■週報:世界の防衛,最新11論点
戦車の時代はまだまだ続くような今回は戦車等陸上装備を中心に紹介することとしましょう。

ドイツ連邦軍のレオパルド2A7戦車アクティブ防護システム搭載は当面23両に対し実施される方針です。第三世代戦車の鏑矢となったレオパルド2主力戦車はセラミックとチタン合金を積層した複合装甲が採用されていますが、近年の対戦車ミサイル威力増大は著しく、トロフィーアクティヴ防護システムを搭載し命中を回避する選択肢がとられています。

トロフィーアクティヴ防護システムは、ドイツ連邦軍が23セットと迎撃用擲弾586発を4800万ドルにより取得、ドイツ連邦軍の戦車小隊は3両編成方式を採用しているため、少なくとも7個小隊が適合することとなります。ドイツ連邦軍はトロフィー搭載のレオパルド2A7をUrbOp都市型としており、都市型戦闘任務を行う部隊へ配備する方針のもよう。
■LAV-6.0自衛隊選定脱落
LAV-6.0はLAV-3と比べると大分太い形状となりまして発展限界を超えてしまったように見えるものでした、ピラーニャの設計も古いからでしょうね。

防衛省は陸上次期装甲車について最終候補三車種の一つLAV-6.0を選外とする発表を行いました。LAV-6.0はスイスのピラニア社製LAVシリーズの最新型で、カナダのジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が製造しています。アメリカ陸軍のストライカー装輪装甲車はLAV-Ⅲであり、LAVシリーズとしては防御力や拡張性で二世代進んだ車輛です。

ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社のLAV-6.0が選外になった背景には、防衛省は研究用として車両を有償で取得しており、契約期限内に試験車両が納入されなかった為、選定に進む事が出来なかったためとしています。この為、既に試作車が納入されたフィンランドのパトリアAMV装甲車と三菱重工の機動装甲車が最終選定に進む事となります。
■LAV-6.0代金の返納を要求
LAV-6.0は納入できなかったとはいえ代金は返してもらわねばなりません。

防衛省次期装輪装甲車選定についてジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が期限内に試験車両を納入出来なかった事で試験車両取得費用が国庫に返還されるかが、今後の焦点となるでしょう。防衛省は“次期装輪装甲車-試験用L型”としまして、2019年12月18日に双日エアロスペース社を通じて2両を5億5693万円で取得契約しているのです。

フィンランドのパトリアAMV装甲車と三菱重工の機動装甲車が最終選定に進む構図ですが、この種の装備に外国製が提示される事は近年まで稀有でした。ただ、仮に海外製装甲車が選定された場合でも、定期整備を開発国へ輸送し実施する事は近年合理的ではなく、採用国に合弁企業か現地工場を建設し、整備支援を行う事が近年の新しい潮流となっています。
■ドイツの戦車近代化改修計画
レオパルド2A7戦車は進化するのですが近代化改修費用の大きさをみると新車に切替える選択肢も考えてしまう。

ドイツ連邦軍のレオパルド2A7戦車がトロフィーアクティヴ防護システムの試験に成功しました。レオパルド2主力戦車は現在、欧州標準戦車と云うべき高い信頼性と戦闘能力や整備性と稼働率を維持していますが、全体試作車両が完成したのは1979年であり、当時しては高い防御力もレオパルド2A5として強化こそされましたが限界が指摘されています。

トロフィーアクティヴ防護システムは、イスラエルのラファエル社が開発した防護システムで、ミリ波レーダーにより対戦車ミサイルや擲弾の飛来を検知し、迎撃用擲弾を即座に投射しミサイルを命中前に撃墜するもの。ドイツ政府はイスラエル政府との間で2020年2月にレオパルド2主力戦車用にトロフィーシステム輸出の政府間協定を締結していました。

