にギリシャ海軍とポルトガル海軍が護衛艦艇を派遣します。シャルルドゴールのNATO艦隊編入は最長で6週間となります。
■PBAT共通巡視船自律試験
 日本も哨戒艦を無人運用する検討をすすめているところ。

 オーストラリア海軍はアーミデール級哨戒艇自律航行試験に成功しました。PBAT共通巡視船自律試験として実施された今回の試験は造船大手オースタル社がグリーンルームロボティクス社により開発されたGAMAソフトウェアとを搭載し実施したもので、試験には少数のプロジェクトメンバーとIMS国際海事サービス職員のみが乗艦しました。

 PBAT共通巡視船自律試験に用いられたアーミデール級哨戒艇はセンチネルといい、これはもともと2022年にオーストラリア海軍が退役させたメイトランドを管理替えしたもの、その全長は57mに達し、自律航行可能の艦艇としては最大規模となります。本研究は完全無人艇ではなく乗員を介在させず長期間航行するシステムを目指しているもよう。
■空母シャルルドゴール
個艦防空能力ならば護衛艦ひゅうが型の設計は先進的だったのか。

 フランス海軍は原子力空母シャルルドゴールからのミサイル試験を実施しました。今回行われたのはフランス海軍の実任務への空母打撃群派遣を前に実施されたもので、アスター15艦対空ミサイルとアスター30艦対空ミサイルの射撃試験が実施、また空母護衛に当たるシュヴァリエポールも同様の艦対空ミサイル射撃試験を実施しています。

 シャルルドゴールは原子力空母ですが艦隊防空が突破された場合に備えアスター15艦対空ミサイルをVLS垂直発射装置方式で搭載しています。またシュヴァリエポールはミサイルフリゲイトであり、射程の長いアスター30ミサイルを搭載、今回の試験はDGAフランス軍需総局が最近の無人機や巡航ミサイル攻撃を再現する想定で実施しました。
■原子力潜水艦アガメムノン
 イギリスの建造期間はかなり長くなっている印象で日本のように短期間で量産する事の方が不思議なのかもしれない。

 イギリス海軍は原子力潜水艦アガメムノンの命名式を挙行しました。アガメムノンはアスチュート級攻撃型原潜の6番艦、水中排水量は7000tに達し、誘導魚雷では世界最速というスピアフィッシュ魚雷を搭載し対潜戦闘や対水上戦闘に当たるほか、トマホーク巡航ミサイルを搭載していることから強力な対地攻撃能力を有しています。

 アガメムノン建造は長期間を要しており、今回の命名式は進水式ではありませんが、BAEシステムズ社がスチールカット式を実施したのが2013年ですので、命名式まで実に11年間を要した事となります。アガメムノンはイギリス軍官としては6代目となり、初代アガメムノンがイギリス海軍に竣工したのは1781年まで遡るとのことでした。
■T-45Cゴスホーク
 日本でもT-4の飛行停止の際には訓練計画に大きな穴が開きましたね。

 アメリカ海軍はT-45Cゴスホーク艦上練習機の運用を全面的に停止しているとのこと。この背景には4月12日に発生した第1訓練航空団T-45Cの飛行中におけるエンジン故障事故を受けてのもので、アメリカ海軍の全ての空母艦上練習機が停止していることとなります。なお当該事故機はミシシッピ州ヘスラーノーブル飛行場に着陸成功しました。

 T-45Cの呼称は過去にも発生しており2022年4月にエンジンタービンブレードが破損してエンジンそのものを破壊するという事故が発生していました、海軍のアンオーエンズ報道官によれば安全が確認されるまで飛行訓練を再開しないとしていまして、原因は現在調査中とのこと。なおヘスラーノーブル飛行場への着陸では負傷者は出ていません。
■CB-90襲撃艇の無人化
 無人化は一つの潮流なのかもしれませんが安普請の沈んでも困らない無人艇とある程度使い勝手の良い艦艇の無人化は分けて考えるべきなのやも。

 スウェーデンのサーブ社はCB-90襲撃艇の無人化を検討中です。CB-90襲撃艇は1991年にスウェーデン海軍に完全手動の装備として就役、スキャパ計画としてサーブ社のアメリカ法人がアメリカ海兵隊とともに検討しているのは、新しく開発したエンフォーサー3偵察監視システムを搭載した無人艇の母船にこのCB-90襲撃艇をもちいるという。

