北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ペロシ下院議長台湾訪問-米中の譲れぬ一線と過去の"1996年-第三次台湾海峡危機"中国軍ミサイル演習

2022-08-06 20:18:45 | 国際・政治
■沖縄隣接の米中台緊張
 台湾海峡危機を対岸の火事と思うのは自由ですが細い水路の対岸にあるのがアコーディオン工場やモノマネ教室ではなくコンビナートや原発であったらどうでしょうか。

 ペロシ下院議長の台湾訪問は中国がその可能性を封じる為に様々な施策を行い、早速の軍事演習を行っていました。しかし、中国が軍事演習を行ったので台湾訪問を断念したとなれば、それは中国に“軍事力で脅せばアメリカは見逃す”という前例を作る事となる為、アメリカは引けないという構図がありました。しかし、中国の圧力は軍事性を帯びてゆく。

 嘉手納基地にKC-135空中給油機22機が集結した、非常に驚かされたのですが2日夕刻までにアメリカ空軍は沖縄県に異例の規模の空中給油機を集めました、そして2日2000時にKC-135空中給油機5機が離陸し、続くように嘉手納基地第18航空団所属のF-15C戦闘機8機が離陸します、これはクアラルンプールから台北に向かう下院議長の護衛と思われる。

 原子力空母ロナルドレーガンの台湾東方海域への展開、アメリカ海軍は2日、通常の訓練一環として原子力空母ロナルドレーガンとイージス艦などを随伴艦として4隻を台湾海峡東方に展開させていると発表しました。展開したのは原子力空母ロナルドレーガン、強襲揚陸艦トリポリ、ミサイル巡洋艦アンティータム、ミサイル駆逐艦ヒギンズとのこと。

 強襲揚陸艦トリポリはF-35B戦闘機を搭載しており、第五世代戦闘機であるステルス機の搭載により中国の航空母艦に対抗出来る水準となっています。他方、この頃中国は台湾海峡中間線よりも台湾側へ戦闘機等を展開させており、一歩双方が緊張緩和以外の方向に進むならば、第四次台湾海峡危機へと展開し得る状況でした。いや米軍は台湾東方ですが。

 第三次台湾海峡危機、今回のペロシ下院議長訪問に伴う一連の緊張は1995年から1996年にかけての第三次台湾海峡危機との類似性が指摘されます、もちろん当時とはかなり情勢は異なりますが、共通点は台湾の独自性を示す選択肢に対しては中国は軍事力の使用も躊躇しない軍事的示威行動を執る点、そしてアメリカが軍事恫喝に屈しない点の二番煎じ。

 李登輝総統のもとでの中華民国初の民主的な国家元首総統選挙、この施策に対し大陸中国は台湾海峡において軍事演習を開始、弾道ミサイルを台湾近海に連続して打ち込み選挙を行わないよう圧力を掛けました、弾道ミサイル演習は徐々に台湾島付近に着弾海域を近づけており、このまま国共内戦の再戦、台湾領域への人民解放軍侵攻が必至とおもわれた。

 クリントンアメリカ大統領は、しかしこの明白な民主主義への軍事恫喝へ即応する事となりました、原子力空母ニミッツ、空母インディペンデンスの空母戦闘群を台湾海峡に遊弋させ、仮に空母に攻撃を加えられれば全面戦争も辞さないという覚悟を示した構図です。これは諸説あり風説ともいわれますが、中国共産党軍事委員会は真剣に攻撃を考えたとも。

 中国海軍と空軍の総力を挙げれば空母二隻を撃沈する事は可能だが海軍全ての戦力と空軍の半分を失う、諸説ありますが当時の人民解放軍はアメリカ空母、一隻で中堅国の空軍を凌駕する航空戦力と大量の艦艇により防衛されている空母戦闘群を二つ相手にした場合の中国軍の損耗を冷静に評価した上で、それでもやれというならばと現実を示したとされる。

 弾道ミサイル演習は台湾南部の高雄から25カイリ、台湾北部の基隆から35カイリという近距離に着弾し、いよいよかと懸念はありました。特に台湾の離島は澎湖諸島や馬祖諸島に金門島など中国本土から0.8kmの近距離という離島もあり、緊張が続いたのですが、アメリカ海軍の空母戦闘群が不動の圧力を掛け続け、ついに演習は終了が宣言されたのです。

 影響として、中国は面子を傷つけられた、特に海軍予算は八路軍時代からの陸上戦力重視を続けた中国にとり優先度が低く、これが響いたかたちとなりました。その後中国はロシアからのミサイル駆逐艦調達開始や国産艦建造強化の指針を示し、その後の中国経済発展と共に2010年ごろには日本の海上自衛隊に並び2010年代には追い抜く事となりました。

 空母遼寧、中国海軍初の航空母艦導入もこの第三次台湾海峡危機を受け、ウクライナからソ連の未成空母ワリヤーグを調達したものであり、今日の中国海軍はロシア海軍を凌駕する規模となっていますが、その始まりは第三次台湾海峡危機において、アメリカ海軍空母へ手も足も、ほんとうにでなかった、その厳しい戦訓を反映したものだといえましょう。

