北大路機関

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【防衛情報】F-35C原子力空母エイブラハムリンカーン搭載とA-10攻撃機連携模索のF-35B

2022-02-28 20:17:50 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はF-35を取り巻く不思議な仲間たちやF-35戦闘機関連の話題を中心にお伝えしましょう。

 アメリカ海兵隊のF-35C戦闘機が原子力空母エイブラハムリンカーン艦上へ配備開始となりました、空母はサンディエゴ軍港を出航、太平洋に展開しています。海軍ではなく海兵隊のF-35Cの空母配備は今回が初となる。これは第3海兵航空団の第314海兵攻撃飛行隊のF-35Cで、エイブラハムリンカーン艦上の第9空母航空団への統合運用となります。

 エイブラハムリンカーンはニミッツ級原子力空母の5番艦として1989年に竣工、ニミッツ級の中でも防御力強化により構造部分が各部で強化され始めて満載排水量が10万トンを超えた事で知られる。海兵隊はF/A-18C戦闘攻撃機の空母航空団運用を行ってきましたが、これがF-35Cへ置き換わったかたち。艦上では空母航空団隷下の統合運用が行われます。

 第314海兵攻撃飛行隊の愛称はブラックナイツで、第9空母航空団には戦闘機部隊として第14戦闘攻撃飛行隊“トップハターズ”、第41戦闘攻撃飛行隊“ブラックエイセス”、第151戦闘攻撃飛行隊“ヴィジランティス”が所属していますが、機種はF/A-18E/F戦闘攻撃機となっており、航空団では海兵隊のF-35Cは唯一の第五世代戦闘機となっています。
■海兵隊ハリアーの終点
 ハリアー攻撃機の垂直離陸は実際に目の当たりにしますと不思議な感動をおぼえたのを思い出しますが。

 アメリカ海兵隊が運用するAV-8Bハリアー攻撃機が最後の定期整備を終えたとのこと。アメリカ海軍のFRCE艦隊整備補給センターはAV-8B攻撃機を整備するハリアープログラムを実施していますが、VMA-542海兵攻撃飛行隊が運用するAV-8Bハリアーが最後に計画される整備プログラムを実施、これが海兵隊ハリアープログラム最後の定期整備という。

 VMA-542海兵攻撃飛行隊はチェリーポイント海兵航空基地に展開する攻撃飛行隊ですが、F-35Bへの機種転換が計画されています。ハリアーは世界初の実用VTOL攻撃機ですが、操縦は難しく、整備に際しても分解に等しい工程を要します。一方でF-35Bはより高性能ですが機械的複雑性から電子ソフトウェア面での複雑性に転換し操縦も容易とされている。

 FRCE艦隊整備補給センターでの整備は機体を細部まで分解し再構築する徹底したもので、ハリアーの定期整備には平均127日間の期間をかけ徹底的に行います。アメリカ海兵隊はイギリス空軍において早期退役したハリアーGR.9も継承していて、順次F-35B戦闘機に置換えるものの、アメリカ海兵隊では2028年までハリアーを維持する計画となっています。
■F-35戦闘機新たに142機
 F-35戦闘機は自衛隊でも順調に増えていますが世界でも仲間たちが増えている。

 アメリカ国防総省はF-35戦闘機2021年納入機数を142機と発表しました。F-35戦闘機は現在アメリカが生産している唯一の第五世代戦闘機となっていますが、また同時に世界における第五世代戦闘機を象徴する完成度であると国防総省は自負します、この142機はアメリカ空軍及び海兵隊と海軍に加え同盟国やパートナー国への供与分の合計となります。

 F-35戦闘機は2021年に、新規にスイス空軍とフィンランド空軍が次期戦闘機として採用を発表しており、また米英F-35B戦闘機が空母クイーンエリザベスに搭載され極東へ長距離展開を実施、アメリカ海軍艦載機としてF-35C戦闘機は原子力空母カールビンソンに搭載、海軍初の空母運用を開始したと共にデンマーク空軍へ最初の機体が配備されています。

 F-35戦闘機の運用国は9か国に上り、2021年の142機を加えると、2022年初頭までに全世界で750機のF-35戦闘機が30の基地や母艦を拠点に行動、F-35操縦資格を持つパイロットは1585名に達し、整備員も11545名が任務に当っているとのこと。F-35戦闘機量産は世界を覆うCOVID-19コロナ禍下でも概ね順調に推移し2022年も製造を継続します。
■A-10攻撃機とF-35B戦闘機
 A-10サンダーボルト攻撃機は人類最後の日まで飛び続けるのでしょうか。

 アメリカ海兵隊はF-35B戦闘機の支援に空軍のA-10攻撃機との連携を模索している、これはF-35がもともとA-10の後継機に位置付けられており、またA-10攻撃機の古さを考えれば一見驚きの構想ですが、長大な主翼と低速飛行性能を持ち滞空時間の長いA-10攻撃機をF-35B戦闘機のターゲティングセンサノード機に充てるという逆転の発想といえます。

 アイダホ州兵空軍第124戦闘航空団第190飛行隊に所属するA-10攻撃機とアメリカ海兵隊第225海兵攻撃飛行隊のF-35B戦闘機は、2022年1月初旬より共同運用試験にあたっているとのこと。F-35BのほうがA-10よりも遥かに高度なセンサーを搭載していますが、F-35は常に地上部隊の上空を飛行し続けるには空中給油等位置を暴露する事になります。

