■危機継続,増強されるロシア軍
ロシアは日本にとっても隣国であり北方への防衛など複雑な歴史を辿る隣国ですが、ウクライナ危機は新しい次元へ発展しようとしています。
ロシア国防省は核ミサイル部隊演習の実施を発表しました、これはロシア国防省が2月18日に発表した演習計画であり、事前から計画されているものとしながら翌日19日に実施するという前日発表となっています。ロシア大統領府のぺスコフ報道官は威圧的な演習ではないとしていますが、翌日の核ミサイル演習発表で示威的ではないとは無理があります。
核ミサイル部隊は戦略ロケット軍と北海艦隊及び黒海艦隊と航空宇宙軍、そして地上軍等南部軍管区部隊が参加し、海軍艦艇からの核戦力運用、大陸間弾道弾戦略核兵器及び第一線において運用する戦術核兵器の運用を想定、また演習では巡航ミサイル及び弾道ミサイルの発射を行うと、前日に通知しており、演習はプーチン大統領が監督しているとのこと。
ロシア大統領府は示威的な演習では無いとし、暗に現在緊張の高まっているウクライナ国境地域での行動とは無関係としていますが、ロシア南部軍管区はウクライナ東部紛争のドンバスなど武装勢力支配地域と隣接しており、黒海艦隊はウクライナ領海を包囲する位置にあり、通常兵器での恫喝に加えて核戦力による恫喝という別次元に緊張が増しています。
ロシア軍は2月16日以降ウクライナ国境周辺のロシア軍部隊を撤収させていると主張していますが、実際は増強されているのではないかとの疑念が生じています。AFP通信によればアメリカのホワイトハウス関係者の発言としてが2月17日に、ロシアが部隊撤収開始以降、逆に7000名が増派されていると発言し、緊張緩和の発表は虚偽であるとしています。
T-90M,ウクライナ国境周辺ではかつて史上最大の戦車戦が戦われたクルスクにおいてロシア軍が最新鋭のT-90M戦車、従来のT-90戦車を近代化改修されたものが少なくとも一個中隊以上の規模で貨物列車に載せられ輸送される様子がSNS等に投稿されており、この地域でのT-90M戦車確認は、今回のウクライナ危機派生から初めてのこととなっています。
SNS情報は単なる情報戦の可能性もあり留意が必要ですが、ロシア国内報道ではウクライナにおいて欧米側がミサイル等を配備しロシアに圧力を掛けている等、ロシア側の動向を正当化する報道が行われている事から、国境へ向かうロシア軍に対して好意的で、応援の意図も込めて撮影されているSNS情報も多く、世論戦が逆手に出ているともいえましょう。
ロシアのプーチン大統領とドイツのショルツ新首相の初の首脳会談において新しいドイツ首相が一歩も引かず攻勢に出た事が、緊張の続くウクライナ情勢を前に注目されています。これは2月15日、ショルツ首相がモスクワを訪問し実現した首脳会談で、ここに欧州の対ロ政策へ不一致があれば、そのままショルツ首相帰国後に開戦が懸念されていました。
プーチン大統領はウクライナ侵攻について、NATOのユーゴスラビア介入と同じくジェノサイドからロシア系住民を保護する為だと主張したのに対し、ショルツ首相はプーチン大統領のジェノサイドへの認識は間違っていると指摘、ジェノサイドという第二次大戦中の歴史と一貫して向き合った戦後生まれのドイツ首相としての矜持を示したかたちでしょう。
ショルツ首相はプーチン大統領がウクライナ軍事攻撃を正当化する口実にウクライナのNATO加盟可能性を挙げたのに対し、近い将来の検討課題ではないとし、軍事行動をいま切迫化させるロシアを牽制、またロシアが期待する天然ガス問題でのドイツ譲歩も、ショルツ首相が論点にもあげなかった事でプーチン大統領の目論見を打破する事になりました。
ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力支配地域において停戦協定違反が600事例以上報告され、緊張が増しています。ウクライナ東部紛争により親ロシア派武装勢力が制圧している地域は、停戦に関するミンスク合意に基づきOSCE全欧安全保障協力機構より停戦監視が行われています、OSCEとは1973年にソ連が提唱した欧州安全保障協力会議の後身だ。
親ロシア派武装勢力支配地域での停戦協定違反600事例とは、爆発や銃撃など。ウクライナ政府は戦闘を実施しておらず、OSCE停戦監視団からもウクライナによる攻撃確認は発表されていませんが、親ロシア派武装勢力指導者を名乗るプシリン氏はウクライナ側による悪質な停戦違反が在ったとし、ウクライナ側に対して正当な反撃を示唆しています。
ウクライナ政府のダニロフ書記は主張を否定、ウクライナ東部地域へロシア軍侵攻の口実として懸念されているのは、ロシア軍がロシア系住民保護を名目に軍事介入する事で、保護を必要とする大量虐殺が行われていると主張することですが、ロシアが主張する地域ではOSCE派遣停戦監視団が停戦監視を行っており、ウクライナの主張を裏付けています。
