北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

浜田新防衛大臣と防衛費GDP2%問題【1】日米首脳会談にて対外公約化した防衛費増額問題と慎重な新大臣

2022-08-11 20:08:54 | 国際・政治
■防衛費は現状で良いのか
 岸田総理がウクライナ戦争を受けてのバイデン大統領との日米首脳会談において防衛費をGDP2%に増額するとの発言が国際公約化しつつあるなかです。防衛費については財政面での危惧を伊藤弘呉地方総監が記者会見でも述べている。

 浜田靖一防衛大臣再任、浜田新大臣は2008年から2009年にかけ防衛大臣を務め、特に北朝鮮弾道ミサイルに対する初の破壊措置命令など厳しい情勢変化に対応された方です。そして新大臣の発言としまして、防衛費倍増問題、岸田総理が示すGDP2%論については財政的裏付けが必要だ、との見解を示しています。確かのその通りで裏付けが無ければ持続しない。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋、日本が示した外交政策のように日本の政治は戦後最大の情勢変化に応じるべくダイナミズムの最中にあり、特に政治と防衛と外交は一体でなければなりません、故に現状のままでは良いとはとても言えないものなのですが、他方で、これらを支えるのは財政、財政なき政治展望は兵站無視の軍事作戦ともいえるでしょう。

 防衛費GDP2%という数字は良するに倍増であり、しかし2%に倍増させたからといって人員を二倍に増やして装備も駐屯地も二倍に増やせるという簡単な問題ではありません。他方で、防衛という国家事業は不可欠ではある一方でCOVID-19対策など衛生は勿論、日本には政治の責務が防衛だけではなく、社会福祉や公共事業、予算はどこでも重要なのです。

 V-22輸送機。予算について危惧するのは、GDP2%という数字が一人あるきしてしまうと、本来本当に必要なのかと考える装備品の調達を行い、予算は増えても必要な装備調達に予算が回らない可能性の方が高いのです、その筆頭として思い浮かんだのが、V-22可動翼航空機、ティルトローター機V-22を陸上自衛隊が17機調達した事に挙げられるでしょう。

 V-22を17機自衛隊が調達、この背景にはアルジェリアガスプラント邦人襲撃事件などの事態に対し邦人救出の手段が限られていた為の行動半径の大きな航空機の調達という必要性に迫られての、一種の政治決定ではありました。高性能であるのは確かなのですけれど、取得費用が陸上自衛隊のCH-47の二倍、航空自衛隊のUH-60Jの三倍強という単価でした。

 V-22よりも先に調達しなければならない航空機が多数あった中で、巨額の費用を投じてV-22を17機調達した、この費用があればCH-47輸送ヘリコプター34機分であり、これは喩えれば木更津の第1ヘリコプター団と同じ部隊をもう一つ九州か西日本に丸ごと新編できた費用でしたし、OH-6D観測ヘリコプターならば100機は調達できたという巨額です。

 V-22の調達が進む一方で、全国の師団飛行隊に配備されていたOH-6観測ヘリコプター、大災害の際に暗視装置と通信機を搭載し射の一番に離陸したOH-6Dは後継機の調達が中断したまま全機用途廃止となりました、任務の一部を無人機が担うという事ですが実現していない。このように、防衛費だけ示したとしても、使い方に不安が残るのです。ただし。

 防衛費が現状で良いのかと問われれば、首肯はとてもできません、ミサイル防衛や島嶼部防衛、邦人救出任務にサイバー領域の防衛、自衛隊の任務は防衛費の増額が頭打ちとなった小泉政権時代から順調に増大しています。それならば東京や大阪が北朝鮮の核ミサイルに焼かれて良いのか、沖縄戦が再発して良いのか問われるかもしれませんが、論点が違う。

 防衛費は任務が増えた中でスクラップアンドビルドで削り再編できる範疇で対応できる、限界を超えている。防衛費は増額が必要だと思う、なにしろ自衛隊の任務は一つとして欠けられないものがあり、災害派遣を消防庁に特別建設隊を造るとか別の施策を撮るのは下に現実でないし、島嶼部防衛も海上保安庁陸戦隊なんていう施策はまた、現実的ではない。

