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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】上賀茂神社-賀茂競馬,上賀茂競馬会図屏風や賀茂葵競馬図屏風などの屏風絵

2024-06-12 20:24:21 | 写真
■祭事神事はいつの時代も
 賀茂競馬の歴史を紐解いてみましょう。

 賀茂別雷神社、賀茂競馬の神事を執り行いますのは北区の上賀茂神社です。上賀茂神社は京都屈指の歴史を誇る社殿でありまして、いやその社殿は式年遷宮を幾度も経て常に新しく静謐さを保つために実のところその古さは社殿というより社伝なのですが。

 上賀茂神社は賀茂別雷大神を祀る社殿で、そのはじまりは神武天皇の時代に神山といういまはご神体となっています山の山麓は御阿礼所に神武天皇の実父とされる神話上の神、賀茂別雷大神が降臨したという奇跡を受けて造営された神社といわれています。

 皇城鎮護の神社という位置づけの社殿なのですが、賀茂別雷大神は航続守護という信仰の先に賀茂別雷大神には雷という一文字を冠していますことから天候の、その先の信仰としまして農業守護という崇敬を集めることとなりまして今日に至るのですが。

 五穀成就、この賀茂競馬もこうした農業振興から執り行われているものでして、これは単純に騎馬の速度を競うのではなく、騎馬同士の離隔がどのように開くかにより、勝敗というよりも吉祥の度合いを競っているのがこの賀茂競馬というものといいまして。

 神馬、そう上賀茂神社ではこの賀茂競馬の神事が執り行われます砂州の参道に、神事が行われないときにも馬宿がおかれていまして、常にご神馬を常駐出来ない故に実物大模型が置かれているのですけれども、いかにこの神事が重視されているのかがわかります。

 撮影に際してはその迫力を縦横無尽に記録するためには、横から流し撮りという方法も考えましたが相手は戦車や装甲車ではなく上下にも動く騎馬ですので流し撮りは意外と難しく、それならばと土煙と共に迫る構図を撮影することとして撮影位置を選ぶ。

 宮中武徳殿で執り行われた、天下泰平祈念の節会として競馬会式を平安朝の時代には毎年御所において執り行っていたということですが、寛治7年こと西暦1093年、宮中からその神事の場を上賀茂神社に移したことが賀茂競馬の始まりとされています。

 賀茂競馬は当初は一時的な宮中からの遷座というような扱いであったとも聞くのですが、そののちに上賀茂神社の年中行事として定着することとなりました。もっとも、戦後GHQにゴルフ場として接収されるまで当時の神域は今よりも遥かに広かった。

 初詣などで上賀茂神社に詣でますと、純白の御白砂が社殿に向けて滔々たる流れを模すように伸びているのですけれども、これがかつては下鴨神社の糺の森のような長大な長さを湛えていたということですので、往時の神事はさぞ迫力のあったことでしょう。

 徒然草、吉田兼好はその第四十一段に賀茂競馬について、“五月五日、賀茂の競べ馬を見侍りしに、車の前に雑人立ち隔てて見えざり”と記していまして、そう徒然草が著された時代にはもう、いまのように、全然見えないよ、的な状態であったことに驚く。

 平安朝の時代には今のように脚立から望遠レンズで一眼レフを振り回すというようなことは当然なく、貴人は牛車を路駐して御簾の向こうから、奇人は家屋の屋根に上り、商売人は桟敷席を立ち上げて庶民は道端から見物していたといいます。

 上賀茂競馬会図屏風や賀茂葵競馬図屏風などの屏風絵にもその様子は残されていまして、これは江戸時代における京都の歴史風俗を示す重要な文化財として位置づけられています。ただ総じて思うのは、何時の時代も祭事を見物する人の多さ、という。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【京都幕間旅情】上賀茂神社-賀茂競馬,写真は自由でありたいとカメラを構え想う

2024-06-12 20:00:36 | 写真
■AI時代の写真撮影
 閑話休題的に。

 写真を撮影する際に一眼レフかミラーレス一眼か、という時代は実のところもう終わっている印象で、スマートフォンかカメラか、という時代になっているもの。スマートフォンは、そう、iPhoneに絶大な信頼を置いているのですが撮影はわたしはカメラを。

 iPhoneが信頼できると思いましたのは、過去にアメリカの刑事事件でFBIがApple社に対しロック解除を命令したものの、Apple社は使用者以外ロック解除は出来ない、バックドアはない、と主張し実際そうだったようで、FBIは一年かけ独自に解除した、と。

 個人情報保護の時代に、こうした元々バックドアを配置しない方法、中国ですと違法になりそうですが、感心したものです、けれども実際のところ、ほかのスマートフォンよりも格段に頑丈で性能が安定していて、10年、とはいかずとも8年9年は使える。

 EOS-MかEOSか、という話題ではなく時代はEOSかiPhoneか、もちろんスマホは色々騎手があるのですことは了承している一方、被写体には平たいスマートフォンを向けるのかカメラの筒先を向けるのか、というところまで、選択肢は転換しているようで。