 A-10攻撃機の任務はFAC-A前線航空統制任務にあり、F-35B戦闘機はA-10攻撃機が発見した目標に対して素早く進出し、航空打撃を加えるという運用です。一方でA-10は広域地対空ミサイルに対しては無力ですが、滞空するだけで友軍に対し心理的効果が大きく、また敵対勢力に対しては30mm機関砲などで重武装したA-10は抑圧的効果があるようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ハリコフ攻防戦,ロシア"核抑止部隊"高度警戒態勢移行とベラルーシ国境停戦交渉開始で合意

2022-02-28 07:00:24 | 国際・政治
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 本日は朝に臨時情報を掲載します。ロシア大統領発言に今日中にも米軍がデフコン3を発動せねばならないような突沸という緊張が生じました。

 ロシア軍ウクライナ侵攻は、ウクライナ軍の抵抗と国際社会の圧力を受け、ロシアのプーチン大統領が“ロシア軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するようショイグ国防相らに指示”するという、極めて深刻な緊張状態へ一歩前進しました。これによりウクライナ及びNATO加盟国に対して戦術核兵器が使用される懸念が生じました。

 核抑止部隊、この部隊は主として戦域核兵器を示すものに留まらず、基本的に核抑止力に用いるものは戦場で用いるものよりも上の段階、戦略核兵器、所謂ところの熱核兵器を示すものであり、即座に投射される可能性は常識では考えられませんが、仮に使用されるのであれば、史上初の全面核戦争に展開しかねず、死者数は数億に達する懸念があります。

 熱核兵器、本来ならば示されない表現を用いた背景としてプーチン大統領は、NATO北大西洋条約機構から攻撃的な発言がなされており、相応の準備の必要性を感じた為、としています。第二次世界大戦後、あからさまな核兵器による恫喝という他ないこの発言は、アメリカのバイデン政権はもちろん、NATOや欧州各国首脳から激しい反発を呼んでいます。

 デフコン3発動はあるのでしょうか。国防総省の発表はまだありません。デフコンとはDefense Readiness Condition,有事即応体制を示すものです。五段階ありまして、カウントダウンの様に1に近づく程、警戒態勢を強化します。平時ではデフコン5であり、国防総省では平時の警戒態勢となります。デフコン4は情報収集強化、核ミサイル飛来を警戒するもので冷戦時代の日常でした。

 デフコン3は最近では9.11同時多発テロに際して発令されています、通常よりも警戒態勢を強化すると共に通信を全て暗号化し、平時から暗号通信を用いている分野ではより機密性の高い暗号へ切り替えます。デフコン2は核戦争直前、過去には1962年のキューバ危機に一度だけ発動されましたが、戦略爆撃機は全機核を搭載し滑走路か空中待機します、1は事実上開戦だ。

 ハリコフ市街戦。ロシア軍は27日、ウクライナ東部にあるウクライナ第二都市ハリコフに戦車部隊を侵攻させました。ハリコフは工業都市であり、特にウクライナにとり軍需産業の中心都市でもあり、ウクライナ唯一の戦車工場やアントノフ航空機工場など所在しています。また、ロシア軍侵攻が限定侵攻に留まる場合でも東部のハリコフは注視されていた。

 ハリコフ市街戦ではロシア軍突入の一報が出された四時間後、ウクライナ政府によりハリコフに侵入したロシア軍を撃退したとの一報も示され、共に真偽確認は難しいのですが、ハリコフ市内には政府の戒厳令がまだ機能している。予想外の一進一退ですが、アメリカが供与したジャベリンミサイル、イギリスが供与したNLAWミサイルが威力を発揮する。

 キエフ攻防戦でもキエフ北方20kmの防衛線をウクライナ軍は60時間以上維持に成功しており、ここでもジャベリンとNLAWが威力を発揮しているもよう。ジャベリンは射程2000mでNLAWは600m、後者は短く感じますが最低射程20mと至近距離でも運用可能です。ロシア軍圧倒は困難ですが長期化はロシア軍補給線に大きな影響を及ぼすでしょう。

 停戦交渉。首都キエフでの防衛線とともにロシアが示した核兵器投入の恫喝を前に、ウクライナ政府は日本時間28日にウクライナベラルーシ国境での停戦交渉開始でロシア側と合意しました。早ければ28日中にもロシアとベラルーシの交渉団が国境地域での交渉を開始します。この停戦交渉では、ロシア側とウクライナ側の意見の隔たりが当初ありました。

 停戦交渉は、ウクライナが第三国であるトルコかポーランドを提示し、ロシアがベラルーシを提示していました、しかしベラルーシは今回ロシア軍の攻撃進発地点であり策源地でもある為、中立とは言い難い状況があったのです。一方で双方の思惑から、地域の混迷よりも交渉開始が優先した構図だ。ただ、双方とも時間を稼ぐ意味もあるのかもしれません。

 SWIFT国際銀行間通信協会からのロシア銀行除名への日本賛同、停戦交渉をロシア側が譲歩した背景には予想外の長期化とともに、当初はブラフである可能性がったSWIFT除名が現実味を帯び、手続き段階に入った事も挙げられます。核抑止部隊の明示もSWIFT除名への不快感露呈でしょう。停戦か継戦か、核戦争か、この戦争は重大な局面を迎えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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