 防衛費は、GDP2%ありきではなく、まず何が不足しているのかという状況を把握した上で、これらの装備の調達予算を計上してゆき、持続性とともに如何に不足が指摘されようと御2%を超える事はあってはならない、こうした施策であることが第一と考えるのです。持続性というのは、急な調達は将来同時に老朽化し更新時期が来る、こうした視点も必要だ。

 ただしその上で。右側している装備は深刻なものがいくつか挙げられます。先ず筆頭はT-4練習機後継機、生産終了から長く、これがなければ戦闘機をどれだけ増やしても無意味です。そして装甲車、戦車と火砲を減らす一方で普通科の重視という施策を掲げているのですが普通科隊員は赤紙一枚で幾らでも替えが利く時代は百年近く前に既に終わっています。

 老朽化しており後継装備の調達が行われない中で任務上必要な装備、防衛上必要な装備であるが調達数が少なすぎ製造基盤を割り込み維持が現実的ではなくなる装備、こうしたものを先ず列挙する必要があります、そしてこれらを動かす人、隊員の処遇も重要課題でしょう、隊員は募集を掛ければ非正規処遇でも国守る使命感に燃え集う時代でもないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【映画講評】太平洋の嵐-ハワイ・ミッドウェイ大海空戦(1960)【1】80年前のミッドウェー海戦包む空気描く

2022-08-11 14:11:44 | 映画
■ミッドウェー海戦
 本日は“やまの日”ですので、まやの日、としまして摩耶に因んだ映画でも紹介しようと思いましたが“ホタルの墓”くらいしか摩耶は出ていません、すると今年は、となる。

 太平洋の嵐。終戦記念日が近づく今日この頃ではあります、平和の大切さ、これは終戦記念日でも開戦記念日でも、学校教育の場でも政治の場でも強調されるところなのですが、なにしろ日本は1945年以降戦争を経験していません、平和とはなにか、この論点さえも曖昧模糊として、平和とは戦争をしないこと、なんていうあきらめた観念さえ広がっている。

 映画で、戦争を考える。終戦記念日も近づいてきましたし、敢えてこの視点をお勧めしたいと思うところです。映画は映像記録でも客観的事実の収斂でもありません、故に作り手の意図が反映されていまして、初見では空気といいますか映画の臨場感に飲み込まれる憂慮もあるのですが、公開から長く経た映画は分析や論評も多く、客観的に見る事は可能だ。

 東宝映画が1960年4月26日に公開した映画なのですが、何故この“太平洋の嵐”という古い作品の鑑賞をお勧めするかといいますと、今年2022年は映画が描いているミッドウェー海戦から80年という節目の年となります、節目ということは様々な分析や特集がテレビや専門誌や新聞などで組まれるところですので、一つ共有知識を得られる作品として、ね。

 ハワイ・ミッドウェイ大海空戦。副題はこうした長いものとなっています。そしてその題目の通り、1960年の視点で真珠湾攻撃、日本式の表現ではハワイ海戦というところでしょうか、この開戦から始まり、ミッドウェー海戦という開戦から半年後の転機、そしてその後の始まりまで一連の歴史の流れを一人の海軍士官北見中尉の視点から描くというもの。

 飛龍の艦攻隊搭乗員、北見中尉は九七式艦上攻撃機の搭乗員であり、上官で飛行隊長の友永大尉を鶴田浩二、厳しい訓練により艦隊練度を局限にまで磨き上げた第二航空戦隊司令官山口少将を三船敏郎が演じています。人懐っこく格好いい夏木さんは1936年生まれということで戦争には参加していませんが、演じられる俳優の少なくない方は従軍経験がある。