 AI搭載、ただ昨今どうしても気になるのはNHK報道などで“iPhoneに生成AI”という報道がありまして、大丈夫なのかな、という素朴な疑問が。AIに監視される、というような安易な話題ではないのですが、AI補正が更にきつくなってしまうのではないか、と。

 写真、スマートフォンの撮影写真はある程度補正されているもの、だからJPEGで補正するよりも最初から見栄えの良い画像が、という点は理解するのですが、細部を拡大してみますと補正で画像が逆に粗くなったり、無いものや文字が文字化けしていて。

 OCR技術がAIで高まるとか撮影位置のGPS情報から景色をWeb検索して細部の文字まで補正時に再現するとか、そういう性能が加わるのかもしれませんが、それは写真ではなく絵ではないのか、という、上掲と写真に拘りを持つ側として懸念するのですね。

 合成写真が作りやすくなる、こういう点もAIについて利点というよりも欠点と思う。AIを使えば例えば、たとえ話ですが、預言者に好き勝手な自分の考えを代弁させることができるのでしょうが回教国でこれをやれば鞭打ち刑ではすまないかもしれません。

 AI搭載のスマートフォンは、こんな合成写真を創れます、とお勧めしてくる機能が搭載されますと、例えば故人とか、勝手に画像を捏造されたくない心の内部までAIが入ってくる可能性がある、AIは空気を読む性能がまだありませんし、この点未発達そのもの。

 人工知能と人工学習というものはありますが、社会性の動物である人間は、忘れることを敢えて社会の潤滑剤にしているものでもある、しかしここをAIは学ぶところがありませんし、空気を読む、と日本では表現されますが摩擦の回避への本能もAIは至らない。

 コラージュ写真、結局のところスマートフォンで撮影することにより、そのスマートフォンにAIが搭載されますと、コラージュ写真が基本になってしまうということ、その点でデジタルでは複製が容易ですし、AIは無尽蔵に作成し続ける事さえ可能という。

 AI反対、という訳では無いのですが、一方でこれが撮影の基本となってゆきますと、今でさえコンパクトデジタルカメラは中級機種がスマートフォンに市場荒らされ絶滅しかけている、カメラの領域にAI搭載機が居座り置き換わるのが、ちょっと不安なのです。

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ウクライナ情勢-ハリコフ最前線,ロシアS-400地対空ミサイルvsウクライナ軍HIMARS高機動ロケットシステム

2024-06-12 07:00:01 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 日本の防空制圧任務に関しても大きな戦訓と云える事例がウクライナとロシアの国境付近で発生しました。日本本土の一部は中国やロシア本土の地対空ミサイル射程圏内です。

 防空システム、地対空ミサイルの存在は戦闘機などによる航空阻止や近接航空支援を徹底して阻害する為に厄介な存在で、アメリカ軍などは専門の防空制圧部隊を、欧州NATOでは攻撃機に対レーダーミサイルを搭載しその無力化に努めてきましたが、1973年第四次中東戦争では戦車部隊が直接ミサイルを撃破した事もありました、そして2024年には。

 HIMARSとS-400の対決という非常に稀有な状況があったようです、ISWアメリカ戦争研究所6月3日付ウクライナ戦況報告によれば、ウクライナ軍は1日と2日にかけ、ロシアベルゴロド州からウクライナハリコフ州の攻撃を支援していたロシア軍S-300/S-400地対空ミサイルに対して、HIMARSによるGMLRS精密誘導攻撃を実施したとのこと。

 世界最長クラスの射程と弾道ミサイル迎撃能力を誇るS-400地対空ミサイルシステムと、世界最有力といわれる精密誘導ロケット弾GMLRSを投射するHIMARSの戦闘はHIMARSの勝利に終わったようで、3日にベルゴロド市郊外のキセリョヴォ平原地帯に破壊されたS-300乃至S-400の発射器2基と射撃統制装置が確認されました。
■アメリカ政府の理解
 今回の精密誘導ロケット弾と長射程地対空ミサイルの戦闘について重要な点はロシア領内ベルゴロド州で起きたという事でしょう。

 HIMARSとS-300/400ミサイルシステムの戦いは、GMLRSロケット弾を迎撃できなかった事でS-300/S-400が敗北する事となりましたが、このミサイルシステムはロシア領内からウクライナを狙っていたもようです。S-300/S-400ミサイルシステムはハリコフ州最前線から60km、ハリコフ市中心部からは80kmを隔てているとの事でした。

 GMLRSの射程から考えた場合はぎりぎりの射程といえるでしょう。アメリカ政府はウクライナへ供与したアメリカ製兵器によるロシア本土攻撃に消極的でしたが5月下旬からこれを容認する立場へと姿勢を変えていた矢先のことでした。アメリカ政府の態度変更は、ウクライナが戦略目標ではなく戦術目標に対応する事を念頭と理解した上でのことなのか。

 モスクワやサンクトペテルブルクに対してウクライナは無人機攻撃や特殊部隊越境攻撃を行っているとされていますが、ここにアメリカ製兵器を使うならばアメリカは反対した事でしょう、しかしウクライナロシア国境付近のロシア側に対して原則論に拘る事でウクライナの行動を抑制する事は全般状況に影響するとアメリカ側が判断したのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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