北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ロシア海軍に無人核攻撃潜水艦ポセイドン六機搭載可能の新原子力潜水艦ベルゴロドが竣工

2022-08-01 20:04:51 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本のASW対潜作戦体系を根本から見直さなければならないような脅威が出現しているようです。

 ロシア海軍は7月8日、無人核攻撃潜水艦ポセイドンを積む新原子力潜水艦ベルゴロドを受領した。これはプロジェクト09852原子力潜水艦として建造が進められ、プーチン大統領の2018年3月1日年次演説では新時代における核戦力投射手段として大陸間極超音速滑空兵器等と並び提示された、アメリカのミサイル防衛システムを突破する新兵器である。

 原子力潜水艦ベルゴロドそのものは新しい潜水艦ではない、船体はオスカーⅡ型巡航ミサイル原潜として1992年7月24日に起工式を迎えており、建造にほぼ30年を要した事となる、しかし、建造開始後にソ連崩壊後のロシア経済崩壊を受け度々長期間の建造中断を挟んだため、設計を変更し1993年4月6日に新型潜水艦ベルゴロドとして建造再開した。

 ベルゴロドは無人核攻撃潜水艦ポセイドンを搭載する、元々はヤーセン型原子力潜水艦と同じ巡航ミサイルシステム搭載が見込まれていたが2009年に設計変更となり、無人で長距離を航行し敵国成形中枢や主要軍港付近で戦略核を自爆させる新しいシステムを搭載することとなった。国営TASS通信によれば、潜水艦ベルゴロドは太平洋艦隊に配備される。
■タイフーン級以上
 今回ロシアが竣工させた潜水艦は大きさ一つとっても異例の巨大さを誇っています。

 ロシア海軍が竣工させた新潜水艦ベルゴロドは全長では世界最長の潜水艦となった、元々の設計はオスカーⅡ型として知られるプロジェクト949A巡航ミサイル潜水艦で、全長は154mとなっている、しかし設計の変更により進水式を迎えた時点では184mとなっており、ソ連時代に世界最大の潜水艦として建造されたタイフーン級よりも実に11mも長い。

 ベルゴロドは水中排水量30000t、排水量で視ればタイフーン級よりもわずかに小さい、搭載するのはOK-650M.02加圧水型原子炉2基でOK-650M原子炉はシエラ級原潜時代から採用され改良を重ねつづけている原子炉である。なお、ベルゴロドは固有の巡幸ミサイルやSLBM潜水艦発射弾道弾は搭載しない、その武器は無人潜水艦ポセイドンの運用である。

 プロジェクト09852原子力潜水艦は1番艦が竣工したが、最終的に4隻の建造が見込まれていて、2隻を太平洋艦隊に、そして2隻を北方艦隊に配備する構想だ。無人潜水艦ポセイドンは各艦に6隻の搭載が可能とされ、最大24機のポセイドンが運用されることとなろう。基本的に核攻撃用の無人原潜であるが通常弾頭型も開発、原子炉もろとも命中する設計だ。
■原子炉と水爆で自爆攻撃
 原子力潜水艦や戦略ミサイル原潜は過去に幾つもありましたが今回の潜水艦はAIで自律航行する無人核攻撃潜水艦を搭載している点が特色です。

 ロシア海軍原潜ベルゴロドに6機搭載される無人核攻撃潜水艦ポセイドンについて。ロシアではСтатус-6としてサンクトペテルブルクのルビーン設計局において設計された無人潜水艦です、無人潜水艦である為にセイル構造物などは無く魚雷を巨大化させたような形状、実物は公開されていませんがCGがロシア国防省により盛んに誇示されている。

 重量は100t、排水量ではなく重量として表現されているのは無人潜水艦よりも実質は大型魚雷である事を示しているのでしょうか、全長は20mで直径2m、恰も小説“レッドオクトーバーを追え”にて巨大なトンネル状構造物を有する新型潜水艦の用途にSLBM潜水艦発射弾道弾の水中発射システムと解釈する描写がありましたが、その大きさに重なるもの。

 15MW以上の出力の重水炉が搭載され、ロシア側の発表によれば先端から微細バブルを放出し高速航行するスーパーキャビテーション方式を採用し水中速力は100ノットに達し、先行深度は最大1000m、航続距離は10000km以上ありAI人工知能により航行するという。2MTの水爆を搭載するとしていますが、本型は2MT弾頭数十個を搭載し得る大きさです。
■新しい脅威として
 核兵器については相互確証破壊という相手に発射を思いとどまらせる恐怖の均衡が核戦争の一歩手前で踏みとどまらせる現状なのですが、この発想を無人核攻撃潜水艦は核戦争の方へ一歩すすめるのでしょうか。