 21世紀というのは凄い時代で、ミッドウェー海戦について知識を得たければ皆様今お使いの端末やPCで“ミッドウェー海戦”を検索すれば即座にかなり詳細な、個人研究から事実の羅列まで、入手できる点です。これが1990年代となりますと案外に難しかった、書店は大きな書店を含め海戦に関する専門書の揃いにも限度があった、2000年代初めでも同じか。

 ミッドウェー海戦そのものの知識は得られても、例えば細部や背景となりますと図書館か古書店、なんてところを探さなければなりません、光人社の専門書が揃っている書店ならば、調べる事は多少容易だったのでしょうが関心を持ったとしても一定程度行動半径を広げなければ分らないものだったのですが、21世紀はこの部分が進んだように思うのですね。

 しかし、当時の感覚となりますと、相当調べると共に当時の当事者、海戦に参加した人が難しくとも、当時海軍にいた方のお話しなどを集めなければ、どうしてそうなったのか、こうした背景といいますか空気というものは判りにくいように見えます、しかし、当時の空気を知ろうにも、いまわたしたちは現代の空気の中に居ますので、その感覚は判り難い。

 映画ですので、友永大尉の飛龍飛行長着任はハワイ海戦後ではなかったか、だからミッドウェー海戦での判断が云々、いまの時代ですので知る事が簡単ゆえの、映画の演出というものに気付くところではありますが、映画予告編に“父や兄が血で染めた歴史”という、戦争の記憶が今から見て東日本大震災くらいに鮮明な頃に描いた作品は空気もつたえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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震度5地震-道北宗谷地方で深夜に相次ぎ発生,将来の千島列島沖巨大地震懸念と観測ヘリコプター再整備の必要性

2022-08-11 07:00:39 | 防災・災害派遣
■臨時情報-北海道群発地震
 地震はいつ襲ってくるかが分らない点が脅威です。

 深夜の北海道北部宗谷地方を二度の強い揺れが襲いました、0035時に震度五弱の地震が発生し18分後にやはり宗谷地方に0053時に震度五強の地震が発生しています。その後の道北は有感地震が相次いでいますが、被害の報告はありません。なお、津波の危険性は無いとの事ですが、道北ではこのところ地震が相次いでおり、メカニズムの解明が急がれます。

 道北では活火山として利尻山と大雪山などが気象庁に監視されていますが、この他は十勝岳など今回の震源から離れた場所であり、二つの地震は震源の深さが10km程度といい、浅発地震である事から火山性地震ではないかを憂慮はしましたが。夜間の発生であり盆休みの季節ということもあり、まさに奇襲のような地震、情報の少なさは隔靴掻痒でした。

 災害派遣の都度考えさせられるのは、やはり観測ヘリコプターは必要ではないかという事です。自衛隊には災害派遣用無人航空機としてアナフィ無人機が広範に配備されていますし、近年は駐屯地祭でも飛行しています、これにより無人機があるのだから観測ヘリコプターによる情報収集は必要ないのではないか、こう反論があるのはりかいします、しかし。

 アナフィ無人機は操縦士の有視界内において飛行させるものですから、被災地に到着した災害派遣部隊が被災地の全容を推し量るには絶対必要な装備です、しかし大災害において重要なのは、どこが被災地なのかを把握する事で、現場についてから運用する無人機と、そもそも現場がどこなのかということを情報収集する観測ヘリコプターは別の区分と思う。

 スキャンイーグル無人機を使用するならば、行動半径が充分でカタパルトから発射出来る為に飛行場の無い駐屯地から発着する事も出来ますが、特定気象条件や雲のなかでも運用には制限が在り、この運用制限はアメリカのFAA連邦航空局型式証明においても明記されています、そして自衛隊での配備開始から9年が経ちますが災害派遣の実績はまだ無い。

 北海道では今回の震源からは離れている地域ですが、千島海溝地震という海溝型のマグニチュード9規模の巨大地震の発生が懸念されているところです。その時、というものが到来したときに想定外という方便を使わずに済むよう、この種の装備については真剣に考えて欲しいと思うところです。ヘリコプターは東日本大震災の頃よりも、大幅に減っている。

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