レオパルド2A7戦車とトロフィーシステムの搭載は、レオパルド2A6主力戦車からA7への近代化改修に際して装着する方式が採られています。トロフィーシステムの基幹となるミリ波レーダーはアンテナ部分を砲塔正面、特徴的な楔形装甲に増加装甲のような方式で搭載され、迎撃用擲弾は砲塔上部に搭載、これにより外見は大きく変容する事となります。
■フィンランドの戦車改修
T-72戦車とレオパルド2を並べて運用していたというのもリバランス政策というフィンランドならではのものと云うべきでしょう。

フィンランド国防省は保有するレオパルド2主力戦車の近代化改修を決定しました。フィンランド軍は冷戦時代末期にソ連製T-72主力戦車を取得しています、ノルディックバランス政策としてアメリカはT-72と同じ取得費用まで値下げしたM-1戦車を提案していますが、政治的中立性の観点からT-72を選定、しかしその能力は最高ではありませんでした。

レオパルド2主力戦車はフィンランド軍のT-72戦車を補うべく、2003年にドイツ連邦軍の余剰車輛からレオパルド2A4戦車124両を安価に取得し、予備部品として更に15両を2009年、続いて2014年にオランダ陸軍が戦車全廃の際に余剰となったレオパルド2A6戦車100両を安価に取得しています。現在レオパルド2A4戦車は予備役状態にあるとのこと。

今回の近代化改修では火器管制装置の能力向上が主眼とされ、ドイツのクライスマッファイ社が改修作業にあたるもようです。フィンランド国防省によれば契約は2022年に正式に行い、1000万ユーロの予算を想定、近代化改修プログラムをスウェーデンのレオパルド2改修に相乗りする形で安価におさめたいといい、2026年までに改修を完了する計画です。
■ロシアがBMPT配備へ
BMPTは面白い装備とも思えるのですが戦車定数を欧州通常戦力削減条約で制約された故の不思議な装備ともいえる。

ロシア陸軍はBMPTターミネーター戦車支援車を第90親衛機械化師団へ配備を開始しました。BMPT戦車支援車の2021年配備数は9両、スヴェルドロフスク兵営とチェリャビンスク兵営に分散配備されるもようです。BMPTは長期の試験を経て試験的な配備は進められていますが、ロシア中央軍管区への配備は第90親衛機械化師団が最初となります。

BMPTターミネーター戦車支援車はアフガニスタンやチェチェンでの戦闘を契機に開発され、戦車部隊に随伴し市街地や錯綜地形において掩護し防護する新しい発想の装備であり、歩兵や航空機と装甲車等の目標へ対処すべくT-72主力戦車の車体へ砲塔を2A42-30mm双連機関砲と9M120ミサイル発射装置及びAG-17D自動擲弾銃の混載砲塔を装備しています。
■太平洋艦隊へT-90配備
T-90とはなかなか北海道の90式戦車もまだまだ油断できないものが太平洋艦隊へ配備された。

ロシア軍は太平洋艦隊海軍歩兵部隊へ新型のT-80BV戦車配備を開始した。これは12月12日付のロシア太平洋艦隊広報発表として、ウラジオストク鉄道駅へ改良型戦車を積載した貨物列車が到着した旨が示され、貨車に新鋭改造型のT-80BVと思われる車両が含まれていた為である。改良型のT-80BVは少なくとも20両がウラジオストクへ搬入されている。

T-80BV戦車はT-80戦車の改良型で、稼働率に問題の在ったガスタービンエンジンを寒冷地用に改良しているほか、火器管制装置等も新型となっています。北極地方を除けば極東地域のシベリアやカムチャツカ半島はロシアの中でも厳寒な地域であり、太平洋艦隊海軍歩兵部隊へのT-80BV配備にはロシア軍のこの地方防衛への優先度の高さが垣間見えます。
■チェコ軍新型地対空ミサイル
イスラエル製の地対空ミサイルは銭jつミサイルとしての性能で水準はどの程度なのでしょうか。

