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自衛隊統合演習、宮古島分屯基地・沖縄本島那覇駐屯地へ地対艦ミサイル連隊が展開

2013-11-06 23:27:22 | 防衛・安全保障

◆第1特科団地対艦誘導弾、宮古島へ初展開!

 今月一日より実施されている自衛隊統合演習ですが、当初計画通り、地対艦誘導弾が沖縄へ展開しました。

Simg_9002 今回展開したのは陸上自衛隊が装備している88式地対艦誘導弾で、射程は150kmから180km、内陸部からの運用を念頭に国産開発されたもので、ミサイルに我が国のデジタルマップが内蔵され発射後は地形匍匐飛行を行います。6個連隊所要と教育所要が調達されており、一個連隊には六連装発射器16基と再装填二回分の誘導弾が配備されています。

Simg_8575 自衛隊統合演習では、北部方面隊第1特科団の地対艦ミサイル連隊が民間チャーターの高速輸送船により機動展開し、沖縄本島の那覇駐屯地と八重山諸島宮古島の航空自衛隊宮古島分屯基地へ展開しました。宮古島へ地対艦ミサイル連隊が展開するのは今回の演習が初めてとのこと。

Simg_2830 地対艦ミサイル連隊は通常、海岸線へレーダー搭載の標定車両を展開させ目標を監視しますが、北部方面隊では第1電子隊を置き、洋上の艦艇通信情報や電波の輻射を感知し、超水平線の見通し線外の水上目標を感知する能力があります。電子隊は北部方面隊のみ編成されている部隊で、この為、独立しての対艦戦闘能力は北部方面隊隷下の連隊が高い能力を有しています。

Simg_9134 地対艦ミサイル連隊が装備する88式地対艦誘導弾は同時に96発を、再装填で10分程度にて次の96発を、連隊の即応弾のみで288発を水上目標群へ投射可能で、陸上自衛隊には北千歳駐屯地、美唄駐屯地、上富良野駐屯地、八戸駐屯地、健軍駐屯地に地対艦ミサイル連隊が配備されており、全体でのミサイル投射能力はけた外れの規模といえるでしょう。今回の訓練は宮古島へ展開したのが北部方面隊隷下の地対艦ミサイル連隊、沖縄本島へ展開したのは八戸駐屯地の地対艦ミサイル連隊、との報道でした。

Simg_8671 今回の自衛隊統合演習は特定の国を想定したものではありませんが、我が国周辺には南西諸島を射程とする数百発の短距離弾道弾を保有し、我が国南西部の施政権下に或る領域への侵攻を仄めかし、且つ我が国南西諸島周辺海域を頻繁に航行し、関心を集めている状況も反映されているのかもしれません。

Simg_0569 この地対艦誘導弾は、基本的に護衛艦むらさめ型以降の海上自衛隊護衛艦に搭載されている90式艦対艦誘導弾の原型であり、特別なものではありませんが、通常の運用では方面施設部隊の坑道掘削装置により掩砲所に待機するため、仮に戦術核攻撃を受けた場合でも部隊機能の維持が可能で、抗堪性の高い運用が為されているのも特色の一つ。

Simg_5286 前述したとおり、この誘導弾が宮古島へ初展開したわけですが、これにより必要であれば沖縄本島と宮古島間の海域を地対艦ミサイルの射程で覆うことも可能となり、展開実績を積むことで、南西諸島への軍事圧力が顕在化した際には強力な抑止力として展開し得る事を誇示した、ともいえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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11 コメント

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88式の予備弾が2斉射分とのことですが、ソースをお... (高木)
2013-11-06 23:33:19
88式の予備弾が2斉射分とのことですが、ソースをお教え頂けませんか?
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高木 様 こんばんは (はるな)
2013-11-06 23:38:56
高木 様 こんばんは

地対艦ミサイル連隊の駐屯地にて、“予備弾薬は二回分あります”と、装備品展示の隊員さんにお聞きしました

ただ、観閲行進では弾薬車の随伴は一斉射分なので、もちろん全部更新するわけではありませんので何とも言えませんが、予備弾薬ではなく、搭載弾薬を含め二斉射分という意味合いでの回答なのかもしれません
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はじめまして… (ちゃちゃまる)
2013-11-07 06:49:41
はじめまして…
疑問ですが、何故北部方面隊以外の地対艦ミサイル連隊には第一電子隊みたいな部隊がないのでしょうか…
海自とのデータリンクや情報のやり取りが充分に出来ない(或いは出来なくなった場合に備えて)現状、自前での洋上目標の長距離探査能力を強化すべきでは…
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ちゃちゃまる 様 はじめまして (はるな)
2013-11-07 12:44:34
ちゃちゃまる 様 はじめまして