 今回、アメリカ海軍は台湾海峡には展開していません、ただ、第三次台湾海峡危機ほど中国も台湾近海にミサイルを撃ち込むような措置は、少なくともペロシ下院議長到着から現時点までは行っていません。一方でアメリカ海軍の作戦能力と中国海軍の戦力は、1996年と2022年とでは以前ほど広い訳ではなく、今後も日本の直ぐ南は長く緊張が続きそうです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-四条,チョコの氷山から柑橘のソルベと夏越しの冷気

2022-08-06 14:11:15 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 真夏の暑さに現実逃避する為に涼し真冬の風景を掲載しますが実際の暑さを払うにはまず体温を下げねばなりません。

 舞鶴か祇園祭か、多くの方は祇園祭を選ばれたようですけれどもわたしはそんな関係で絶対にCOVID-19さんを拾えない事情が出来まして、それこそ祇園祭の大賑わいはお付き合い程度で我慢しました次第、予感は当たるように京都府は毎日5000名規模の感染が続く。

 チョコ氷、さて祇園祭も後祭り山鉾巡行が終わりますと、あれ程凄い事になっていた四条河原町の雑踏も少し余裕がでてきまして、すると、夏ですから祇園祭も季節行事ですがわたしだけの暑気払いといいますか、夏越をしたくなるものです、それは四条河原町にある。

 リプトン四条店、紅茶のリプトンは一階では美味しいケーキ等を並べて素敵な雰囲気を醸していますが、二回ではこれらと薫り高い紅茶を愉しむ事が出来る、しかし、今は夏ですからやはりかき氷を頂きたいものなのですよ、そしてチョコ氷は季節のたのしみのひとつ。

 かき氷のチョコ味は、なにか昔の駄菓子的な風味をいまの年代に見合う感覚で再現した様な、そんな感じなのですが冷房の利く店内ではきめ細やかな削り氷は溶けるまで時間が在りまして、スプーンでさくさくと氷山を崩壊させないように慎重に、口に運ぶ、すばやく。

 瀬戸内レモンのソルベと清見オレンジのソルベ、柑橘系の氷菓が氷山から姿を現しました、チョコと柑橘は案外と合うのだなあ、不思議に思いつつ一緒に供せられます紅茶、和風の紅茶ですが口に運び間隔で感覚を戻しつつ、そして柑橘とチョコの調和を楽しみ続けます。

 真夏の京都は凄い、盆地で熱が蓋を閉められているような。ただしかき氷を頂いて空調の利いた店内から四条通に出まして、最初に吐き出す空気は、なにかマスクのなかでも冷たさと微かな柑橘の清涼感を湛えてくれまして、さて夏を越そうと気力がわいてくるよう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ東部戦線-ロシア軍一ヶ月の停滞,砲兵奮戦-バフムート市とアウディーイウカ市正面でロシア軍後退

2022-08-06 07:00:11 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 自衛隊は今あるMLRSを廃棄せずもっと大事にすべきだしMLRSだけでは任務は達成できない、そんな状況がこの一ヶ月間のウクライナ東部で展開しています。

 ロシア軍のウクライナ東部における攻勢が一ヶ月以上停滞しており、逆にウクライナ南部ではウクライナ軍の反撃が始りました。これは七月五日に“戦場はドネツク州へ,セヴェロドネツクとリシチャンシク失陥”という話題をお伝えし、クラマトルスクへのロシア軍侵攻兆候を紹介しましたが、その前のバフムート市近郊で数回に渡り撃退されています。

 ウクライナ軍参謀本部は8月3日、バフムート市近郊での戦闘についての概況を発表し、先ず第一次攻勢はバフムート北西部からの信仰を試みたもののロシア軍が撃退され、続いて西に30km離れた近郊で再度攻撃を試みるも前進できず、後退に転じたとしています。攻勢は続いているが、ウクライナ軍火砲が優勢にありロシア軍を撃退する原動力という。

 アウディーイウカ市に対してもロシア軍は転進を試みたが撃退されているとのこと。注目すべき点はロシア軍が戦果を挙げずに後退を始めているとの事です、何が有ったのでしょうか。ロシア軍は南部のマリウポリを占領した後に東部地域に戦力を抽出し集中していましたが、東部は現状の通り。こうした中でウクライナ軍は南部地域でも反撃を開始した。

 砲兵の優位が逆転しつつある、ウクライナでのロシア軍攻撃失敗は、元々強力なウクライナ軍砲兵に対してロシア軍砲兵が充分な火力を発揮出来なくなったために対抗出来なくなっている、ということです。ウクライナには旧式火砲が多数あり、しかしロシア軍にも新旧の膨大な火砲やロケット砲があったために当初はウクライナ軍砲兵を封じていたかたち。

 HIMARS,やはり今回のウクライナ軍砲兵が逆転しつつあるのはアメリカが供与した20両のHIMARSでしょう、GPS誘導ロケット弾により長距離を誤差1m前後で正確に射撃しています、これがロシア軍の弾薬集積所を正確に射撃しており、弾薬集積所はBBCがイギリス戦争研究所の分析として70カ所が破壊されているという。ロシア軍は弾薬不足に。

 ロシア軍の砲撃は精度がもともと低いのを大量の砲撃により精度を補っていた為、弾薬集積所を破壊されると分散する必要が生じ、膨大な弾薬消費に対応できなくなります、するとウクライナ軍砲兵が火力投射量の低下したロシア砲兵に対抗出来るという構図です。砲兵が優位を保っている為、ウクライナ軍歩兵部隊や戦車部隊も優位を保てる構図なのです。

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