北大路機関

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 防衛産業は防衛政策の一環

2013-11-07 23:45:19 | 防衛・安全保障

◆これを考えるのは主権者たる国民が参画する命題

 北大路機関特集記事として昨年八月から開始した記事ですが、そろそろ結論を考えなければならないところでしょうか。

Bsimg_1855 301飛行隊創設40周年記念塗装を纏い機動飛行するF-4EJ改、現在は新田原基地に展開していますが、百里基地において創設された航空自衛隊最初のF-4ファントム飛行隊ですが、飛行隊創設40周年をF-4で行うということは必然的にF-4を運用し続けて今に至るもの、そして同一機種を40年間運用し続けていることは防衛産業の運用基盤があるということに他なりません。

Bsimg_9833 自衛隊は防衛計画を構築し、それに基づいて祭的胃の装備体系を整備することに努力してきました、冷戦時代は北海道を中心に大規模侵攻へ対処の準備を行いつつ対戦車戦闘能力と機動展開能力を構築する面で尽力してきましたが、他方、防衛政策は予算面で冷遇されており、一括取得などの調達を行えなかったことから少数長期調達をいう政策を採らざるを得ませんでした。

Bsimg_8663 防衛政策と防衛産業の技術水準と企業の経営体力面での盤石化までの期間、誤解されやすいことではありますが、我が国の防衛力は同盟国アメリカの厚意に支えられた部分があり、また、その時期のアメリカの経済力は比較面で非常に大きく、日本を支えることが出来る余裕がありました、他にアメリカ製第二次大戦中の膨大な余剰兵器というものも含めて考えるべきでしょう。

Bsimg_0178 これは、背景が異なるものの、防衛政策の無理に対応できる環境があったため、という部分で、えっかが同じですので誤解しやすいのですが、日本政府が日本の防衛産業に突き付けている防衛面での協力は、契約不履行、詳細不開示、長期間生産能力維持、整備支援長期維持要請など、かなり無理を敷いているものがあります。

Bsimg_2955 これは戦後間もないころの自衛隊創設直後の頃では日本国内の産業は、同時期の朝鮮戦争特需により多少の体力はつきつつある頃でしたが、現在のような無理を要請されても対応できるものではありませんでしたが、このころはほぼ無性に近い米軍の朝鮮戦争時における余剰弾薬や第二次大戦中の余剰装備の供与により、無理ではなく、非常に労力を低くして入手できる背景があった、ということ。

Bsimg_1409 そして、我が国の経済力は1968年に国内総生産GNIで西ドイツを抜き世界第二位の規模を有するようになり、造船業や製鉄業に自動車産業から精密機械など各分野で大きく躍進を遂げるようになり、防衛産業は国が要望する高い水準の装備、そして日本国内での想定される戦術体系に対応できる装備を必要な水準の低い生産数で調達に応える企業体力が練成されるにいたった、というもの。

Bsimg_0665 この時点で防衛産業は、採算度外視、もしくは、企業の社会的貢献としての部分も含め、勿論最先端産業分野への波及効果を期待しての参画もありましたでしょうが、かなり無理をしてでも調達要請に応えました。ただ、昨今、防衛装備品の取得費用を精査してみますと、量産効果が望めないほどの少数長期生産ながら、国際競争力を有するに近い低い水準の費用で生産しており、これは特筆に値するかもしれません。

Bsimg_4312 見方によっては訳在り商品を納入しているのではないかと勘繰る方がいるかもしれませんが、ライセンス生産装備などを見ますと、当然原産国が開発している装備の規格に合った水準の装備を完成させているわけですので、要求水準を満たした装備として出来ているわけで、この批判は言掛りに過ぎません。

Bsimg_4506 また、日本の運用体系は諸外国の運用体系と異なり、遠大なシーレーンにより支えられている海洋国家でありながら専守防衛政策を継続せざるを得ないという部分や隣国に東西冷戦下の対とする陣営に属する大国が存在し、加えて同盟条約を基本的に多国間で結ぶことのできない外交政策を基本としている、この為、独自の装備体系を構築せざるを得ませんでした。

Bsimg_0879 こうした背景から、独特の装備、高い対戦車能力や狭隘道路に対応する車両体系、対潜戦闘を特に重視する艦艇体系や広大な海洋を有し長大な航続距離を必要とする点、少数装備と少数拠点を持って防空に対応するべく航続距離や部分的に対艦攻撃能力の強さを必要とする航空装備体系など、構築せざるをえなかった、というものがあります。

Bsimg_5342 この点を逆に指摘し、独特過ぎる装備体系をガラパゴス化と指摘する向きもありますが、大きすぎて使えない戦車に泣いたNATO諸国は意外と多いですし、周辺国に合わせた結果航続距離不足の水上戦闘艦に泣いた国、自国が求める性能に合致する戦術戦闘機が二世代に渡り導入できず超音速機の低空運用で犠牲者を続出させ、高性能戦闘機を戦術戦闘機として運用し性能を無駄とした国もある。

Bsimg_4691 そうした無理を通した装備体系を構築し、そのために苦労する、もしくは必要以上の数を確保して機動力の不足や稼働率の不十分に応えるという選択肢は、逆に前述の部分を無駄として指摘した方々に、これは妥当なのかと問うたとしても直視を避けられるのみではないでしょうか。

Bsimg_2274 もちろん、稼働率が低くなるだけでも安ければ最多数の装備を調達すればよいという視点ならば、予算の許す限り最大限の装備数を揃える事で対応できる部分がありますし、質より量を越えて兎に角量を圧すことで対応する部分もあるのですが、日本の防衛政策は戦後一貫として軽武装、数的抑制、周辺国配慮を国是としてきましたので、これは出来ません。