ご質問の件ですが、第1電子隊よりも規模は小さいものの、西部方面隊には2005年度より西部方面通信情報隊が創設され、2010年度に西部方面情報隊へと拡大改編、限定的ではありますが標定任務は可能です。

なお、電子隊の任務は電子標定により、地上での敵部隊標定が含まれているほか、電子妨害と対電子戦など、地対艦ミサイル連隊の支援任務に留まるものではありません。

1981年の第1電子隊創設以降、電子隊の各方面隊への配置は検討されていたといわれるのですが、第1電子隊は三個中隊編制の大隊規模、予算と人員不足があり、実現には至りませんでした。

こういう部隊こそ、通信学校の通信教導隊隷下に例えば第101電子戦隊を置いて、その後中央即応集団に配属させ、大臣直轄の部隊として機動運用させるべきだと考えるのですが、ね。

他方、地対艦ミサイル連隊ですが、2011年に宇都宮駐屯地の第6地対艦ミサイル連隊が廃止、現行防衛計画の大綱により、上富良野駐屯地の第3地対艦ミサイル連隊が廃止されており、個人的には島嶼部防衛の最重要装備として考えられると思うのですが、防衛政策の面では扱いが少々雑なのでは、と思ったりもするところです。
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前向きに考えれば、ロシア軍が北海道に大規模上陸... (渋川雅史)
2013-11-07 22:22:51
前向きに考えれば、ロシア軍が北海道に大規模上陸戦を仕掛けてくる可能性がほぼ無くなった今、ファイアユニットを減じてでも機動性と標定能力を強化して実質的な戦力を強化するという方針なのでは?
特に標定能力については最重要課題でしょう。早急に海空とのデータリンクや無人機の導入によって強化しなくてはなりますまい、標的が何処にいるかわからなくてはいかなる長射程弾も宝の持ち腐れですから。
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渋川雅史 様 こんばんは (はるな)
2013-11-08 20:18:53
渋川雅史 様 こんばんは

ううむ、そう好意的に解釈したいところですが・・・、地対艦誘導弾の連隊数縮小は必然的に展開範囲の狭小化を意味しますので、もう少し防衛大綱の面などで考えてほしいところです

電子標定ですが、無人機の場合、一部で開発が進むステルス性の高いものを除けば脆弱性が大きいですので、完全に位置を秘匿しつつ情報を収集する電子標定と無人機は分けて考えるべきなのかな、と
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はるな様 レスありがとうございます (渋川雅史)
2013-11-08 22:35:38
はるな様 レスありがとうございます
・・・半分以上願望が入っていますので・・・正直そうあって欲しいと私も思っています。
それから
「宮古&石垣への地対艦誘導弾部隊常駐を!」
という論説をたまに見かけますが、私はこれについては些か懐疑的です。なんとなれば
「地積が狭い上にその多くが石灰岩で形成されているであろう先島諸島の島々は穴が掘れない=部隊の隠れる場所がない→第一次航空攻撃に抗たんして生き残れない」
のではないでしょうか?
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渋川雅史 様 どうもです (はるな)
2013-11-08 22:43:28
渋川雅史 様 どうもです

先島諸島への地対艦ミサイル連隊駐屯ですが、ご指摘の通りで坑道掘削装置では掘りにくい、・・・、上富良野で掘れたそうですから何とかなるのかもしれませんが、防護は応急陣地では困難というのは同意です

ただ、応急陣地では不可能であるからこそ、恒久施設を、もちろんミサイルが常駐する必要はないのですが、構築しておく必要はあるのかな、と

実施するのであれば、第53警戒隊の用地内にトンネル式掩砲所を常設して、有事の際に運用するほかない、と考えます、付け加えれば、航空自衛隊が高射隊を前進配置するというのが条件の一つになりますが
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・・・できれば96式を追加生産して着上陸阻止用に... (渋川雅史)
2013-11-08 22:44:04
・・・できれば96式を追加生産して着上陸阻止用に宮古&石垣に配備するべきだとは思いますが・・・
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その通りですね、実は当方も掩砲所を構築して、有... (はるな)
2013-11-08 22:49:57
その通りですね、実は当方も掩砲所を構築して、有事の際には88式を搬入する前提で、しかしは96MPMSをトンネル式掩砲所に配置しておく、という方策は在りなのかな、と考えたりもしました

96MPMSならば、宮古島中央部に配置するだけで全島の沿岸部を防護する事は出来るのですよね

中距離多目的誘導弾でも、間接照準といいますか、レーザー照射装置を離隔して配置し、陣地運用は可能ですので、代用できるのかもしれませんが
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