チェコ軍はイスラエルよりスパイダー防空システムの導入を発表しました。2020年9月25日にチェコ政府とイスラエル政府が交渉開始を発表していますが、2021年10月5日に5億2000万ドルにて正式契約となりました。チェコはNATO加盟国であり、イスラエル製戦域防空システムがNATO欧州加盟国に採用されるのは、今回が初めてとなりました。

スパイダー防空システムはラファエル社が開発し、イスラエルには採用されない輸出用、パイソン空対空ミサイルを地上発射型としたもの。短射程赤外線誘導ミサイルであるパイソン派生のスパイダーは射程20kmとなっています、しかし改良型にアクティヴレーダー誘導方式のダービーミサイルを転用したものは射程が50kmと戦域防空能力を有している。

ロシア製地対空ミサイル及び中国製地対空ミサイルの長射程化が進むなか、欧州製及びアメリカ製地対空ミサイルは開発の優先度が冷戦後の地域紛争増大を前に後回しとされ、いまだにアメリカでは1970年代に設計されたペトリオットミサイルが戦域防空の主力です。イスラエル製ミサイルの射程は長くはありませんが、実戦経験豊富な国の設計といえます。
■安価無人機にM-72搭載
M-72も使い方によっては充分な性能を持っているのでしょうか。

ノルウェーのNammo社は安価なクワッドドローン無人機にM-72-LAW軽対戦車ロケットを搭載する試験を進めています。M-72-LAW軽対戦車ロケットは小銃擲弾をロケット推進させるもので、小銃擲弾でも対戦車HE型は命中精度は低く戦車の正面装甲に対しては効果が無いものの、装甲車両の上面にある薄い装甲部分を直撃した場合は効果が在ります。

M-72-LAW軽対戦車ロケットは第二世代戦車に対しても限定的な威力しか有さない事から1983年に製造を終了していますが、大量の備蓄があり機銃陣地や市街戦においては用途があるとして保管中です。Nammo社はこれを真下に向けクワッドドローンから投射する方式を開発、この種の安直な対戦車無人機は多種開発されていますが、普及増していません。
■スロバキア砲兵海外派遣
明らかな東側装備がNATOの一員として第一線へ向かうという21世紀の日常風景ですね。

スロバキア陸軍は11月30日、NATO大隊戦闘群へ自走榴弾砲部隊をポーランドへ前進させました。派遣されたのはズザナ2装輪自走榴弾砲で、バルト三国のラトビアへ配置されるNATO大隊戦闘群へ参加するべくポーランド国内のベモボピスキー演習場において練成訓練を実施しており、ドイツのPzH-2000自走榴弾砲と共に砲兵中隊を編成しています。

ズザナ2装輪自走榴弾砲は45口径155mm榴弾砲を砲塔に搭載し八輪大型装輪装甲車へ搭載した強力な自走砲です。スロバキア陸軍には25門のズザナ2装輪自走榴弾砲が配備される計画で、今回派遣されたのは数は少ないものの貴重な砲兵火力です。バルト三国はロシアの飛び地であるカリーニングラードに隣接しており、NATOの最前線となっています。
■MUSS2.0車両自衛システム
アクティヴ防御システムに比べれば一見地味に見えるのかもしれませんが重要なシステムだ。

スウェーデンのヘンゾルト社はMUSS2.0装甲戦闘車両自衛システムの開発を発表しました。これは現在ロシアやイスラエルなどが開発しているアクティヴ防護システムではありませんが、戦車や装甲戦闘車に対する脅威の検知能力が現在の二倍に強化され、また脅威方向についての表示能力も高く、車体の生存性を大きく強化できるとされています。

MUSS2.0装甲戦闘車両自衛システムはミサイル誘導レーザーの検知は勿論、レーザー測距装置など指向性レーザーを検知すると共にミサイルそのものや戦車砲弾の検知能力を有しており、MUSS2.0を搭載する車両はHFI敵対脅威表示装置により攻撃を加えてくる方向と識別が可能になるとされ、車体は発煙弾発射装置により即座に遮蔽回避行動が可能です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
戦車の時代はまだまだ続くような今回は戦車等陸上装備を中心に紹介することとしましょう。