 無人核攻撃潜水艦ポセイドンは核抑止の前提に影響を与えるのでしょうか。ロシア海軍は無人核攻撃潜水艦ポセイドンを搭載する新型原潜ベルゴロドを竣工させました、これは親子潜水艦や潜水母艦というべき新しい装備で、発想としては日本の海大型伊号潜水艦と人間魚雷回天を搭載した様式に似ています、ポセイドンは潜水艦の下部に装備されますが。

 無人核攻撃潜水艦ポセイドンには現在のところ2メガトンの核弾頭が搭載され、この他に推進用原子炉として15MW以上の出力の重水炉が搭載、無人ですので海中を航行中に原子炉に万一の事が在ったとしても保安要員はいません、また放射性廃棄物の管理や海中への漏えい危険などについても精査可能な確たる情報はロシアから発表されていない現状です。

 海大型伊号潜水艦と人間魚雷回天の運用は人間をそのまま相手に自爆攻撃を強いるという非人道的なものでしたが、無人核攻撃潜水艦ポセイドンは無人ではあるが核攻撃を前提とした設計で別の次元の非人道兵器となっており、通常弾頭型も開発されていますが、原潜の自爆攻撃は搭載する原子炉を核燃料ごと衝突させる為、広範な海洋汚染が必至でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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F-35マーチンベイカー射出座席問題飛行停止機種拡大,自衛隊F-15やF-2はレイセオン射出座席を採用

2022-08-01 07:00:41 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-F35飛行停止
 影響が拡大するマーチンベイカー射出座席問題ですが、幸い航空自衛隊の戦闘機の大半はレイセオン製射出座席を採用しており影響は局限されそうです。

 自衛隊F-35戦闘機はマーチンベイカー社製射出座席不具合の影響を受けていないもようです、これは7月31日に行われた航空自衛隊千歳基地航空祭において三沢基地から参加したF-35戦闘機の飛行展示が予定通り実施されたためで、いまのところ自衛隊機の運用に対しても顕著な影響はでていないものとおもわれます。採用したF-4EJは既に退役している。

 F-35の射出座席はマーチンベイカーMk16であり、F-35戦闘機の他にフランス製戦闘機ラファール、欧州共同開発のユーロファイターEF-2000戦闘機、練習機ではスイスのピラタスPC-9練習機、アメリカ空軍で運用されるT-38練習機やT-6練習機などで採用されており、T-38練習機とT-6練習機については一部の機体に運用停止等影響が出ているようです。

 自衛隊の戦闘機についてですが、F-15戦闘機とF-2戦闘機についてはレイセオン社製ACES IIが射出座席として採用されており影響はありません、また在日米軍では空軍が嘉手納基地に配備するF-15C戦闘機と三沢基地に配備しているF-16戦闘機も射出座席はACES IIであるため影響はありません、ACES IIはマクダネルダグラス社が設計した射出座席です。

 アメリカ空軍はマーチンベイカー社製射出座席不具合を受け数百機の練習機を運用停止しています、これは同時に判明したF-35戦闘機射出座席問題と重なるもので、緊急時に用いる射出座席の点火装置に用いられているマグネシウム粉末が欠損して緊急時に射出できない懸念がある為といい、T-38練習機やT-6練習機の大多数が運用停止機に該当します。

 運用停止されているのはT-38高等練習機203機とT-6練習機76機、空軍の練習機に加えて海軍の練習機も含まれます。一時的な運用停止となっていますが、運用再開の時期は未定です。唯一の楽観点は、射出座席不良の原因部分と交換部分が明確となている点で、T-38高等練習機の半分以上とT-6練習機の八割以上は運用可能な状態にあるとされています。

 空軍の問題ですが、併せて海軍のF/A-18C戦闘攻撃機やF/A-18E戦闘攻撃機、EA-18G戦闘攻撃機にも問題は拡大しています、こちらはF-35戦闘機のマーチンベイカーMk16ではなくマーチンベイカーMk10が採用されているのですが、問題は射出座席に点火するCADカートリッジ作動装置の問題であり、欠陥製造ロットの飛行を停止させているようです。

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