北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑥ 戦車大隊・飛行隊・音楽隊

2013-04-16 23:14:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆観閲行進の最後を飾る師団の花形 

 福岡駐屯地祭、観閲行進もいよいよ大詰めとなってきました、地響きとともに師団の花形が見えてきます。

Fimg_5946 74式戦車、第4戦車大隊長前島政樹2佐以下、師団の機動打撃部隊の中枢を担う第4戦車大隊の74式戦車が堂々の行進、戦車が進む、38tの鋼鉄が720馬力のディーゼルエンジンを吹かして連なり進む、実際に地面が振動を伝え音が空気を震わせてこちらへ響く、戦車の行進は一味違う。

Fimg_5960 第4戦車大隊は大分県の玖珠駐屯地に駐屯、観閲行進では第一中隊、第二中隊、第三中隊と大隊本部車両の74式戦車が敬礼し、会場を進んでゆきます。砲塔には第4戦車大隊のマークが掲げられ、一列になり堂々と進み、会場すべての注目を一手に引き付ける。

Fimg_5980 74式戦車は、国産第二世代の戦車として従来の61式戦車の後継を担うべく開発されたもので、鋳造式の避弾性を重視した砲塔と105mm戦車砲を搭載しています。第二次大戦中の戦車の区分で中戦車を洗練させた戦後第一世代戦車に対し、世界の戦車趨勢は対戦車ミサイル時代の到来を前に装甲防御力の限界を見定め、鈍重さを排するべく機動力と打撃力に重点を置く第二世代戦車を開発しました。

Fimg_5986 この趨勢に応えるべく、第二世代戦車として必要な能力を盛り込むと共に、打撃力の根幹である主砲命中精度を向上させる観点から、搭載するL-7系105mmとともにアナログ式弾道コンピュータ及びレーザー測遠機を搭載、L-7系のライフル砲が有する現代でも第一線級の飛距離を最大限有効射程とする方式を採用しています。

Fimg_5996 専守防衛を国是とする自衛隊の74式戦車は873両が生産、併せて戦車の行動を阻害する地皺に富んだ狭隘地形という我が国土を逆に味方とするべく、車体前後を200mmづつ傾斜させる油気圧懸架装置を採用、これにより地形に車体を適合させ、敵に対する車体の暴露面積を最小限とする戦闘や、俯角仰角の制約を取り払った運用を可能とする構造です。

Fimg_6004 三菱重工が完成させたこの戦車は、登場当時に我が国の経済力が躍進を続け世界第二位の水準となったことと併せ大きな注目を浴び、この技術的基盤に依拠し、第二世代戦車が断念した防御力の飛躍的向上を目指す第三世代戦車として90式戦車を国産開発、続いて戦車の機動力を戦術戦略面から大きく高めた10式戦車の国産開発へ進んだのは御存じの通り。

Fimg_6011 この74式戦車ですが、油気圧懸架装置の整備に導入当初苦労を強いられ、今日では流石に来年で制式化40年を迎えることから旧式化し、特に暗視装置は旧式の赤外線投射型であるため近年の熱線暗視装置と比べ敵に暴露し易く、防御力も対戦車火器の普及度合いが制式化当時と比較できないほど高まっているため、古いことは否めません。

Fimg_6022 ただ、105mm砲の威力はAPFSDS弾である91式徹甲弾の制式化により今なお世界最新の戦車に対し脅威を与える水準を維持しており、地形を利用するという運用に徹する限り、まだまだ我が国への侵略の野心に対し立ちはだかる性能を有しています。もっとも、普通科隊員が戦闘防弾チョッキを身につけるように砲塔周囲に中空装甲の追加防御を施し、普通科隊員が鉄帽に暗視装置を取り付けるように砲手照準器前に暗視装置を取り付けられれば、よかったのですが。

Fimg_6027 戦車の威力は、打撃力と機動力に防御力という装備の三要素を全て高く維持している点で、打撃力はミサイルと異なり最低射程が無い直接照準方式、機動力は森林などの木々を押し倒し河川を乗り越えるもので、防御力も陸上装備体系では最も上のもの、地形を選ばず機動でき、必要な火力と投射する戦車は国土防衛に不可欠で、こちらに戦車があれば相手も戦車か相応の打撃力を用意せざるを得ません。

Fimg_6031 一部の軍事への理解が乏しい方は、日本は縦深が小さく戦車が上陸するようではすでに負け、と持論を振りまき、軍縮論者や平和愛好家に利用されるのですが、それでは戦車が貨物船などで奇襲上陸しただけで呆気なく敗北という笑える結論に至ってしまいます。日本国土は広く、高山部もあります、この国土を防衛するには戦車が必要であり、如何に海空の防衛が充実しようとも、これは不変の原理と言えるでしょう。

Fimg_6040 第4飛行隊の観閲飛行、佐賀県目達原駐屯地からの参加です。飛行隊は隊本部と飛行班に整備班より成り、観測ヘリコプターと多用途ヘリコプターを数機づつ運用しています。かつては観測ヘリコプターのみ10機程度を運用していましたが、90年代より各師団への多用途ヘリコプター配備が開始され、4機程度が装備され、観測ヘリコプターとともに飛行隊を編成しています。

Fimg_6042 OH-6D観測ヘリコプター、野戦特科部隊の榴弾砲が長距離射撃を行う際、その着弾観測を行い精度を高めると共に、指揮官連絡や軽輸送、索敵任務や災害派遣時の情報収集に活躍する機体です。着弾観測任務や情報収集任務などは、カメラの性能向上、例えば福島第一原発事故に際してはNHK報道機が30km以上離れた地域から原発への放水実施を空中撮影に成功していますが、多用途ヘリへ高度な観測器材を搭載し、遠距離からの観測や情報収集に充て、補完として無人機を併せて運用してもいいのではないか、と思うところ。