ドイツ連邦軍のレオパルド2A7戦車アクティブ防護システム搭載は当面23両に対し実施される方針です。第三世代戦車の鏑矢となったレオパルド2主力戦車はセラミックとチタン合金を積層した複合装甲が採用されていますが、近年の対戦車ミサイル威力増大は著しく、トロフィーアクティヴ防護システムを搭載し命中を回避する選択肢がとられています。

トロフィーアクティヴ防護システムは、ドイツ連邦軍が23セットと迎撃用擲弾586発を4800万ドルにより取得、ドイツ連邦軍の戦車小隊は3両編成方式を採用しているため、少なくとも7個小隊が適合することとなります。ドイツ連邦軍はトロフィー搭載のレオパルド2A7をUrbOp都市型としており、都市型戦闘任務を行う部隊へ配備する方針のもよう。
■LAV-6.0自衛隊選定脱落
LAV-6.0はLAV-3と比べると大分太い形状となりまして発展限界を超えてしまったように見えるものでした、ピラーニャの設計も古いからでしょうね。

防衛省は陸上次期装甲車について最終候補三車種の一つLAV-6.0を選外とする発表を行いました。LAV-6.0はスイスのピラニア社製LAVシリーズの最新型で、カナダのジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が製造しています。アメリカ陸軍のストライカー装輪装甲車はLAV-Ⅲであり、LAVシリーズとしては防御力や拡張性で二世代進んだ車輛です。

ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社のLAV-6.0が選外になった背景には、防衛省は研究用として車両を有償で取得しており、契約期限内に試験車両が納入されなかった為、選定に進む事が出来なかったためとしています。この為、既に試作車が納入されたフィンランドのパトリアAMV装甲車と三菱重工の機動装甲車が最終選定に進む事となります。
■LAV-6.0代金の返納を要求
LAV-6.0は納入できなかったとはいえ代金は返してもらわねばなりません。

防衛省次期装輪装甲車選定についてジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が期限内に試験車両を納入出来なかった事で試験車両取得費用が国庫に返還されるかが、今後の焦点となるでしょう。防衛省は“次期装輪装甲車-試験用L型”としまして、2019年12月18日に双日エアロスペース社を通じて2両を5億5693万円で取得契約しているのです。

フィンランドのパトリアAMV装甲車と三菱重工の機動装甲車が最終選定に進む構図ですが、この種の装備に外国製が提示される事は近年まで稀有でした。ただ、仮に海外製装甲車が選定された場合でも、定期整備を開発国へ輸送し実施する事は近年合理的ではなく、採用国に合弁企業か現地工場を建設し、整備支援を行う事が近年の新しい潮流となっています。
■ドイツの戦車近代化改修計画
レオパルド2A7戦車は進化するのですが近代化改修費用の大きさをみると新車に切替える選択肢も考えてしまう。

ドイツ連邦軍のレオパルド2A7戦車がトロフィーアクティヴ防護システムの試験に成功しました。レオパルド2主力戦車は現在、欧州標準戦車と云うべき高い信頼性と戦闘能力や整備性と稼働率を維持していますが、全体試作車両が完成したのは1979年であり、当時しては高い防御力もレオパルド2A5として強化こそされましたが限界が指摘されています。

トロフィーアクティヴ防護システムは、イスラエルのラファエル社が開発した防護システムで、ミリ波レーダーにより対戦車ミサイルや擲弾の飛来を検知し、迎撃用擲弾を即座に投射しミサイルを命中前に撃墜するもの。ドイツ政府はイスラエル政府との間で2020年2月にレオパルド2主力戦車用にトロフィーシステム輸出の政府間協定を締結していました。

