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後継機は!?:F-2後継機F-22&F-35混成機案報道と後継機無き自衛隊機退役と定数割れ問題

2019-08-27 20:05:53 | 防衛・安全保障
■高額新型機続々採用の影で
 航空機というものは耐用年数が在り、世論は墜落事故に寛容でありません。これを越えて運用する場合は高い費用を要して延命するか飛行させない以外に選択肢がありません。

 F-2戦闘機後継機が今年度予算では棚上げされましたが、F-15戦闘機初期型の後継機としてF-35A戦闘機とF-35B戦闘機の取得が昨年発表、F-4戦闘機に続き老朽化が進む戦闘機の後継が定まりました。またUH-1J多用途ヘリコプター後継機にUH-2が開発、SH-60哨戒ヘリコプター補完にMQ-8無人ヘリコプターの取得、一見順調に近代化が進むよう見える。

 防衛予算概算要求の公表が行われる季節となりました。来年度予算には延期が続いてきましたF-2戦闘機後継機開発開始が遂に盛り込まれる、との一部報道もありますが、有力視される後継機がF-22戦闘機機体にF-35アビオニクスを盛り込むという非常に高価な試案とも。こうした中、後継機が棚上げされたまま深刻な状況にある航空機を列挙してみたい。

 OH-6D観測ヘリコプター、180機ありましたが間もなく全廃となります。火砲の着弾観測を行う機種ではありますが、安価且つ軽量であり師団飛行隊や旅団飛行隊の連絡機や情報収集機として重要な航空機であり、例えば大規模災害では最初に離陸し情報収集を行います。無人機でも出来そうですが自衛隊には百数十km先へ進出できる無人機はごく僅かだ。

 OH-6D後継機としてOH-1観測ヘリコプターが量産されていました、川崎重工製で当初は250機の量産計画がありましたが、コスト増大により31機で量産は終了、OH-6Dは耐用年数限界による自然減が続いています。OH-1は不時着事故の影響でエンジン改修が必要、まだ復帰の数は僅か、富士総合火力演習には山口県から残る僅かなOH-6Dが参加しました。

 AH-1S対戦車ヘリコプター、96機が導入され16機編成の対戦車ヘリコプター隊が全国の方面隊に配置されました、地皺の多い我が国では生存性と機動力の大きな航空対戦車打撃力は冷戦時代に死活的に必要な機種でした。しかし、後継機調達中断のまま自然減が続き、現防衛大綱では対戦車ヘリコプター部隊を中央等に集約する事で部隊数削減に踏切ります。

 AH-1S後継機としてAH-64D戦闘ヘリコプター66機が取得される計画でした、しかし北朝鮮弾道ミサイル防衛という新しい任務へ調達予算が圧迫され13機で調達終了、後継機無きAH-1Sの退役が続きます。13機では飛行隊さえ維持が難しい。航空打撃力は島嶼部防衛を筆頭に必要であり、中央に集約し沖縄や北海道に即応できるほど航続距離はありません。

 T-4練習機、航空教育集団を筆頭に212機が配備され、ジェット機への初歩を学ぶ基本操縦課程と戦闘機操縦基礎過程として絶対に必要な航空機です。また、第一線の航空団にも連絡機や多用途機として、更には戦闘機を離れた指揮官の技量維持に用いられ、この任務に戦闘機を用いた場合は桁違いの運用費の高さが防衛費を圧迫、その点でも重要な機体です。

 T-4練習機後継機で問題なのは指針が不明確である点です、運用開始は1988年で古い。T-4練習機を第五世代機要員養成用にグラスコックピット化させ再生産する選択肢、アメリカが調達するボーイングT-Xの自衛隊取得、M-346練習機等のライセンス生産が考えられます。問題なのは後継機が200機以上と破格に多く性能と費用を見極めねばなりません。

 RF-4戦術偵察機、こちらは来年に偵察航空隊そのものが廃止される予定です。政策として後継機は不要、と位置づけられたのですが元々はRF-15としてF-35導入により余剰となる初期型のF-15J戦闘機へ偵察ポッドを搭載し偵察機化する構想がありました。しかし、この種の技術が豊富な三菱電機を退け東芝の安価な案を採用、結果実用性無しと開発失敗へ。

 RF-4後継機はRQ-4無人偵察機が充てられる事でしょう。RQ-4はF-4を無人機に改造した、のではなく37時間の滞空時間を有し画像を即時電子送信可能である高高度偵察機です。ただ、現在戦術偵察機は大規模災害の情報収集に不可欠であり、RF-4は情報伝送能力に劣りますが速力は遥かに高く、そのままRQ-4に置換えられるものなのか、考えさせられます。

 YS-11E系統の電子情報収集機や1994年より運用開始となったU-125A救難機、冷静に考えてゆきますとそろそろ耐用年数を迎える航空機というものは此れだけではありません。そしてCH-47JA輸送ヘリコプターやSH-60K哨戒ヘリコプター等の機体も、上記の機体調達に優先度を与えて調達数を削減するならば、均衡が崩れるのは言うまでもありません。

 配備順調な航空機もあります、C-1輸送機後継機のC-2輸送機は漸く一個飛行隊を編成完結できました。同時期に開発されたP-1哨戒機も予定よりは量産計画は遅れているのですが、前型のP-3C哨戒機延命改修により必要数は維持できています。冒頭に記した通りのUH-1J多用途ヘリコプター後継にUH-2多用途ヘリコプターが完成した事も朗報と云えましょう。

 しかし全く楽観はできません、F-2後継機にF-22戦闘機の改良型を開発する、その費用は未知数です。更にE-2D早期警戒機の増勢、KC-46空中給油輸送機の増勢、V-22輸送機の取得、場合によってはRQ-4無人偵察機の増勢、新たに防衛力が強化される中で対戦車ヘリコプターに練習機、観測ヘリコプターや偵察機は確実に耐用年数を減らせているのです。

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1 コメント

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Unknown (ねこまんま)
2019-08-31 17:55:02
日本にも技術が残る形で、戦闘機開発のベースが決まって欲しいです。バディとなる無人飛行機は何処になるのか気になりますね。

無人偵察機はMQでなく、RQタイプなので、何を偵察するのか、導入後のニュースを楽しみにしています。
やはり、偵察機の変わりなのかな?

個人的には、海上保安庁の無人の洋上観察機も気になります。
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