Bsimg_9352 さて、こうした部分を指摘すれば、そもそも戦後の憲法秩序が無意味だったのだ、と憲法改正国軍創設を掲げる方もいるかもしれませんし、平和主義と武装中立は矛盾しないとしてスイスやスウェーデンにフィンランドの事例を持ち出す方もいるかもしれませんが、この点は少々論理飛躍というもの。ここまで論理の基幹を動かすと論理そのもののベクトルが変化してしまいますし、余りに無意味ですので、この視点は、余りに当時の視点から逸脱しすぎています。

Bsimg_9982 はなしを元に戻しますと、日本の防衛関連技術の水準は、特に基礎研究を技術研究本部の創設以来半世紀以上連綿と受け継いできており、前述の関連分野における防衛産業の技術力も大きくなっていますので、対応できる部分があります、ここで無理に海外装備、特に技術面で決して日本の視点からは先進的ではなく、更に運用特性が合致していない装備を導入する必然性は無いのではないでしょうか。

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 もちろん、全ての装備を国産出来るものではありません、技術研究が進められているものは在りますが、これまで検討していなかった分野の装備や防衛政策の面から考える事を許されなかった技術領域などがあります、この部分については輸入などを行うほかはありません。

Img_1361 他方で、輸入装備を導入するにしてもその維持管理や消耗部品、重整備などを全て自前で行うことが無意味ですし、全ての装備構成要素を海外へ供給するわけではありませんので、その場合は一部部品を第三国から導入する、という選択肢も採り得るのでしょうが、無駄が多い、こうした意味で防衛産業と防衛力の共存関係は必要となるわけです。

Img_5018 我が国において不幸な部分は、このように防衛産業は非常な努力を行い、採算面で厳しと頃、一部は持ち出しにあたるのではないか、という部分がありながら継続している分野について、特に防衛政策への世論の面での風当たりの強さが反映されてしまい、云われなき誹謗に突き付けられている、というもの。

Img_9381 実のところ、識者こそこうした状況に際し、事実関係の指摘を的確に行い誤解を回避することが必要だ他と考えるのですが、十分に行われたとしても取り上げる側の反応が薄く、また、当事者も、これは日本的、というべきなのかもしれませんが公の視点からの確固たる反論を広く行ってきませんでした。

Img_1658 無論、これは政治全般に対する国民の関心度とも合致しており、“お上”という視点と言いますか、政治批判は盛んでも政治参画には盛んな時間を投じられず、もしくは余剰時間の選択肢に政治参画を含めない風潮がある、ということもあるのかもしれませんが。

Nimg_0070 結局のところ、幾度も取り上げたように防衛政策と密接に関係している分野でありながら、主権者からはこの事業評価を的確なものとさせるべき分野での周知が後方の面で大きくは無く、また、政策当事者の面からは無理を敷いたとしても応えることが出来たという防衛産業の対応力もありました。

Img_3974 永遠に我が国の経済成長が続き、防衛産業とそれを支える分野の民需生産が永続的に続けばそれでも問題は現出することは無かったのでしょうけれども、財政上の限界が前世紀末期から続き、国も企業も体力的な限界に差し掛かり、結果、その歪の部分がしょうじてきている、こういう実情があります。

Img_6660 財政健全化は非常に大きな課題ですが、防衛産業の特性を無視して無理な過当競争を継続させ、技術水準を無視した装備開発の要求を費用面のみで実施し開発に失敗、長期計画を明示しつつ契約に反映させない単年度調達の積層を行い、財政面から調達中断を行うことで企業に損失を与える、少数生産を継続しすぎ受注不足での撤退、こうした状況が現在続く。

Nimg_6689 防衛産業は体力が無くなり、国も財政的余裕が無くなり、間の悪いことに我が国周辺国では軍拡が広がり、他方で我が国での防衛力での政策面優先度は幾分か理解が深まりつつも依然低い水準、ここでいわば防衛破綻というべき、様々な分野での限界が見えてきています。

Simg_725100 従って、防衛産業は技術面で特殊な分野であり、他方で対象としているのは民間企業であるため経営上の配慮に一般企業同士の商用慣行を逸脱しない範囲内での契約関係が必要である、ということ、当局側は商慣行に不慣れであり、企業側も商慣行の逸脱には限界があるという事、理解して物事を考える必要はあります。

Img_8274 防衛産業は防衛の一分野というべき重要要素を占めているのですが、政策的に配慮し、保護しなければならない分野である、聖域という概念は必ずしも適当ではありませんが、一度崩壊してしまった場合再構築にはさらに大きな費用を要するため、聖域でなくとも破綻させることは費用対効果の面で妥当ではない、こうした視点が必要と考えるところ。

Aimg_0792 もっとも、難しく考える必要はありません、買うといったものは買う、その分買うかどうかをしっかり考える、約束したことは守る、安いといっても出来るかどうかの精査は怠らない、お互い無理はしない、商慣行というよりはむしろ常識的道徳の範疇でしょうが、国と企業の関係で防衛産業を見ますとこれが必ずしも守られていない。

Pimg_4578_1 更に、これは防衛政策全般、もしくは政治全般に言い得る事ですが、批判だけではなく参画の手段を考える必要がある、というところ、防衛産業への批判の前にどうやって的確な防衛力を整備するべきなのか、という部分を、細部は別にいいですから総論として明確に解答を導き出す努力が必要だ、とかんがえます。これは即ち、防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望、これを考えるのは主権者である国民が参画し考える命題だ、ともいえるのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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