Fimg_6046 UH-1J多用途ヘリコプター、11名の完全武装要員を空中機動させ、重機関銃の搭載による地域制圧や、砲弾に斥候車両などの空輸、救急搬送に情報伝送や映像撮影など、様々な任務に対応するヘリコプターです。11名の空中機動、これを飛行隊の数機で実施するというのは心細く感じられるやもしれませんが、言い換えればレンジャー隊員を小隊規模で投入できるという意味でもあり、意義は小さくはありません。

Fimg_6061 祝賀飛行はこのように行われました。師団行事などでは編隊を組んで一挙に式典会場上空を航過飛行してしまうのですが、福岡駐屯地ではマンションの前をやや高度を下げ、一機一機式典会場を飛行してゆく、なかなか他では見られない飛行を行ってくれました。

Fimg_6086 観閲行進を第4音楽隊の隊員が会場を進み、幕を下ろしてゆきます。徒歩行進にあわせて演奏された抜刀隊と車両観閲行進のテンポと共に演奏された祝典ギャロップ、写真特集にあるように設営するにも何度も分けて掲載する行進の最中、寸秒も滞ることなく音楽演奏を続けた第4音楽隊の隊員です。

Fimg_6099 音楽隊の隊員は師団の部隊行事や師団管区内の民間行事などでの演奏を行うため、特に日曜日などは式典があれば必ず展開、もしかしたらば陸上自衛隊にあってもっとも日曜日から縁が遠い任務なのかもしれません。そして音楽を職業としているだけあり、その実力はかなりのもの。

Fimg_6109 観閲行進の修了と共に、観閲部隊指揮官である副師団長が乗車した82式指揮通信車とともに会場を後にします。そして式典会場の中央にて撮影を行っていた地元を中心とする報道陣も観閲行進の撮影を完了し、撤収を開始します。こういいますのも、観閲行進の完了と共に次の行事が始まりますから、ね。

Fimg_6113 国旗退場。式典に先立ち式典会場に掲げられた日章旗が、観閲台にあって記念式典と観閲行進を見守ったのち、この観閲行進の完了とともに観閲台より旗手とともに車両へ、そして式典会場を退場してゆき、来場者は国旗入場の時と同じく、起立して会場を後にする国旗を見送ります。

Fimg_6119 そして会場では訓練展示に向け、模擬戦の準備が開始されました。福岡駐屯地は見ての通り、マンションに囲まれており、模擬戦となれば砲声も凄いこととなるのでしょうが、先ほどの祝賀飛行の低空に降りて行った通り、周辺の方々の理解と支援があるのでしょう、災害派遣展示ではなく野戦の訓練展示が為されているのがわかる。

Fimg_6124 訓練展示準備には時間が掛かります、何故なら先ほどまで記念式典と観閲行進が行われていた場所ですからね。この時間を隊員の喇叭演奏などで有効活用します。当方は移動せずこの場所で訓練展示を撮影することとしました、訓練展示の様子は次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 淡路島M6.3地震(2013.0... | トップ | 舞鶴地方隊舞鶴展示訓練20... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はるなさま (ドナルド)
2013-04-17 01:17:39
はるなさま

戦車は必要な装備ですし、お気持ちは分かりますが、「戦車が貨物船などで奇襲上陸しただけで呆気なく敗北」は、ちょっといい過ぎな気がします。

20両やそこらの戦車が上陸しても、こちらの体制が整えば、陸自のATM(96式MPMS、中多)やAH-64D(ヘルファイア)などで、撃破できます。ただし、それら重ATMが前線に到着するまでは、甚大な損害が出るでしょうし、そもそもこうしたATMの配備を牽制/邪魔する別の部隊も、敵は用意してくるでしょう。

また、相手が20両でなく、100両となると、話は変わって来ますが、まあ、100両を奇襲揚陸されるような事態を許すとすれば、情報力不足、対処能力不足の至りで、いずれにせよ敗北は必至でしょうね(苦笑)。

昨今の兵器体系で、特に陸軍系では、「万能/最強/圧倒」というものは存在しないと思います。「最強兵器」には大抵それに対応する手段が開発されています。ただし、これら対応手段が用意される前に、目的を達してしまうことは不可能ではなく、それ故に、攻撃側にも防御側にも、戦略的/戦術的な機動力が求められるわけです。敵が少ない所を突破し、要所を制圧して、以後の戦闘を圧倒的に有利に進める、これが戦術の基本です。(敵が待ち構えている所に突撃したら、戦車といえども苦戦する)。

戦いには、こうした得手不得手、いわば「じゃんけん」的な要素があるため、戦車という「グー」を持たないことは、戦術上、大きな制約になりますので、だから戦車は必要である、というのが私の理解です。
返信する
ドナルド 様 (はるな)
2013-04-17 08:44:33
ドナルド 様

他の記事の方への書き込みでそういうものがあり、また、タイトルを忘れて恐縮ですが、アメリカの量産C級映画でそういうのがあったので、思わず書いてみました・・・

なんかニューヨークにテロリストがどこから入手したのか戦車の大群と貨物船でやってくる、的な作品です、なんか突っ込みどころ満載だそうで、観ておけばよかったと反省しているもの

ソマリア沖でやられたあの事件よりは前の作品でして・・・

今は反省しています・・・
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸上自衛隊 駐屯地祭」カテゴリの最新記事