レオパルド2A7戦車とトロフィーシステムの搭載は、レオパルド2A6主力戦車からA7への近代化改修に際して装着する方式が採られています。トロフィーシステムの基幹となるミリ波レーダーはアンテナ部分を砲塔正面、特徴的な楔形装甲に増加装甲のような方式で搭載され、迎撃用擲弾は砲塔上部に搭載、これにより外見は大きく変容する事となります。
■フィンランドの戦車改修
T-72戦車とレオパルド2を並べて運用していたというのもリバランス政策というフィンランドならではのものと云うべきでしょう。

フィンランド国防省は保有するレオパルド2主力戦車の近代化改修を決定しました。フィンランド軍は冷戦時代末期にソ連製T-72主力戦車を取得しています、ノルディックバランス政策としてアメリカはT-72と同じ取得費用まで値下げしたM-1戦車を提案していますが、政治的中立性の観点からT-72を選定、しかしその能力は最高ではありませんでした。

レオパルド2主力戦車はフィンランド軍のT-72戦車を補うべく、2003年にドイツ連邦軍の余剰車輛からレオパルド2A4戦車124両を安価に取得し、予備部品として更に15両を2009年、続いて2014年にオランダ陸軍が戦車全廃の際に余剰となったレオパルド2A6戦車100両を安価に取得しています。現在レオパルド2A4戦車は予備役状態にあるとのこと。

今回の近代化改修では火器管制装置の能力向上が主眼とされ、ドイツのクライスマッファイ社が改修作業にあたるもようです。フィンランド国防省によれば契約は2022年に正式に行い、1000万ユーロの予算を想定、近代化改修プログラムをスウェーデンのレオパルド2改修に相乗りする形で安価におさめたいといい、2026年までに改修を完了する計画です。
■ロシアがBMPT配備へ
BMPTは面白い装備とも思えるのですが戦車定数を欧州通常戦力削減条約で制約された故の不思議な装備ともいえる。

ロシア陸軍はBMPTターミネーター戦車支援車を第90親衛機械化師団へ配備を開始しました。BMPT戦車支援車の2021年配備数は9両、スヴェルドロフスク兵営とチェリャビンスク兵営に分散配備されるもようです。BMPTは長期の試験を経て試験的な配備は進められていますが、ロシア中央軍管区への配備は第90親衛機械化師団が最初となります。

BMPTターミネーター戦車支援車はアフガニスタンやチェチェンでの戦闘を契機に開発され、戦車部隊に随伴し市街地や錯綜地形において掩護し防護する新しい発想の装備であり、歩兵や航空機と装甲車等の目標へ対処すべくT-72主力戦車の車体へ砲塔を2A42-30mm双連機関砲と9M120ミサイル発射装置及びAG-17D自動擲弾銃の混載砲塔を装備しています。
■太平洋艦隊へT-90配備
T-90とはなかなか北海道の90式戦車もまだまだ油断できないものが太平洋艦隊へ配備された。

ロシア軍は太平洋艦隊海軍歩兵部隊へ新型のT-80BV戦車配備を開始した。これは12月12日付のロシア太平洋艦隊広報発表として、ウラジオストク鉄道駅へ改良型戦車を積載した貨物列車が到着した旨が示され、貨車に新鋭改造型のT-80BVと思われる車両が含まれていた為である。改良型のT-80BVは少なくとも20両がウラジオストクへ搬入されている。

T-80BV戦車はT-80戦車の改良型で、稼働率に問題の在ったガスタービンエンジンを寒冷地用に改良しているほか、火器管制装置等も新型となっています。北極地方を除けば極東地域のシベリアやカムチャツカ半島はロシアの中でも厳寒な地域であり、太平洋艦隊海軍歩兵部隊へのT-80BV配備にはロシア軍のこの地方防衛への優先度の高さが垣間見えます。
■チェコ軍新型地対空ミサイル
イスラエル製の地対空ミサイルは銭jつミサイルとしての性能で水準はどの程度なのでしょうか。