 CB-90襲撃艇はスウェーデンでは沿岸砲兵部隊、現在の水陸両用戦軍団において沿岸部の歩兵部隊強行輸送用に用いられており、また120mm自動迫撃砲搭載などにより哨戒艇としての運用も模索されていました。しかしアメリカ海兵隊では今後、島嶼部作戦における情報収集手段としてこの小型の装備を応用できないかを模索しているのです。
■コルベットカールスルーエ
 バルト海で運用する場合は大き過ぎても困るのかもしれませんが近年の地対艦ミサイル射程延伸を考えますと狭い海域での小型水上戦闘艦運用は厳しい現実を突き付けられるようで。

 ドイツ海軍は新コルベットカールスルーエの命名式を挙行しました。カールスルーエはK-130型コルベット、ブラウンシュヴァイク級コルベットバッチ2の3番艦としてティッセンクルップマリン社により建造されていたもので、2020年に起工式を迎えたものの技術的問題により建造が遅延していた拝啓がありますが無事進水式を迎えた。

 ブラウンシュヴァイク級コルベットはドイツ海軍が西ドイツ時代に大量建造したゲパルト級ミサイル艇の後継艦、満載排水量は1840tとミサイル艇と比較した場合大幅に大型化しており、艦砲とRAM簡易防空ミサイル及び無人航空機用甲板を有しており、対艦ミサイルとしてはスウェーデン製RBS-15対艦ミサイルを4発搭載しています。
■中国海軍のステルスコルベット
 056型のような大量建造が行われて日本など比較的防衛力に余裕のある地域に対して突き付けられると平時の警戒監視は苦労する事になるのかもしれない。

 中国海軍のステルスコルベット実験艦が洋上試験を開始したもよう。中国海軍は8年間という短期間で72隻を量産した056型コルベットを運用しているのですが、その056型コルベットを建造した大連の遼南造船所において昨年11月ごろステルス設計の新型艦らしき艦艇建造の様子が不鮮明ながら中国国内SNSなどに投稿されていました。

 ステルスコルベット、5月にはいり新型ステルスコルベットが中国国内SNSなどにより公試、もしくは海上試験を開始したことが確実となりました。新型艦はSNS情報等の写真を見る限りスウェーデンのヴィズヴィ級ステルスコルベットを思わせる外見であり、主砲はステルスシールドに、またVLS垂直発射装置を搭載していることを伺わせる。

 外洋を航行する画像にはしかし船体は簡易防空ミサイルシステムなど既存兵器の搭載により大きさが類推できるのですが、ヴィズヴィ級よりもかなり大型であることが推測でき、また航行保安上か、もしくはRCSレーダー反射面積を秘匿するためか、膨張式のレーダー反射板が複数設置されることも確認でき、興味深い新型艦とおもわれています。
■ルレオ級コルベット
 スウェーデンも小型艦至上主義からある程度の大きさの艦艇の方へ向かうという。

 スウェーデン海軍のルレオ級コルベット建造にバブコック社が協力を発表しました。スウェーデンにはヴィズヴィ級コルベット以来となる新型水上戦闘艦の建造はスウェーデンのサーブ社が担当することとなっていますがバブコック社はエンジニアリングサポート、とくに船体基本設計段階でプロジェクト管理を担うこととしているもよう。

 ルレオ級コルベットはもともとヴィズヴィ級コルベットの改良型として2021年に建造が構想されたものですが、2022年のロシア軍ウクライナ侵攻とこれに伴うスウェーデンの重武装中立政策終了とNATO加盟により水上戦闘艦に関してヴィズヴィ級コルベット改良型では想定される脅威に対応できない事が判明し、新しく構想されたものです。

 2030年までに2隻を建造し2035年までに更に2隻という4隻の建造を目指す新型艦は、全長が100m以上となる見通しでヴィズヴィ級コルベットの72mより大型化し、水上戦闘能力は勿論、荒天時の外洋航行能力を確保するとされ、また艦対空ミサイルの搭載などヴィズヴィ級コルベットでは見送られた高い戦闘能力を標準装備させる計画です。
■極地砕氷哨戒艦ウィリアムホール
 武装した砕氷艦が必要な時代に。

 カナダ海軍は極地砕氷哨戒艦ウィリアムホールの就役式を挙行しました。5月17日、ニューサウスウェールズ州ハリファックス基地において行われた竣工式では真新しい軍艦旗の受領とともにペナント掲揚式がおこなわれ、カナダ海軍にとり4隻目となります新型極地砕氷哨戒艦の就役を祝いました。今後は海軍が各種試験を行うとのこと。

 ウィリアムホールはハリーデウルフ級の4番艦で、近年の気候変動により冬季以外は船舶航行が可能となった北極海が新しい最前線と認識されたことからロシア海軍などの北極圏軍事行動増大を受け北極海沿岸諸国が進める警戒監視能力強化の一環としてカナダが導入したもの。満載排水量は6615tで25mm機関砲やCH-148ヘリコプター等を積む。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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