アメリカ国務省はロシアが偽情報を口実としてウクライナへ侵攻する為の準備を非難しました。これは16日にロシア政府がウクライナ東部においてウクライナ軍が民族浄化を実施しているとし、集団墓地や住民が集団疎開する写真や映像を公開、またウクライナ軍が東部地域で化学兵器を使用する準備を行っているSNS上に情報拡散させているとのこと。
偽旗作戦というものですが、ロシア軍は再度クリミア半島侵攻の様な自作自演による軍事行動を行う可能性があります。また、例えば1997年1月のロシアタンカーナホトカ号重油流出事故に際して、ロシア政府はナホトカ号の事故を日本の潜水艦と衝突した可能性を示唆した事がありましたが、真偽不明でも主張するというロシア政府過去の姿勢もあります。
ロシア政府がウクライナ侵攻に際して偽情報を用いる事はこれが初めてではなく、2014年にウクライナ領のクリミア半島へ侵攻した際、クリミア半島においてウクライナ軍がロシア系ウクライナ人を迫害している為に保護を行うという口実を示しています。なお、クリミア侵攻から8年が経ていますが、第三者機関による迫害証拠等は見つかっていません。
ウクライナ危機の次にある懸念は大量破壊兵器疑惑をロシア側が侵攻の正当化に用いる懸念です。これはウクライナ東部地域のロシア系住民に対し化学兵器が使用される可能性をSNSにより拡散させている事ですが、ウクライナは過去にソ連から国家継承した核兵器をロシアへ移管するまで短期間保有していた時期があり、情報戦に悪用の懸念があります。
ロシアがウクライナの核保有を主張するのではないか、ソ連時代の核兵器をウクライナがロシアへ移管したものは、SS-19大陸間弾道弾130発とSS-24大陸間弾道弾40発で、多核弾頭の採用によりSS-19には核弾頭780発、SS-24には400発が搭載され、ソ連核兵器を国家継承したとしていて、非核化ラーダ声明までの短期間、ウクライナは核保有国でした。
大量破壊兵器の存在、これは2003年イラク戦争に際してアメリカが国連決議による受権決議を拡大解釈し、国家崩壊に至らせる軍事行動の正当化に用いた手段ですが、無いものを無い証明は難しく、ロシア側が大量破壊兵器保有を主張し、その口実としてのウクライナ侵攻を開始する可能性は低いとは言えません。ウクライナ危機は今後も長期化するでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシアは日本にとっても隣国であり北方への防衛など複雑な歴史を辿る隣国ですが、ウクライナ危機は新しい次元へ発展しようとしています。
ロシア国防省は核ミサイル部隊演習の実施を発表しました、これはロシア国防省が2月18日に発表した演習計画であり、事前から計画されているものとしながら翌日19日に実施するという前日発表となっています。ロシア大統領府のぺスコフ報道官は威圧的な演習ではないとしていますが、翌日の核ミサイル演習発表で示威的ではないとは無理があります。
核ミサイル部隊は戦略ロケット軍と北海艦隊及び黒海艦隊と航空宇宙軍、そして地上軍等南部軍管区部隊が参加し、海軍艦艇からの核戦力運用、大陸間弾道弾戦略核兵器及び第一線において運用する戦術核兵器の運用を想定、また演習では巡航ミサイル及び弾道ミサイルの発射を行うと、前日に通知しており、演習はプーチン大統領が監督しているとのこと。
ロシア大統領府は示威的な演習では無いとし、暗に現在緊張の高まっているウクライナ国境地域での行動とは無関係としていますが、ロシア南部軍管区はウクライナ東部紛争のドンバスなど武装勢力支配地域と隣接しており、黒海艦隊はウクライナ領海を包囲する位置にあり、通常兵器での恫喝に加えて核戦力による恫喝という別次元に緊張が増しています。
ロシア軍は2月16日以降ウクライナ国境周辺のロシア軍部隊を撤収させていると主張していますが、実際は増強されているのではないかとの疑念が生じています。AFP通信によればアメリカのホワイトハウス関係者の発言としてが2月17日に、ロシアが部隊撤収開始以降、逆に7000名が増派されていると発言し、緊張緩和の発表は虚偽であるとしています。
T-90M,ウクライナ国境周辺ではかつて史上最大の戦車戦が戦われたクルスクにおいてロシア軍が最新鋭のT-90M戦車、従来のT-90戦車を近代化改修されたものが少なくとも一個中隊以上の規模で貨物列車に載せられ輸送される様子がSNS等に投稿されており、この地域でのT-90M戦車確認は、今回のウクライナ危機派生から初めてのこととなっています。
SNS情報は単なる情報戦の可能性もあり留意が必要ですが、ロシア国内報道ではウクライナにおいて欧米側がミサイル等を配備しロシアに圧力を掛けている等、ロシア側の動向を正当化する報道が行われている事から、国境へ向かうロシア軍に対して好意的で、応援の意図も込めて撮影されているSNS情報も多く、世論戦が逆手に出ているともいえましょう。