チェコ軍はイスラエルよりスパイダー防空システムの導入を発表しました。2020年9月25日にチェコ政府とイスラエル政府が交渉開始を発表していますが、2021年10月5日に5億2000万ドルにて正式契約となりました。チェコはNATO加盟国であり、イスラエル製戦域防空システムがNATO欧州加盟国に採用されるのは、今回が初めてとなりました。

スパイダー防空システムはラファエル社が開発し、イスラエルには採用されない輸出用、パイソン空対空ミサイルを地上発射型としたもの。短射程赤外線誘導ミサイルであるパイソン派生のスパイダーは射程20kmとなっています、しかし改良型にアクティヴレーダー誘導方式のダービーミサイルを転用したものは射程が50kmと戦域防空能力を有している。

ロシア製地対空ミサイル及び中国製地対空ミサイルの長射程化が進むなか、欧州製及びアメリカ製地対空ミサイルは開発の優先度が冷戦後の地域紛争増大を前に後回しとされ、いまだにアメリカでは1970年代に設計されたペトリオットミサイルが戦域防空の主力です。イスラエル製ミサイルの射程は長くはありませんが、実戦経験豊富な国の設計といえます。
■安価無人機にM-72搭載
M-72も使い方によっては充分な性能を持っているのでしょうか。

ノルウェーのNammo社は安価なクワッドドローン無人機にM-72-LAW軽対戦車ロケットを搭載する試験を進めています。M-72-LAW軽対戦車ロケットは小銃擲弾をロケット推進させるもので、小銃擲弾でも対戦車HE型は命中精度は低く戦車の正面装甲に対しては効果が無いものの、装甲車両の上面にある薄い装甲部分を直撃した場合は効果が在ります。

M-72-LAW軽対戦車ロケットは第二世代戦車に対しても限定的な威力しか有さない事から1983年に製造を終了していますが、大量の備蓄があり機銃陣地や市街戦においては用途があるとして保管中です。Nammo社はこれを真下に向けクワッドドローンから投射する方式を開発、この種の安直な対戦車無人機は多種開発されていますが、普及増していません。
■スロバキア砲兵海外派遣
明らかな東側装備がNATOの一員として第一線へ向かうという21世紀の日常風景ですね。

スロバキア陸軍は11月30日、NATO大隊戦闘群へ自走榴弾砲部隊をポーランドへ前進させました。派遣されたのはズザナ2装輪自走榴弾砲で、バルト三国のラトビアへ配置されるNATO大隊戦闘群へ参加するべくポーランド国内のベモボピスキー演習場において練成訓練を実施しており、ドイツのPzH-2000自走榴弾砲と共に砲兵中隊を編成しています。

ズザナ2装輪自走榴弾砲は45口径155mm榴弾砲を砲塔に搭載し八輪大型装輪装甲車へ搭載した強力な自走砲です。スロバキア陸軍には25門のズザナ2装輪自走榴弾砲が配備される計画で、今回派遣されたのは数は少ないものの貴重な砲兵火力です。バルト三国はロシアの飛び地であるカリーニングラードに隣接しており、NATOの最前線となっています。
■MUSS2.0車両自衛システム
アクティヴ防御システムに比べれば一見地味に見えるのかもしれませんが重要なシステムだ。

スウェーデンのヘンゾルト社はMUSS2.0装甲戦闘車両自衛システムの開発を発表しました。これは現在ロシアやイスラエルなどが開発しているアクティヴ防護システムではありませんが、戦車や装甲戦闘車に対する脅威の検知能力が現在の二倍に強化され、また脅威方向についての表示能力も高く、車体の生存性を大きく強化できるとされています。

MUSS2.0装甲戦闘車両自衛システムはミサイル誘導レーザーの検知は勿論、レーザー測距装置など指向性レーザーを検知すると共にミサイルそのものや戦車砲弾の検知能力を有しており、MUSS2.0を搭載する車両はHFI敵対脅威表示装置により攻撃を加えてくる方向と識別が可能になるとされ、車体は発煙弾発射装置により即座に遮蔽回避行動が可能です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)