ロシアのプーチン大統領とドイツのショルツ新首相の初の首脳会談において新しいドイツ首相が一歩も引かず攻勢に出た事が、緊張の続くウクライナ情勢を前に注目されています。これは2月15日、ショルツ首相がモスクワを訪問し実現した首脳会談で、ここに欧州の対ロ政策へ不一致があれば、そのままショルツ首相帰国後に開戦が懸念されていました。
プーチン大統領はウクライナ侵攻について、NATOのユーゴスラビア介入と同じくジェノサイドからロシア系住民を保護する為だと主張したのに対し、ショルツ首相はプーチン大統領のジェノサイドへの認識は間違っていると指摘、ジェノサイドという第二次大戦中の歴史と一貫して向き合った戦後生まれのドイツ首相としての矜持を示したかたちでしょう。
ショルツ首相はプーチン大統領がウクライナ軍事攻撃を正当化する口実にウクライナのNATO加盟可能性を挙げたのに対し、近い将来の検討課題ではないとし、軍事行動をいま切迫化させるロシアを牽制、またロシアが期待する天然ガス問題でのドイツ譲歩も、ショルツ首相が論点にもあげなかった事でプーチン大統領の目論見を打破する事になりました。
ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力支配地域において停戦協定違反が600事例以上報告され、緊張が増しています。ウクライナ東部紛争により親ロシア派武装勢力が制圧している地域は、停戦に関するミンスク合意に基づきOSCE全欧安全保障協力機構より停戦監視が行われています、OSCEとは1973年にソ連が提唱した欧州安全保障協力会議の後身だ。
親ロシア派武装勢力支配地域での停戦協定違反600事例とは、爆発や銃撃など。ウクライナ政府は戦闘を実施しておらず、OSCE停戦監視団からもウクライナによる攻撃確認は発表されていませんが、親ロシア派武装勢力指導者を名乗るプシリン氏はウクライナ側による悪質な停戦違反が在ったとし、ウクライナ側に対して正当な反撃を示唆しています。
ウクライナ政府のダニロフ書記は主張を否定、ウクライナ東部地域へロシア軍侵攻の口実として懸念されているのは、ロシア軍がロシア系住民保護を名目に軍事介入する事で、保護を必要とする大量虐殺が行われていると主張することですが、ロシアが主張する地域ではOSCE派遣停戦監視団が停戦監視を行っており、ウクライナの主張を裏付けています。
アメリカ国務省はロシアが偽情報を口実としてウクライナへ侵攻する為の準備を非難しました。これは16日にロシア政府がウクライナ東部においてウクライナ軍が民族浄化を実施しているとし、集団墓地や住民が集団疎開する写真や映像を公開、またウクライナ軍が東部地域で化学兵器を使用する準備を行っているSNS上に情報拡散させているとのこと。
偽旗作戦というものですが、ロシア軍は再度クリミア半島侵攻の様な自作自演による軍事行動を行う可能性があります。また、例えば1997年1月のロシアタンカーナホトカ号重油流出事故に際して、ロシア政府はナホトカ号の事故を日本の潜水艦と衝突した可能性を示唆した事がありましたが、真偽不明でも主張するというロシア政府過去の姿勢もあります。
ロシア政府がウクライナ侵攻に際して偽情報を用いる事はこれが初めてではなく、2014年にウクライナ領のクリミア半島へ侵攻した際、クリミア半島においてウクライナ軍がロシア系ウクライナ人を迫害している為に保護を行うという口実を示しています。なお、クリミア侵攻から8年が経ていますが、第三者機関による迫害証拠等は見つかっていません。
ウクライナ危機の次にある懸念は大量破壊兵器疑惑をロシア側が侵攻の正当化に用いる懸念です。これはウクライナ東部地域のロシア系住民に対し化学兵器が使用される可能性をSNSにより拡散させている事ですが、ウクライナは過去にソ連から国家継承した核兵器をロシアへ移管するまで短期間保有していた時期があり、情報戦に悪用の懸念があります。
ロシアがウクライナの核保有を主張するのではないか、ソ連時代の核兵器をウクライナがロシアへ移管したものは、SS-19大陸間弾道弾130発とSS-24大陸間弾道弾40発で、多核弾頭の採用によりSS-19には核弾頭780発、SS-24には400発が搭載され、ソ連核兵器を国家継承したとしていて、非核化ラーダ声明までの短期間、ウクライナは核保有国でした。
大量破壊兵器の存在、これは2003年イラク戦争に際してアメリカが国連決議による受権決議を拡大解釈し、国家崩壊に至らせる軍事行動の正当化に用いた手段ですが、無いものを無い証明は難しく、ロシア側が大量破壊兵器保有を主張し、その口実としてのウクライナ侵攻を開始する可能性は低いとは言えません。ウクライナ危機は今後も長期化するでしょう。
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